ウィキリークス。

仮に、5年か10年後、「2010年というのは、どういう年だったかな」、と考えたとしよう。
日本人学者が2人揃ってノーベル賞を取ったなとか、W杯では興奮したなとか、民主党政権だらしがなかったなとか、そういえばオバマも苦労していたなとか、中国がやけに居丈高になったなとか、ということを思う人もいるだろう。
しかし、「そういえば、ウィキリークスが広く認知された年じゃなかったか、2010年という年は」、ということになっている公算、案外高いのじゃないか。どうも、そういう気がしてならない。
昨日の夜、NHKのBSで「機密告発サイト ウィキリークスを追う」という番組をやっていた。

ウィキリークス、2007年からサイトを開いているそうだが、広く知られるようになったのは、今年に入ってから。特に、イラクでの、米軍ヘリによる民間人攻撃の様子を映した映像を暴いてからだ。
その後、さまざまな秘密資料、情報をサイト上に公開していく。各国政府や大企業がひた隠しに隠している資料を。

この男が、ウィキリークスを創った男、ジュリアン・アサンジだ。1971年生まれの39歳。オーストラリア人だが、あちこちを転々としている。
正義の味方か、はたまたアメリカ初め世界の各国を恐怖に陥れる悪人なのか。おそらく、どちらもイエスであろう。

ウィキリークスのサーバー、スウェーデンにある。核シェルターのような中にあるようだ。
その仕組み、匿名の内部告発者から、世界あちこちを経由してスウェーデンに情報が届く。告発者の特定は、できないシステムが組み立てられている。

スウェーデンのサーバーからは、このような順序を踏みウィキリークスに公開される。
その過程で、情報の真偽、幾重にも検証される。

情報提供者の匿名性は、完璧に守られている。アサンジ自身、自らこう言っている。

ヨーロッパでのウィキリークスの信用度、とても高いという。
ル・モンドやザ・タイムズ初めヨーロッパの主要メディア、ウィキリークスの公開情報を競って追いかけている、という。

ウィキリークス、こう謳っている。
”ウィキリークスは、情報公開法と同じくらいに重要な情報手段となった”、と。

だから、ヨーロッパ諸国では、こういう人が多い。
特に、先般の金融危機で、主要銀行3行の救済に国民の多額の税金が使われたアイスランドでは、その後、銀行の乱脈融資がウィキリークスによって暴かれたという。だから、今では、国を挙げて、ウィキリークスを支援しているそうだ。まさに、正義の味方として。

11月28日、ウィキリークスは、アメリカの大使館初め274の在外公館の外交公電を公開する、と発表した。

その数、251,287件。
ウィキリークスのサイトを見ると、数の多い少ないはあるが、その後ほとんど連日、外交公電が公開され続けている。シークレットやコンフィデンシャルといった外交公電が。アメリカは、頭を痛めている。

ジュリアン・アサンジ、アメリカ初め各国政府の隠しだてを暴くのはいいが、どうも、女性には脇が甘いようだ。
スウェーデンから、女性暴行容疑で、ICPO(国際刑事警察機構)を通じ国際指名手配をされた。
12月7日、アサンジは、ロンドンの首都警察に出頭、逮捕された。
アサンジ逮捕の報を聞いたアメリカの国防大臣・ゲーツは、こう言っている。もちろん、アサンジ自身は、容疑を認めてはいないが。
また、イラクやアフガンでの、米軍によるさまざまな蛮行を暴かれたアメリカの司法長官・ホルダーは、あらゆる幅広い法令を駆使し、アサンジの刑事責任を追及する、と言明している。

しかし、ヨーロッパのあちこちでは、アサンジを釈放しろとのデモが行われた、という。

アサンジ、2週間ほど前、今月16日、保釈された。
しかし、その身には、位置確認の為の発信器が付けられている、という。各国政府、アサンジを恐れているのだ。
ワケありのサイトは面白いが、ウィキリークスのサイトも面白い。
まず、ドネイション、寄付を募っている。篤志家の寄付によって成り立っているのだ。ウィキリークスのサイトは。そうだろう。
サイトには、こういう個所がある。
「自由な情報を求める」。「今や、正義はあなたの手の中にある」。「今こそ、明らかにする時だ」。ここには、アフガンでの戦争の模様や、グァンタナモのマニュアル、サイエントロジーという新興宗教の内実、さらには、”副次的な殺人”として、あのバグダッドでの39分14秒に及ぶ、米軍ヘリによる一般市民虐殺の、フルヴァージョンのヴィデオが公開されている。
ガン・カメラで撮った映像を、編集せずにそのまま公開したものだ。米軍の兵士の声が、そのまま入っている。
「よし、撃て」。「撃ち続けろ」、この「keep shoot’n」という言葉は、3〜4度繰り返し発っせられている。「よし、いいぞ。お前はよくやった」。「グッド・シューティングだ。サンキュー」なんて声も聞こえる。
万里の長城の写真に、「オレたちは見てるんだからね」、というキャプションをつけたものもある。
モスクワの赤の広場の写真には、マトリューシュカを並べてある。そこには、「ウソの巣」と書いてある。添えられたキャプションには、「真実を明らかにする」との言葉がある。
ウィキリークス、これからは、アメリカばかりでなく、中国やロシアの闇を暴いてくれるであろう。
こんなことをやっていると、命が幾つあっても足りないが、サイト自身の存続も大変だ。
ウィキリークス、酷いサイバー攻撃を受けている、という。で、こう書いている。
「もし、心ある方がいれば、ミラー・サイトを作ってくれ」、と。
先ほど確認したら、12月21日付けで、ウィキリークスのミラー・サイトは、1,426あった。まだまだ増えるであろうが、これだけあれば、凌げるであろう。超大国に対しても。