紙と墨。

午前中、都内の大学病院へ行く。
かかりつけの病院や医者は、幾つかあるが、この病院は、もう25年以上前からであるから、かかりつけというより、居酒屋じゃないが、馴染みの病院といってもいい。
二つの科で、合計5種類の薬をもらう。手提げの袋に入れると、大袈裟じゃなく、ちょっとした荷物になる。あまり自慢できる話じゃないが。
午後、知合いが出品しているので、大崎のO美術館へ「日本表現派ー東京ー2010」展を観に行く。東京、という文字が入っているところからみると。東京近辺の同人のグループ展のようだ。山本宣史は、2点出品していた。
水干と岩絵の具を併用した日本画も出していたが、私には、剣岳を描いた水墨画の方が面白く感じられた。天地100センチ、左右150センチ、タイトルは、「剣岳・別山より」、となっていた。別の山から見た剣岳か、と思っていたら、そうではなく、別山(べつざん)という山があるそうだ。剣岳の近くに。山のことなど何にも知らないので、聞かなければ、別の山から、と思っていたな。
それはともかく、山本宣史の剣岳の水墨画、こういうものだ。

本当は、この反対側の仙人の池から見る、秋の剣岳がいいのだが、これは夏の剣岳だという。雪渓がところどころに残っている。
私は、山のことなども何にも知らないが、水墨画のことも知らないので、山本に幾つか尋ねた。紙は何を使っているのかとか、墨はどういうものだとか、といったことを。
紙は、麻紙(まし)。日本では、古くから作られていた麻の繊維を漉いたもの。墨は、青墨(せいぼく)。
墨には、松を燃やした煤から作る松煙墨と、主に菜種油を燃やした煤から作る油煙墨があるが、山本は、青墨といわれる松煙墨を使っているという。
菜種油の煤から作られる墨は、やや茶色っぽいので、茶墨ともいわれているそうだ。松の煤から作られた青墨は、言われてみると、たしかに青味がかって見えるようなところもある。膠が溶けだして変化しているんじゃないかな、と山本は言っていた。
また、通常の日本画の場合は、紙を板のパネルに貼ってから描くのだが、水墨画の場合は、描いた後にパネルに貼る、とも言っていた。岩絵の具は不透明故、上に乗せていくという感じなので、予め固定する方が良いが、墨は滲みこむ故、後で貼るとも言っていた。貼る際に、ワザと皺をつけた貼リ方をする人もいる、とのこと。
紙と墨のこと、少し勉強した。