1874年、ロシア。

昨日は、奴隷制をアメリカ合衆国全てで、完全に廃止するために戦ったリンカーンのお話。今から約150年前、1865年のアメリカでの物語であった。
今日は、その10年ほど後のロシアでのお話である。
ロシアにも奴隷制はあった。農奴である。リンカーンの奴隷制廃止令とほぼ同時期、1861年にアレクサンドル2世によって農奴解放令が出されている。でも、農奴であった人たちにとっては、10年以上経った1874年でも厳しい状況は続いていた。
その頃のロシア貴族社会のお話である。

レフ・トルストイ著『アンナ・カレーニナ』、何度も映画化されている。今回は、脚本:トム・ストッパード、監督:ジョー・ライト、英国映画である。
役者もほとんどは英国人。政府高官・カレーニンには、ジュード・ロウ。その妻アンナには、キーラ・ナイトレイ。その不倫相手のヴロンスキーには、アーロン・テイラー=ジョンソン。皆、イギリス出身。彼らによるロシア貴族社会の物語。
帝政ロシアの貴族社会、そのお手本はフランスである。しかし、この頃には本家フランスの貴族社会は既に崩壊している。でも、ロシアでは生き続けている。ロシアという国、その後長い間、共産主義国家として存在したが、本来のロシア、どうも帝政ロシア的なものがマッチするようなんだ。
『アンナ・カレーニナ』、二つの山がある。一つは、アンナ・カレーニナに関する山。アンナの夫である政府高官・カレーニンやアンナの不倫相手・ヴロンスキーとの関わりの山。
あと一つは、トルストイの分身とも言える地方領主・リョーヴィンの物語。
この二つの進行がとても面白い。
アンナ・カレーニナ関連の映像は、舞台劇と言える映像で出てくる。劇場型である。全て、劇場の中で進行する。競馬の場面も、舞台の上で進むんだ。とても面白い。
モスクワのボリショイ劇場、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場、バレーやオペラの劇場であるが、思えば、ロシア、劇場の国である。
それにひきかえ、トルストイの分身と言われる地方領主・リョーヴィン関連は、実写の映像。この対比、とても面白い。

すべてイギリス人。

アンナの夫は、政府高官。不倫相手は、伯爵家の息子の騎馬将校。
19世紀の末近いこの頃、ロシアの貴族階級、このような有り様。今から約140年前。その50年後には、レーニンの革命が近づいていた。
それにしても、そう古い昔の話ではない時代。時の流れは早いんだか、遅いんだか。