ろっ骨レコード。

何日か幕間に入っていたが、ジャズがらみの尻取りブログ、セカンドステージに入る。
北朝鮮、今日も「再び米韓の挑発行動があれば、容赦のない第2、第3の物理的反撃を加える」、なんてわけも解からないことを言っているが、そんなことできるわけがない。それより、北朝鮮、今どき珍しい社会主義国なんだ。中国やベトナムも社会主義国家ということになっているが、実質は資本主義国家。中国にいたっては、”修正資本主義”といってもいい。
その中で、北朝鮮のみは、たしかに社会主義国家である。さらに、他の追従を許さない”世襲制社会主義国家”。これは、北朝鮮の他はない。
20年近く前までは、世界に社会主義国家は、多くあった。その総本山は、ソビエト連邦、ソ連である。1991年の年末にソ連が崩壊するまで、軍事力だけはあるが、とても窮屈な社会主義国家があった。
私が初めてロシアに行ったのは、たしか、ソ連崩壊の翌年か翌々年。モスクワではホテル・ウクライナというバカでかいホテルに泊まっていたが、その向かいの”ソ連のホワイトハウス”と呼ばれていた国会議事堂には、崩壊時、クーデター側が打ちこんだ弾丸の痕が、まだ多く残っていた。
町中には、既に資本主義経済というか、市場主義貨幣経済の萌芽が見られたが、市場などに行くと、まだ社会主義の残滓が残っていた。富の格差が生まれていた。
それはともかく、社会主義時代のソ連、特に、半世紀以上前のソ連、とても窮屈どころじゃない国だった。1950年代のソ連。東西の冷戦下でもあった。5日前、NHKのBSアーカイブスで、面白い番組を観た。「追跡、幻の”ろっ骨レコード” 〜ロシア、冷戦下の青春〜」、という番組。
この番組、2001年に放映したもののようだが、その後、何度も再放送されているようだ。たしかに、何度も放映されるだけのことはある。5〜60年前のロシアの若者、今では(10年前では、と言わなければいけないが)、年を取ったロシアの人たちの、西側への憧れを描いたドキュメンタリーだ。
サックス奏者の坂田明が、”ろっ骨レコード”を探しにロシアへ行くんだ。
”ろっ骨レコード”とは何ぞや。
文字通り、肋骨のレコード、肋骨のレントゲン写真のフィルムを利用したレコードなんだ。レコード盤の素材がないから、レントゲン写真のいらなくなったものを使う。そこにカッティングしたものだ。だから、肋骨ばかりじゃなく、頭骸骨のレントゲン写真もあれば、腰骨のレントゲン写真もある。それでレコードを作っていた。
何故か。
西側の音楽、特に、ジャズやロックといったものが禁止されていたからだ。ところが、第二次世界大戦に従軍し、ソ連外の音楽を知っている者もいる。VOAの短波放送を聴いている者もいる。1950年代、その当時のソ連の若い連中、ジャズやロックを秘かに聴いている。
しかし、レコードがない。そこで考え出されたのが、”ろっ骨レコード”だ。

"ろっ骨レコード”、こういうものだ。

坂田明、青空市場で、ろっ骨レコードを売っているオバアさんに会う。
74歳のこのオバアさん、50年ぐらい前、ろっ骨レコードを聴いていた、という。20代初めの若い頃。


青空市場に蓄音器を売っている店もあった。手回しの古い蓄音器。
坂田明、それを買い、オバアさんから買ったろっ骨レコードををかける。

この曲が流れた。
50年前(今からでは、60年前であるが)のベサメ・ムーチョ。その頃のソ連の若者が憧れた、西側の音楽だ。
禁じられれば禁じられるほど、ダメだと言われれば言われるほど、聴きたくなる、74歳になったオバアさんは、そう言う。

そして、最後にこういう言葉を口にする。
ロシア人、青空市場で古いものを売っているオバアさんでも、なかなかの詩人だ。
今日は、これまでとする。
しかし、このドキュメンタリー、この後も、とても面白い。で、見逃した人のため、何回か追いかける。