「日本遺産」補遺(5) (仏像)。

今日の朝日に、「オンリーワンを探そう」、という見出しの記事が載っている。
「710−2010 平城遷都1300年。祈りの回廊〜奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳〜」、として、春期の主な社寺の秘宝・秘仏特別開帳の一覧表が載っている。
主催は、各社寺だが、朝日新聞も共催してるんだ。だから、一面この記事に使っているんだ。もっとも、下には、「ことし来なかったら、千三百年、後悔。」というキャッチ・コピーの近鉄の5段広告が入っているが。
今や、仏像好き、というより仏像通、いや、若者に対する仏像広報大使、とでも言える、イラストレーターのみうらじゅんとモデルのはなが、お気に入りの1点を推薦している。みうらは、安倍文殊院の<文殊菩薩像>を、はなは、海龍王寺の<十一面観音像>を挙げている。
故に、今日の「日本遺産」の補遺は、仏像について考えてみる。
実は、これが、難しい。「芸術新潮」が68名の日本を代表する人に求めた「日本遺産」に挙がった仏像は、法隆寺の<百済観音>ただひとつのみ。2日に集計を発表した折り、不思議だ、と記し、見事といえば見事だ、とも書いた。もの創りに携わる人たち、心に引っかかる仏像が、ないワケがない。でも挙げていないのは、難しいんだ。決めかねているんだ。きっと。
日本中に、いくら寺があり、いくつ仏像があるのか、私は知らない。数えられないほどの数だろう。そこで、この分野では、両横綱である奈良と京都に絞る。「信濃では月と仏とおらがそば」の信州や鎌倉、その他の地方の方には、申しわけないが。
さらに、奈良、京都でも、範囲が広い。そこで、平城遷都1300年に敬意を表し、奈良に絞る。もちろん、京都にも素晴らしい寺や仏像は、いっぱいあるが、京都は開けすぎ、古都でなく、都会地になりすぎであることもある。その点、奈良は、いつまでも田舎、古都である。だから、私は、どちらかと言えば、奈良の方が好きである。少し、横道にそれたが。
だから、今日の「日本遺産」補遺のタイトルは、正確にいえば、「奈良に御座す仏さま」、であるが。
まず最初に、私のお気に入りベスト3を挙げておく。
飛鳥寺の<飛鳥大仏(釈迦如来坐像)>、唐招提寺金堂の<盧舎那佛坐像>、室生寺金堂の<十一面観音立像>、である。
まずは、<飛鳥大仏>だ。
仏さまは、概ね端整な美男子が通り相場だが、この飛鳥大仏、丈六の仏さまは、その対極、顔中キズだらけ。火災にあって、顔ばかりでなく満身創痍、あちこちに亀裂がある。推古17年(609年)に造られた時のお顔とは、ずいぶん様変わりしている、という。でも、存在感がある。
私は、金仏よりは、木の仏の方が好きなんだが、このいかにも金仏という飛鳥大仏、いかにも、原初の仏さま、という感じを受ける。大好きな仏さまなんだ。
次には、唐招提寺金堂の<盧舎那佛坐像>。
10年にわたった唐招提寺金堂の平成大修理も終わり、昨年秋には、落慶法要も営まれた。今では、<盧舎那佛>を中央にして、右手に<薬師如来>、左手に<千手観音>、と元通りの位置に安置されているであろう。
この金堂内陣の大きな仏さまたち、いずれも素晴らしいが、1点を挙げれば、やはり、中央の<盧舎那佛>だ。像高3メートル余、台座高2メートル余、千仏光背の高さは5メートル余、堂々とした仏さまだ。だが、私が一番好きな点は、その色調、色合い、緑系といい赤系といい、何ともいえぬ奥深く重厚な色調、これに魅かれる。
3つ目は、室生寺金堂の<十一面観音立像>。
室生寺に行くのは、少し不便。近鉄の駅を降り、バスで2〜30分くらいかかる。ヘンな時間だと、バスもなかなか来ない。だが、バスを下り、小さな室生川を渡り、室生寺の境内に入り、鐙坂の石段に来ると、何とも言えない気分になる。その石段を登るたびに、気がはやる。
その石段の上に、金堂がある。初めは、その杮ぶきの屋根が見え、石段を登る毎に、小さな金堂が少しずつ姿を現す。
金堂内陣には、幾つもの仏さまがおわしますが、<十一面観音>は、左側の一番端に立っておられる。ふっくらとした、やや下ぶくれのお顔で。よく見ると、彩色は、あちこち剥げ落ちているのだが、赤みがかった色彩が、とても魅力的。半眼の目つきなど、鋭いといえば鋭く、威厳もあり、可愛いというのとは、少し違うのだが、とても美しい仏さまだ、と私は思っている。
仏像、それもお気に入りの、好きな仏さまのことなどを書いていると、つい長くなってしまう。今日は、これで終わり、続きは明日としよう。