雛と犬と百日の祝い。

半月ほど前、雛人形を取り出した。段飾りなんてものではない。シンプルな親王飾り。
はるか昔、娘の初節句の折りに求めたもの。ここ何年も、おそらく、このところ4〜5年ぐらいは、押入れの天袋の中でじっとしていた、と思われる。
飾る所に困った。以前は、二月堂の机に緋毛氈を敷き、そこへ並べればよかった。しかし、今回は、4〜5年前とは状況が異なっている。犬がいる。ともかく、新しいものには何にでも興味を示す。
咬むことはないが、ペロペロと舐める。二月堂の机になど飾れない。シンプルな親王飾りとはいえ、幾らかのスペースはとる。結局、何とかなったのは、床からは相当離れたキャビネットの上。犬にペロペロとやられないためには、仕方がない。

お雛さまは、上の方にある。
下の方には、貝合せや雛あられもあるのだが、幾分か距離がある。

床の上には、この生物が二つ。
ひとつは、赤ん坊。孫娘。あとひとつは、フレンチ・ブルドッグ、小さく改良したブルドッグ。
この二人、と言うか、このふたつの生物、いつも寄りそっている。私は、いつも気をつけている。犬が孫娘をペロペロしないように。犬にペロッとやられ、孫娘に何らかの雑菌などついたら大変だ。

まあ、犬の方もわきまえてはいるんだ。
オレがこの赤ん坊を守ってやる、ということが解かることもある。健気な犬だ。名を、”ボンド”という。”ボンちゃん”だ。お見知りおきを。

一週間か10日ぐらい前から、おしゃぶりをするようになった。右手にガラガラを持ち、左の手はおしゃぶりをしている。しきりに話すようにもなった。
孫娘、生まれてから丁度100日となった。百日の祝い、お食い初めだ。
若夫婦と孫娘、お食い初めのテーブルを囲んだ。目の下一尺の鯛、などはなく、どちらかと言えば、洋風のお食い初めではあったが。
孫娘とフレンチ・ブルドッグの力関係、今のところ、圧倒的に犬の方が強い。しかし、その関係が逆転される日も、そう遠いことではないであろう。
思えば、さまざまな時間がある。みな流れている。