散った桜。

     散らであれかし桜花 散れかし口と花心   (閑吟集)
何と言おうと、パッと咲き、サッと散るのが、桜花。近所の桜は、みな散った。
おそらく、関東地方の桜は、山の中でもない限り、ほとんど散ったのではないだろうか。
散った花びら、あちこちに見られるし、あちこちに吹き寄せられている。それはそれで、また美しい。
残念ながら、近場には適当な川がなく、”花筏”流れる、といった風流な光景は見られない。しかし、土の上でも、石の上でも、”花屑”は”花屑”として、それまた趣きのあるものである。

地上に落ちた桜花、風に吹かれて無作為の造形を為す。

苔生した石の近辺では、こうなっていた。

コンクリの飛び石のあるところでは、こうであった。

どういうものか知らないが、丸い窪みのある石では、こういう具合。窪んだところに、散った花びらが溜まっていた。
石の器に盛った”花の塵”。

散った桜花と、降った桜蘂が、雨に打たれている。これも、風情があるじゃないか。

地上に落ちた桜の花びら、少し引いて見ると、これは凄い、”花漠”だ。
土の上に、桜の花びらが、ズーッと向うまで散り敷いている。花の砂漠。だから、花漠。
”花屑”や”花の塵”という言葉は、聞いたことがあるが、”花漠”なんて言葉は、聞いたことがない、というお方が多いと思う。多いどころか、何方もおられまい、と思う。そりゃそうだ。今日、私が造った言葉だから、当然のことです。
ゴビ砂漠の一部は、砂というより石が多いので、礫漠といわれている。それじゃあ、花が散り敷いたところを花の漠、花漠と呼んでも不思議はない、と考えた。ただ、どう読むかは、思案中である。カバクでは、硬いので、湯桶読みにはなるが、ハナバクとしようか、と思っている。
”花屑”よりはマシな言葉じゃないか、と思っているが、もし、この言葉を使って一句詠もうというお方は、どうぞご自由にお使いになってください。ハハハ、いないかな、そんな人は。

そこそこ草も生えているところの花漠。

これも、花漠。美しい。
花筵、とはこういうことか。