老若の桜。

今日の夕刊に、秋篠宮家の長男・悠仁さまが、お茶の水女子大の付属幼稚園へ入園、との記事がある。
おそらく、将来、日本の天皇になる確率の高い方だ。ご両親に手を引かれ、入園式に向かう写真もある。濃紺のブレザー姿、とても可愛らしい。
今日、医者からの帰り、近所の公園に寄った。小さな公園で、その周りに桜木が、10数本ある。散リ始めてはいたが、まだ十分な咲き具合であった。

桜木をバックに、写真を撮っている親子がいた。子供は、青っぽい帽子を被り、やはり、青い服を着ている。若い父親は、スーツ姿、母親も、やや余所行きの服を着ている。今日は、ウイークデーなのにな、と思ったが、そうか、幼稚園の入園式でもあったのか、とすぐに解かった。
その内、私を認めると、その若いお母さん、「すみませんが、シャッターを押していただけますか」、とい言う。「いいですよ」、と言って、幼稚園坊主を真ん中に挟んだ、親子の写真を撮ってあげた。桜の木をバックにして。念のため、2度シャッターを押した。
大したことではないが、何か、その男の子の、社会への第一歩を踏み出した日の、手助けをしたような、気持ちよさを感じた。
青い帽子に青い服の、その幼稚園坊主も、悠仁さまに劣らず、可愛らしかった。
     ごはんつぶよく噛んでゐて桜咲く     桂信子
その後、すぐ近くの、もう少し大きな公園に行った。ここには、もう少し多く桜木がある。
実は、リタイアするまでは知らなかったが、私の住む近辺、ずいぶん多くの公園がある。ほとんどは、小さいのや、中っくらいのものばかりだが。まあ、どこでもそうだろうが、日本の公園、大抵は桜木が植わっており、春には、それぞれの花を咲かせる。ここの桜木も、満開であった。

白髪の老人が一人、ベンチに座り、本を読んでいた。70代後半、80近くの人に思えた。桜は、満開だが、ウイークデーの昼間、この人以外だれもいない。
天気のいい日には、いつも、このベンチに座り、本を読んでいるのかもしれない。幕引きの時が来るまでは、いつも。
社会の一線、現役の頃には、さまざまな修羅場もあったかもしれないが、案外いい人生を、歩んできた人じゃないかな、と思った。桜花の下で、一人静かに、本を読んでいる姿を見ると。
     身の奥の鈴鳴りいづるさくらかな     黒田杏子
今日の夕刊には、エノラ・ゲイの搭乗員が、3月末にラスベガスで死んだ、ということも報じられていた。
広島に原爆を落とした、爆撃機・エノラ・ゲイ、12人の搭乗員中、あと一人を残して、すべて死んだ、という。
87歳で死んだという、モリス・ジェプソンという男、戦後も社会的には、成功者だったそうだが、本人は、いい人生を全うした、と思っていたのだろうな。