多摩森林科学園の桜。

もう今年の桜も終わりだな、北へでも行かないと、と思っていたら、時折り山歩きに行っている友人から、高尾へ花見に行かないか、と誘われた。
高尾に、「多摩森林科学園」というものがあるという。そこに、桜の保存林があり、桜木がいっぱいあるという。そこで今日、何人かの友人と高尾の花見へ行った。いや、桜木がいっぱいあり、満開の桜木も多くあった。
「多摩森林科学園」のHPには、こう出ている。
<多摩森林科学園は、大正10年、宮内省帝室林野管理局林業試験場として発足しました>、と。元々、林業殖産のための施設なんだ。
さらに、<サクラ保存林は、各地の著名なサクラの遺伝子を保存するために、昭和41年に設置が決まりました。現在8haの面積に、江戸時代から伝わる栽培品種や国の天然記念物に指定されたサクラのクローンなど、全国各地からのサクラ約1700本が植えられています。・・・・・咲く時期は種類によっていろいろで、2月下旬から5月上旬にかけて順次見頃となります>、と記されている。
ヘェー、5月上旬といえば、弘前城や函館の五稜郭の桜木が満開になるころ。東京でそのころまで花見ができるところがあるとは、知らなかった。それだけの種類を揃えているということだ。
なお、ここのHPには、主なサクラの開花時期とか、定点から見た桜の開花状況とかの他に、全国各地のサクラ開花ビジュアルマップなるものもある。これは、お薦め、役立ちます。九州の人にも、北海道の人にも。
それはそれとして、「多摩森林科学園」の「サクラ保存林」の今日の様子、載せておこう。

サクラ保存林の中、一方通行になっている。
ウイークデーだというのに多くの人が来ている。そのあらかたは、時間だけはふんだんにあるリタイア世代。私たちのグループもそうであるが。

保存林の中、全山桜花で覆われる、ということではない。開花時期の異なる種を植えて、保存しているのだから。
しかし、あちこちに咲く桜花、美しい。

たしか、千里香という名の桜木だったんじゃないかな。
日本の桜の野生種は、10種程度。400種とも600種とも言われている多くの種類は、園芸品種、栽培品種、いわば、ハイブリッドだ。だから、さまざまな名がついている。園芸品種の名は、作出した人が好き勝手に名前を付けてもいいんだから。この千里香も、もちろん園芸品種。
園芸品種、作出種には、概ね趣きのある名がついており、どこか日本酒の銘柄を思わせる。

この白い花の桜木は、太白だ。これは、間違いない。
なぜなら、すぐ前にいたオジさんが教えてくれた。「これは、太白だ。太白は、一時日本では絶えたが、イギリスにあったものを持ってきた。花が大きいんだ。これのいいのは、小石川の植物園にある」、と言って。
英国帰りの桜木の子孫なんだ。この太白は。

その太白の花、近くで見ると、たしかに大きかった。純白で美しくもあったが。
だから、そのオジさんが言うとおり、この桜木は、太白に間違いない(はずである)。

ジューニヤエザクラ(十二八重桜)、という名札がついていた。
12弁なのだろう。

山歩きで植物の名にも詳しい友が、新芽の赤っぽいヤツは山桜だ、と言っていたので、これは、山桜だろう。

花は散り、桜蘂も降った後のこの桜木、名は憶えていないが、その葉の色、あまりにも鮮やかであったので。

こういう札が掛けられた桜木もあった。
森林科学園だからな、ここは。さまざまな研究もしているんだ。

この桜木は、関山だろう。
入園時に貰ったサクラ開花マップの位置から見て、また、今日の開花状況から推し量って、関山だ。
印象派の連中が、ジャポニズム趣味に魅入られたのも、こういう枝ぶりに、その一因があるのだろう。

サクラ保存林の中、全て歩いたワケではない。
その一部、最も短いコースを歩いただけだが、さまざまな桜木と出会えた。
美しさを堪能したし、勉強にもなった。

そう言えば、歩いている途中に、こういうところがあった。
桜木や樹林の向うに、八王子の町が霞んで見えた。八王子も今では大きな町。高層ビルもあるな。
この後、「うかい鳥山」へ行き、宴会をした。
桜を見ていた時間の、倍以上の時間をかけて酒を飲んでいた。案の定、帰りの電車の中で眠ってしまい、乗り過ごしてしまった。
それも、花見にゃつきものだ。