再婚内裏雛。

学生時代のサークル仲間の飲み会。
去年の忘年会の折り、「実は年明けに結婚することになった」、と言っていたHが、先般結婚した。で、彼の再婚祝いを兼ねての遅い新年会。9年前に癌で細君を亡くしたH、子供たちもすべて独立した。新しい夫人も、子供はひとり立ちした。そこでめでたく再婚となった、とのこと。
こういう事情だから、幹事役のI、考えた。仲間内の飲み会ではあるが、いつものような居酒屋でなく、少しは洒落た会場にしよう、と。で、今日は、新宿中村屋のラコンテに10数人集まった。
定刻ちょうどぐらいに行くと、H夫婦、中央の席に並んで座っていた。当たり前だな。結婚したばかりだというのに、バラバラに座っているワケはない。壁を背にしていたので、時節柄、お雛さまのように見えた。当然のことながら、それなりに年経た内裏さまではあるが。
10数人集まったから、その周りには、三人官女も、五人囃子も、隋臣も、仕丁もいる。H夫婦を囲み、ちょうど段飾りができたようなものだ。
と、何と、ゴッドマザー・Kが、お祝にと言って、お雛さまを取りだした。K手作りの小さな内裏さま。テーブルの上、少しかたずけ写真を撮った。これである。

とても可愛くできている。
聞けば、衣装は、子供の着物を使っており、顔は、綿棒だという。女雛の髪は、すが糸を使っているそうだ。
「私、絵よりも、こういう方が得意なの」、という。K、二科の絵描きで、その作品、2〜3度このブログにも載せたが、たしかに、Kが言う通りかもしれない。こんなことを書くと、怒られるかもしれないが。
生きた再婚内裏雛、H夫婦も喜んでいた。
ひとりずつ、祝いの言葉を述べた。この調子だと、あと30年は生きるだとか、いや、100まで生きるんじゃないか、なんてことを言うヤツもいた。
H、学生時代から真面目な男である。リタイアした後、福祉関係の難しい国家資格を取った。現役の学生たちにとっても、容易いものではないらしい。元よりできる男だが、勉強大変だった、と言っていた。それより、何年も前から、民生委員をやっている。エライ男だ。
実は、今日集まった中にあとひとり、Oという男もリタイア後、民生委員をやっている。10数人の中、2人も民生委員をやっているヤツがいるなんて、何やら誇らしく感じる。世の為、人の為に、何の役にも立っていない私が言うのも、ナンであるが。
それだから、私は、民生委員をやっているヤツには、無条件で尊敬の念を持つのだ。エライヤツだ、と。
私は、再婚内裏雛にこう述べた。祝いの言葉にはなっていないが。
30年なんか生きなくともいい。せめて、あと10年か15年、民生委員をやってくれ、と。