表慶館の佛。

お釈迦さまが悟りを開かれたのは、紀元前5世紀半ば過ぎ。不思議なことに、その後500年以上、佛像が造られることはなかった。礼拝の対象は、仏舎利や仏塔(ストゥーパ)など。
最初に佛像が造られたのは、クシャーン朝の版図の二つの地。今の、パキスタンのガンダーラと、インドのマトゥラー。この地で、紀元後1〜2世紀の間に、ほぼ同じ頃、佛像は造られた。
今、東博の表慶館にある佛像から。

典型的なガンダーラの「佛頭」。
パキスタン、ガンダーラ、クシャーン朝、2世紀。片岩で造られている。
彫りが深く、目を半ば閉じたような顔立ち、典型的なガンダーラ佛の造形だ。ギリシャ彫刻の影響が強い。
頭髪は、螺髪。「額の大きな凹みは、白毫用に貴石を嵌めていたものであろう」、と解説にある。

ガンダーラと並び、最も早く佛像が造られたマトゥラーの佛。「菩薩頭部」。
インド、マトゥラー、クシャーン朝、3世紀。砂岩を彫ったもの。頭には、大きなターバン飾りをつけている。
マトゥラーで造られた佛は、ギリシャ様式を受け継いだシャープなガンダーラ佛と異なり、いかにも土着のインド的、アジア的なおおらかさを感じる。
東博の展示物、撮影禁止もあるが、撮影可というものもある。今、修復中の東洋館から移され、表慶館に展示されているこじんまりとした展示物も、多くは撮影可。
そのような中から、いくつかを続ける。