記録と情況。

ダイジェスト放送は見ないが、ニュースで見た。白鵬、連勝記録を46に伸ばした。
大鵬の記録を抜いた。凄い、と思う。ライバルがいなく、他の力士との力の差がありすぎる、という中ではあっても。
しかし、正直なところ、「だがな」、とも思う。
大鵬の45連勝は、昭和43年の秋から翌年の春にかけてのもの。その時の対戦相手には、ライバル横綱の柏戸はじめ後の横綱玉の海、北の富士、琴桜がいた。凄い力士をことごとく破っての45連勝であった。白鵬の連勝記録、それはそれで認めるし、たいしたものとも思うし、ケチをつけたくもないが、やはり、その背景、情況が違うことも事実である。
明日は把瑠都だし、今の把瑠都に負けるわけはないし、今場所も全勝。来場所も、全勝の確率は高いだろう。千代の富士の53連勝は、軽く抜き去るだろう。
問題は、その次の場所だ。11月の九州場所。この場所の中日に70連勝がかかる。双葉山の69連勝を超える70連勝が。その確率、3〜4割はあるのじゃないか、と考える。他の力士との力量差から見て。
その時、更なる問題が出てくる。双葉山の連勝記録を抜いた、白鵬の記録をどう捉えるか、という問題が。大鵬の連勝記録を抜いた、という問題とは、次元が違う問題に私たちは直面する。対戦相手以上に、その情況がまったく違うからである。
記録は記録である。それは、尊重する。しかし、時代背景、その情況がまったく異なる。
双葉山の連勝は、昭和11年1月場所の7日目から始まっている。その連勝が途絶えたのは、昭和14年の1月場所4日目。後の横綱、安藝ノ海の足技に敗れた。
当時の本場所は、年に二場所。昭和12年の5月場所からは、一場所13日となっているが、それまでは一場所11日。「一年を十日で暮らすよい男」、の時代は過ぎていたが、年間の取組み、22日、ないし26日の時代である。
その時代の69連勝である。ほぼ3年の間、双葉山は負けなかった。このまま行くと、白鵬はこの11月場所の中日、その双葉山の記録を抜く。連勝が始まってから1年も経たずして。その情況、あまりにも違う。そう思わざるを得ない。
安藝ノ海に敗れ、70連勝が成らなかった日の双葉山の言葉、「吾、未だ木鶏たりえず」は、70連勝もさることながら、3年もの間不敗を誇り、その後敗れた男にして、初めて吐くことができる言葉であろう。それにしても双葉山、この時26歳、どこまでも求道の人だ。今の白鵬とほぼ同じ年齢だが。
70連勝どころか、仮に白鵬、80連勝を遂げたにしても、それは1年足らずの間負けなかった、ということで、その情況、双葉山とは異なる。白鵬の、記録は記録として認めながら、私は、そう思うのだが、どこか違うかな。
むしろ今後の白鵬にとっては、連続全勝優勝回数が、どこまで続くか、になってくるんじゃないか。