歓喜への孤独な衝動展。

「歓喜への孤独な衝動」って何なんだ、どういうことなんだろう、と思っていた。
<「歓喜への孤独な衝動」、これはW.B.イェイツが若い友人ロバート・グレゴリーに献げた詩の一節であり、・・・・・>、とIASIL Japan(国際アイルランド文学協会日本支部)会長であり明治大学教授でもある虎岩直子という人は記している。
<「歓喜への孤独な衝動」展、2015年にイェイツ生誕150周年を記念してダブリンでスタートし、その後アメリカ、スウェーデン、イギリス、フランス、中国などを経て、アイルランドと日本の外交関係樹立60周年である今年、日本に渡ってきました>、とパンフにある。
ところで、大使館が関わる催しには、国を代表する大使館は力を入れる。展覧会の場合、充実した資料をくれる。1年少し前の早稲田、會津八一記念博物館での「チューリッヒ・ダダ100周年」展の折りには、スイス大使館が情報満載の大部のタブロイド紙を用意していた。今回の藝大での「歓喜への孤独な衝動」展では、アイルランド大使館による立派なカラー冊子や情報資料を渡された。

藝大構内、青っぽいものと赤っぽい看板が立つ。

掲示板のポスター。やや分かりづらいが。

すぐ左の陳列館へ入る。
アイルランド、ヨーロッパの西の辺境の国。イギリスには虐げられてきた。現在では流血は収まっているが、北部はイギリスに組み入れられたまま、連合王国を構成している。
正直言って、今年が日本とアイルランド国交樹立60周年なんてことは知らなかった。

1階へ進む。

イェイツの名は知っている。が、その詩は読んだことがない。

少し年少のジョイスとは仲が良かったそうだ。
なお、「歓喜への孤独な衝動」展、アイルランドに所縁の深い作家31人がイェイツの詩に着想を得た作品を寄せている。
その中から幾つかを・・・

左:李昶≪無数の島々 ダナーンの浜≫、スクリーンプリント。
  1986年生まれ、北京出身、現在は北京とロンドンに拠点を置き活躍、とのこと。
右:ヒューイ・オドナヒュー≪あめんぼ≫、カーボランダム。
  1963年生まれ、マンチェスター出身。

左:アメリア・スタイン≪日々の祈り≫、ピグメントプリント。
右:ルイーズ・レナード≪緑の静けさ≫、エッチング、アクアチント。
  ダブリン出身。

左:マイケル・カニング≪1893≫、エッチング。
  1971年生まれ、リムリック出身。
右:ケルヴィン・マン≪魚≫、フロックファイバー、スクリーンプリント。
  1972年生まれ、ニュージーランド出身。

ノーマン・アクロイド≪ベン・バルベンの下で≫、エッチング。
1938年生まれ、リーズ出身。

スティーヴン・ローラー≪思い出に≫、エッチング、アクアチント。
1958年生まれ、ダブリン出身。
ダブリン生まれの作家が着物姿の女性を描いている。その前のケルヴィン・マンの≪魚≫も掛軸に描かれた「鯉」を思わせる。
世紀末、ヨーロッパではジャポニズムの風が吹いていた時代、イェイツの日本芸術に対する取り組みもハンパなものじゃなかった。そのイェイツの詩に着想を得て、という現代の作家たちの作品に日本が現れるのは、当然といえば当然、必然といえば必然か。




藝大陳列館1階の展示場の手前に小さな部屋がある。
そこで、「YEATS Print Collection」が展示されていた。
東京藝術大学版画研究室の学生、教員に加えダブリンからの二人の作家を加え。
高松雄一編『対訳 イェイツ詩集』(岩波文庫、2009年刊)に所載のイェイツの詩に触発された版画。
そのいくつかを・・・








まずイェイツの詩があり、そこに絵をつけたのだから上のものは順番が逆かもしれない。
それはそれとし、遅まきながら岩波文庫の対訳イェイツ詩集を読んでみた。短いものも多い。
その内、ヒョイと思いだした。
今年もヨコトリ・横浜トリエンナーレの年であるが、前回、3年前、2014年のヨコトリに出ていた作品を。サイモン・スターリング≪鷹の井戸(グレースケール)≫である。一瞬、島谷晃の作品であるか、と私が見誤った作品。
その「鷹の井戸」、1916年ロンドンで演じられたイェイツの演劇、「ケルト能」である。
イェイツとの縁、日本は深いんだ。


今日、北朝鮮は核実験を行なった。
ICBMに搭載できる水爆である、と北朝鮮は言っている。
日米韓は、「国連安保理でさらなる経済制裁決議を」、なんてことを言っている。何度制裁決議をしても、効果はない。トランプは、「あらゆる選択肢がテーブルの上に・・・」なんてことを言っている。そんなこと言っているだけ。軍事行動なんてとれるはずがない。周到なシミュレーションを経て先制攻撃を加えても、反撃能力を100%無能力化することは無理であろう。2、3割程度は残る。ということはソウルは火の海、壊滅するであろう。そんなことをすれば、北朝鮮を壊滅させても、その後のアメリカ、世界中の信頼を失う。だから、アメリカ、動きがとれない。
極東の地に、とても不安定な国ではあるが核保有国である、という国が存在し、それを認めざるを得ないこと、そう時を置かない現実である。