秋場所5日目、この親方。

98キロの隆の山は、今日も負けた。幕内で取るには、やはり、荷が重すぎる。仕方ないか。
鶴竜、琴奨菊、稀勢の里の関脇3人衆は、そろって勝った。いいぞ、面白い。
日馬富士、琴欧州、把瑠都の大関3人衆は、と言えば、把瑠都は何とか星を拾ったが、日馬富士、琴欧州の2人は敗れた。まだ5日目だというのに、日馬富士は3敗、綱取りどころじゃない。琴欧州にいたっては4敗、不甲斐ない。把瑠都も危なかった。やっと2敗で踏みとどまった、というていたらく。
大関連中がこのありさまなら、大関取りには有利に働くだろう。いっそ、関脇と大関を総入れ替えしろ、なんてことを思っている協会幹部もいるだろうから。それほどまでも、大関3人衆、だらしない。
ところで、NHKの解説者、初日、中日、千秋楽、この華のある日、視聴率も高いであろう日の解説は決まっている。正面が北の富士、向正面が舞の海、これが定番。他の日は、この二人に限らず、現役の親方連中が出てくる。今日出てきた親方は、なかなかであった。
正面が武隈、向正面が千賀ノ浦。武隈は、元黒姫山、千賀ノ浦は、元舛田山。共に、現役時代の最高位は関脇。しかし、共に、人気力士とは言えず、ジミな相撲取りであった。舛田山など、関脇になったかなー、と思うくらい。
解説に出てくる親方衆、シャベリの巧拙は問わず、その言っていること、オッ、なかなかだな、という人と、どうもな、という人がいる。私は、高田川(元安芸乃島)の解説が、なかなかのもの、と思っている。そう言えば、安芸乃島も元関脇。
高田川、ヌボウとした顔に似合わずピリ辛なことを言う。師匠の息子であり、弟弟子であり、何より大横綱であった貴乃花とソリが合わず、二子山部屋から追い出されたのか、オン出たのかした男だ。並みの親方とは違う骨を持っている。解説者として言うことも。
それはそれとして、今日のお二人、武隈と千賀ノ浦も高田川ほどではないが、なかなか。拾いもの。特に、正面の武隈。
琴欧州が若の里に敗れた一番では、「大関には悪いが、どちらか大関か」、と言う。ここまでは、大抵の親方は言う。引退後日の浅い、新米親方以外は。武隈、それに続きこう言った。「琴欧州の相撲、大関の地位を意識した相撲じゃない」、と。
この言葉、横綱を張った北の富士が言うには、よく解かる。また、自然である。しかし、大関にもなれなかった元黒姫山の武隈が言う。それだけに、かえって重く、味もある。
また、把瑠都がからくも豊の島に勝った一番では、「把瑠都、上手の取り方が悪い。あれで勝っているうちは、大関どまり」、と斬って捨てていた。まさに、その通り。
琴欧州は、おそらく、大関どまりであろうが、把瑠都は、やはり上を、横綱を張れる逸材である。しかし、今のままでは、あまりに大まか。勝つには勝つが、勝ちゃいいってものではない、把瑠都の場合は。いずれ横綱を張ろう、という男は。今の把瑠都、心技体の内、備わっているのは、「体」のみ。「技」はもとより、「心」の部分は、成ってない。「体」のみで勝っている。
おそらく、武隈もそう思っているのではないか。素人の私が考えるより、はるかに深く。
秋場所5日目、土俵上も面白かったが、テレビ桟敷では、解説者の親方の言も楽しめる。