稽古。

今日の相撲中継、向う正面の解説者・高田川の話は、面白かった。
なにしろ、出てくる力士のほとんど、”稽古が足りない”、と切って捨てられる。いいものを持っているんだから、もっと稽古をしなきゃ、と言う。今は、チャンスなんだから、とも何度も言う。四股と鉄砲をもっとやらなきゃ、やってない、四股と鉄砲、1日、1000回やらなきゃだめです、と言う。
高田川、現役時の四股名は、安芸乃島。腰の重い、味のある力士であった。今場所、魁皇の、幕内通算出場100場所が話題となっているが、安芸乃島も、昭和63年(1988年)7月場所から平成15年(2003年)5月場所まで、丸15年、90場所を幕内力士として、相撲を取った。
大物食いで、歴代最多16個の金星を持つ。何度も大関候補と言われながら、ついに大関にはなれなかった。しぶとい相撲を取るのだが、攻めが遅いキライがあった。好きな相撲取りのひとりであったが。
琴奨菊の取り組みの時、アナウンサーが、現役時代の安芸乃島に似ていると思うが、と水を向けると、いや、私よりも一回り大きいですよ、と言い、しかし、まだブクブクしている、と言う。もっとガチガチの身体にしなければ、稽古が足りない、と続ける。
大関候補と言われて長いような気がするんですが、との問いには、もったいないですよ、いいもの持ってんだから、もっと稽古をしなければ、と続ける。「相撲取りの存在感は、稽古なんですから」、と言う。言葉としては、ウム、とも思うが、高田川の言わんとしていることは、よく解かる。
高田川、つまり、安芸乃島の現役時、二子山部屋は、全盛期であった。幕内力士は、一時、10人を数えた。安芸乃島、三杉里、貴ノ浪、隆三杉、貴闘力・・・、弟弟子には、貴乃花と若乃花がいた。猛稽古をし、さらに、四股と鉄砲は、1日1000回を続けていた、という。
安芸乃島、引退後は、部屋付きの親方となったが、部屋を継承した貴乃花とソリが合わず、破門同然、一門を離れ、今、無派閥の高田川部屋を継ぐ。
貴乃花と高田川、どちらも頑固者なんだな、きっと。案外、似た者同士なんだ。だから、お互い、上手くいかないんだ。だが、相撲に対する考えは、似かよっている。稽古が大事、四股と鉄砲、1日1000回、ということは、共通であろう。ただ二人とも、まだ自前の関取りを作り出していないことは、残念であるが。
しかし、このような親方がいるということは、相撲協会にとっても、一条の光明。その内、結果が出るであろう。
それにしても、高田川の発言、”もっと稽古をしなきゃ”、”相撲取りの存在感は、稽古にあり”、”1日1000回の四股、鉄砲”、その発言、面白かった。
舌の動きをもう少し滑らかにするために、少しグリースを注してやろうか、と思ったが。