男と女 50年。

3年少し前になろうか2016年秋、クロード・ルルーシュの『男と女』製作50周年を記念したデジタル・リマスター版が公開された。
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<たちきれぬ過去の想い。それでも惹かれ合う男と女。>の惹句は変わらない。50年経とうが何年経とうが。
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1966年から50年後のデジタル・リマスター版。
何年経とうと、「男と女」は変わらない。
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始まりはノルマンディー、ドーヴィルの寄宿制の学校であった。共に寡の男と女の二人、この学校に息子と娘を入れていた。
男はレーシングドライバー、女は映画のスクリプター。
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初めは電車に乗り遅れた女をパリへ送っていくということであった。
女の電話番号を訊く。過酷なモンテカルロ・ラリーがある。モンテカルロからパリへ車を飛ばす男。パリのアパルトマンに女はいない。ドーヴィルへ行っている。男はさらにドーヴィルへ。
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53年後の『男と女 人生最良の日々』にもこの場面はコラージュされている。
フランシス・レイの”ラーラーラ シャバダバダシャバダバダ ・・・”のスキャットが男と女を追い立てる。
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ドーヴィルの海岸での男と女。ジャン=ルイ・トランティニャンとアヌーク・エーメ。
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男と女、二人の息子と娘、ノルマンディー、ドーヴィルの海岸で幸せな時を持つ。
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ドーヴィルからパリへ戻る途中のホテル。
得も言えぬシーン。
53年後の『男と女 人生最良の日々』にもこのシーンがコラージュされている。が、それと共に53年後のこのホテル23号室での模様も描かれている。
『男と女』、1966年のカンヌ国際映画祭のパルムドールを取った。
作品は、ラブストーリーの不滅の名作となり、作家のクロード・ルルーシュは、愛の伝道師と呼ばれるようになった。
昨日は失念していたが、今日、3年前の画像を見ていて気づいたことがある。
3年前、製作50周年記念のデジタル・リマスター版が公開された時、ルルーシュの短編映像が日本初公開された。タイトルは、『ランデヴー』。8分48秒の短編である。
パリの街中を車が走り抜ける。早朝のパリの街中を。
昨日、53年後の『男と女』について、凱旋門からオベリスク、オペラ座、・・・、と記した。ジャン・ルイの夢の中として。が、実際は夢ではなく現実であった。今日先ほど、『ランデヴー』のことを思い出し気がついた。
エトワール・凱旋門からコンコルド広場のオベリスク、オランジュリーからルーブル、オペラ大通りを通りオペラ座・古いオペラ・ガルニエを通り、モンマルトルのサクレクール寺院の前まで、アクセル全開の車が走り抜ける。
昨日、シトロエン2cVと記したが、どうもこれは誤りであるようだ。2馬力のシトロエンのできる技ではない。クロード・ルルーシュ、メルセデスでパリの街中を疾走したらしい。排気音はフェラーリに切りかえて。
早朝とはいえパリの中心部を駆け抜ける。信号も無視。ヤバいことこの上ない。若さ故。
若いって危なくはあるが、やはりいいな。
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アヌーク・エーメの美、神々しいことこの上ない。

53年後の男と女。

山田洋二は、50年後の『男はつらいよ』の寅さんを作ったが、クロード・ルルーシュは、あの『男と女』の53年後の物語を作った。アンヌとジャン・ルイの恋物語を。
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10日ほど前、封切られた。その日の新聞広告。
<”愛の伝道師”クロード・ルルーシュ監督が紡ぐ忘れられないあの物語が、長い時を経て・・・>とあり、<この冬、極上の愛の物語を劇場で>、とある。
劇場へ行った。
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『男と女』、1966年の作。クロード・ルルーシュ、まだ20代であった。
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53年前の男と女、ノルマンディーのドーヴィルで出会う。
共に連れ合いを亡くしている。アヌーク・エーメが扮するアンヌは、スタントマンの亭主を事故で。自身は映画のスクリプター。ジャン=ルイ・トランティニャンが扮するジャン・ルイは、レーシングドライバー。モテ男である。
アンヌは娘を、ジャン・ルイは息子をドーヴィルの寄宿制の学蛟へ入れている。そして、ある時・・・であるが、53年前の物語である。
それにしても53年前のアヌーク・エーメ、いい女であった。遥か離れた極東の島国の若造なぞ、遥かに仰ぎ見る存在、美であった。
なお、<人生最良の日々>とは、「最良の日々は、この先の人生に訪れる」というヴィクトル・ユーゴーの言葉から取ったそうだ。
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『男はつらいよ』の主人公である寅さんの渥美清は死んでしまった。だから山田洋二は、50年を経てあのような作品を作った。横尾忠則がオレのアイデアをパクったと言っているコラージュを。よくできている。面白かった。
が、『男と女』の主人公であるアンヌのアヌーク・エーメもジャン・ルイのジャン=ルイ・トランティニャンも未だ健在である。アヌーク・エーメ87歳、ジャン=ルイ・トランティニャン89歳であるが。
自らも80代に入ったクロード・ルルーシュ、この80代後半90に近い二人に、また運命の恋をさせようとしているんだ。
フランシス・レイのあの”シャバダバダ、シャバダバダ、・・・、・・・”の忘れられない曲をバックに。
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あの時から53年後、レーシングドライバーで女にモテたジャン・ルイは老人施設に入っている。記憶、意識が混濁するようになっている。ただ、アンヌという一人の女性のことだけは鮮明に憶えている。息子はその女性を探し出し、父親に会ってほしいと頼む。
アンヌはそのことを受け入れる。60近い娘や孫娘の前で53年前のことを明らかにするのも、いかにもフランスらしい。
施設にジャン・ルイを訪ねたアンヌに、ジャン・ルイは新入りの人って言う。アンヌのことが解らない。が、アンヌの声が忘れられない人の声に似ている、と言う。髪をかき上げる仕種も、と。
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昔、レースでイタリアに行った時に関係を持った女の娘も。こんな美人の娘がいるなんて嬉しいよ、とジャン・ルイ。ジャン・ルイ自身、「オレはレーサーで顔もよかったから女はいくらでも寄ってきた」、と話している。
ジャン・ルイの夢の中も出てくる。早朝のパリの町中、凱旋門からオベリスク、オペラ座、・・・、・・・、とシトロエン2cVを走らせるアンヌとジャン・ルイ。
夢か現か。
シャバダバダ、シャバダバダのスキャットばかりでなく、フランシス・レイの音楽、愛の物語を盛りあげる。
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ドーヴィルの海岸、アンヌの娘のフランソワーズとジャン・ルイの息子のアントワーヌが。
53年前のドーヴィル。
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53年前、『男と女』はカンヌ国際映画祭でパルムドールを取った。
53年後の『男と女 人生最良の日々』は、昨年5月の第72回カンヌ国際映画祭に出品された。その際のクロード・ルルーシュ、アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン、その他の関係者たち。
監督と主演の二人、皆さま80代、慶賀なことこの上ない。

お帰り寅さん。

去年の秋のころ、シネコンには「男はつらいよ 50」と記されたポスターが貼られていた。寅さん・渥美清の横顔と共に。
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こういうチラシも置いてあった。
「よっ! ひさしぶり!」。
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キネマ旬報シアターにはこういうポスターも。
寅さんとさくら + 歴代マドンナ。
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行かなかったが、キネマ旬報シアターではこの正月初め、『男はつらいよ』の第1作と第2作を掛けていた。
左は第1作、右が「続」の第2作。
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<日本映画の代表シリーズ「男はつらいよ」は、今正月で早や七年、第16作目の「葛飾立志篇」をむかえるに至った。・・・>、とある。
1969年の第1作から7年、1975年のキネ旬の記事。なお、この第16作のマドンナは樫山文江。
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キネ旬シアターにはこのような展示も。
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寅さん・渥美清は、平成8年8月に死ぬ。享年68。
その直後のキネマ旬報9月下旬号。
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こういう記事もある。「マドンナ ベスト・テン」。
第1位は、旅回りの歌手・リリーの浅丘ルリ子。当然である。これに異を唱える御仁はいないだろう。第2位は、「寅次郎 夕焼け小焼け」の太地喜和子。第3位は、吉永小百合。第4位は、第1作のマドンナ、御前さまの娘・光本幸子。第5位は、いしだあゆみ。以下その年おりおりの女優がマドンナを務めているが、オレは誰それがというのはそれぞれ各人の勝手。京マチ子、新珠三千代、岸恵子といった往年の大女優までいるのだから。50年の重みである。
「ゲスト ベスト・テン」も凄い。
志村喬、三船敏郎、嵐寛寿郎、ミヤコ蝶々、宮口精二、宇野重吉、・・・、・・・。皆さん重い、重厚な面々ばかり。
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満を持して昨年末、『男はつらいよ50 お帰り寅さん』が公開された。
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渥美清はもういないが、「お帰り寅さん」である。
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さくらがいる。リリーがいる。その他の皆さんも、新しい方々も。
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寅さん・渥美清は死んじゃった。妹・さくらの息子、甥っ子の満男がメーンとなっている。
満男、作家となっているんだ。八重洲ブックセンターとおぼしき大型書店でサイン会をしている折り、たまたま昔の恋人であるイズミが来る。
イズミ、今ではUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の職員となっている。流暢な英語仏語を話すキャリアウーマン。演じるのは後藤久美子。国民的美少女と言われた後藤久美子、花形レーサーと結婚してフランスへ渡ってから20数年、今では40代半ば。仏語、英語も身につき、UNHCRの職員にピタリと嵌まっている。
UNHCRから今では国連ナンバー3となっている中満泉のことを思い出す。たまたまではあるが、イズミ、同じ名であるので。
吉岡秀隆扮するさくらの息子の満男、後藤久美子扮するイズミを誘う。浅丘ルリ子扮するリリーがやっているジャズ喫茶へ。どうも神保町の靖国通りの1本裏の通りにあるようだ。
イズミ、その夜は柴又のくるまやで泊めてもらう。久しぶりに布団を敷いて。
翌日、伊豆の施設に入っている父親を訪ねる。父親と別れた母親がいる。夏木マリが扮する。イヤー何とも言えずいい。母親はこういう。「私は別れたんだから赤の他人よ。しかし、あんたはあの男とは親子なんだよ」、と。
何だかんだあって、イズミはヨーロッパへ帰っていく。旅立ち間際、満男に口づけして。
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不思議でしようがないんだが、どうして満男はモテるんだ、と。
出版社の満男担当の女性編集者も満男に思いがある模様。この女性編集者、池脇千鶴が扮する。池脇千鶴、このような役は得意、男心をさりげなく掴む。
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この作品が公開される前後、横尾忠則が山田洋二は自分のアイデアをパクった、と述べた。
何でも、「男はつらいよ」の次回作、主演の渥美清はいないのだから、コラージュにすればいい、と話したそうだ。週に一度会う蕎麦屋で。
山田洋二はそのことには頬かむりしている、と横尾忠則は言う。アイデア・横尾忠則とかをクレジットに記載したくなかったのだろう、と。
山田洋二は文化勲章を受けた映画監督である。が、横尾忠則は、たかが「男はつらいよ」・寅さん映画の監督じゃないか。日本国内だけの、という思いがあるようだ。オレは世界のYokooだ、との。
主人公の渥美清がいない状態である。山田洋二でなくても誰が撮ってもコラージュになることは必然。横尾忠則、少し嫌らしすぎるな。
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細い目。眉毛のほくろ。フーテンの寅さんだ。


1週間少し、10日足らずブログを休んだ。
この間、いくつかの動きがあった。
1月31日、イギリスはEUから離脱した。ブレグジットがなった。47年の歴史に幕を下ろした。
近い将来、イギリス国民はブレグジットをを嘆くことになろう。


中国のコロナウイルス騒ぎは拡大している。
習近平指導部は、初動対応の誤りを認めた。
習近平、一帯一路なんて10年早いぞ。


アメリカ大統領選へ向けてのアイオワ州での党員集会が始まった。
トランプに対峙する民主党候補、定まらない。
3日の投票結果が今だ確としない。トランプは嘲笑っている。
71%の開票のところで、トップは最年少のブダジェッジ。38歳、地方都市の市長経験があるのみ、同性愛者であることも公言している男。
極端に過ぎる。トランプには勝てないであろう。
アメリカは分断されている。今日、ペロシは、トランプの一般教書演説が終わった直後、その演説が記載された紙片を破り捨てている。ペンス以下の共和党の面々は、トランプの言葉の端々で立ちあがり拍手している。不思議なことだが、共和党はほぼ一枚岩である模様である。
地球の民にとっては残念なことであるが、禄でもないトランプ政権、今後4年続いていくこと確かなようだ。
私は早く退散しよう。

もう一人のロクイチ組。

豪栄道が引退を表明した。
昨日、過去3番目の高齢での優勝となった徳勝龍は、その年齢を問われ、「まだ33歳」と語っていた。「もう」じゃなく「まだ」、と。徳勝龍特有のリップサービスも含め。この発言は、徳勝龍自身の性格にもよろうが、その立場によるところが大きいと思われる。十両と幕内を行き来している徳勝龍、気楽と言えば気楽なんだ。
その点、大関という地位を5年半にわたって張っていた豪栄道とは異なる。その間、9度のカド番を凌いで。これだけ長く大関を張っていたのに、優勝は一度のみ。平成28年秋場所の優勝。その時もカド番であったが、全勝優勝であった。
徳勝龍は、昨日の優勝後のインタビューで全国の相撲好きの心を掴んだ。今日も、「自分が優勝できるなんて思ってもいなかった」と語っている。正直だ。だから、奈良県人ばかりでなく全国の相撲ファンはにわか徳勝龍ファンとなった。この相撲取り、憎めない男だな、と。
今日、豪栄道はこう語っている。
「精も根も尽き果てた」、と。そうであったことだろう、とよく解る。横綱に次ぐ大関の地位を保つため、気を抜くことはなかったであろう。いつもムスッとした顔をしていたが、それも心の内が外へ出た故であろう。
同じロクイチ組の二人。
稀勢の里と共にロクイチ組の先頭を走った豪栄道と、「オレはオレ」とその後ろの方をついていった徳勝龍、その相撲人生だ。
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昨日、初場所千秋楽、豪栄道は若手23歳の阿武咲に下手投げで敗れた。下手投げというより掛け投げのように背中から土俵に落とされた。
敗け方も良くなかった。豪栄道の力、確実に落ちている。5勝10敗、来場所は関脇へ陥落する。これで引退するかもしれないな、と思った。が、来場所はご当所の大阪場所。そこで最後の復帰戦を、とも考えた。
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敗れた後、土俵下での豪栄道。
虚ろな目である。宙を飛んでいる。
もう充分だ。精も根も尽き果てた、とも考えていたのかもしれない。
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一瞬、審判長を務める豪栄道の師匠・境川の姿が流れた。
境川の顔、どこか緩やかな表情になっているように感じた。「豪栄道、お前、よく頑張ってきた。これでもういいだろう」、と言っているようにも見受けられる。
今日の朝刊に、千秋楽結びの一番で幕尻の徳勝龍に敗れた大関・貴景勝に、徳勝龍についてのことを訊いた応えが載っている。
貴景勝、こう語っている。
「強いから優勝したのでしょう」、と。何ともそっけない応えである。
貴景勝、天下の大関とはいえまだ23歳の若造である。心がない。徳勝龍のホワッとした心が23歳の若造には感じられない。
昨日、自らは敗れ引退のことごとに思いを巡らしていた豪栄道、こう語っていると報じられた。
「徳勝龍が優勝して良かった」、と。
豪栄道、ロクイチ組の後ろの方についてきた徳勝龍優勝のことを喜んでいる。
33歳、心のゆとりができるんだ。徳勝龍にしろ豪栄道にしろ。
まだこれからもという男にも、もう充分にやったという男にも。


中国、武漢で発生の新型コロナウイルスによる肺炎、拡大している。
最新情報では、感染者2800人、死者81人。武漢市は封鎖されている。1100万人の大都市が。陸路も空路も。
今日のマーケット、東証ばかりでなく世界中のマーケットで大幅に下げている。武漢での新型肺炎の拡大懸念である。
武漢には日本人が560人いるらしい。日本政府は明日朝チャーター機を飛ばし、希望者を帰国させる予定だという。空港までのアクセスなど、中国側とまだ協議している模様だが。
今日、武漢には李克強が入った。中国政府、気合を入れて取り組んでいるという姿勢を見せている。
早い時期に押さえこまなければ、一帯一路なんてことを言っている場合じゃない。中国の威信、落ちこむぞ。

初場所三景。

白鵬と鶴竜が早々に休場し、カド番・豪栄道も不甲斐なく、高安の大関復帰も難しく、横綱大関で何とかなっているのは貴景勝のみ。平幕へ落ちた御嶽海に期待を寄せていたら、これも何とも具合が悪い。つまらない、面白くない場所だなと思っていた。
が、最終盤の3日間、いやいやこれはこれで、という展開となった。
まさかまさかの徳勝龍の幕尻優勝。上位陣のすべてとあたり勝ちこした炎鵬の活躍。そして令和初の天覧相撲。
令和2年初場所の三景である。
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まずはこの男、十両と幕内を行ったり来たりしていた徳勝龍のこの顔だ。
帰り入幕の場所であった。優勝を決めた瞬間、その顔がクシャッと崩れた。よかった。
まずはこの顔のみを出しておいて、優勝力士故、後ほどに。
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今場所の三賞は、この5人。
優勝した徳勝龍は、殊勲賞と敢闘賞も。当然だ。
この三賞を知った解説の北の富士は、「アレッ、炎鵬にも技能賞をやらないの?」と言う。「炎鵬は、今日勝てばなんでしたが」とアナ。炎鵬、今日は輝に圧倒されて敗れた。「炎鵬の貢献は大きいよ」と北の富士。確かにそうである。ビジネスの事業体としての日本相撲協会に対する炎鵬の貢献度は非常に高い。
醜男あんこ型の力士が贔屓の私、それとは対極の小兵すべすべ顔の力士はイマイチ贔屓にはなれない。が、今場所の炎鵬の相撲、なぜあれほど国技館の館内を沸かせるのかは理解できる。
この一番には興奮した。
13日目、炎鵬と阿炎の一番である。
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炎鵬、阿炎の突きをかいくぐり両手で足を取る。
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幕内最軽量、99キロの炎鵬、155キロの阿炎を持ち挙げる。
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軽々と高く。
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あまりに高く持ち挙げたので、NHKのカメラマンは追いかけきれず、阿炎の体はテレビ画面の外へはみ出してしまった。
館内、沸いた。全国のテレビ桟敷の皆さんも沸いたに違いない。
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炎鵬、足取りで勝つ。
また、この顔も可愛いって人気。
私は、炎鵬の顔はともあれ、北の富士が言うように日本相撲協会への貢献度はとても高いと思う。
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小兵の炎鵬、大型力士に正面から攻められるとどうしようもない。
7日目、隠岐の海に寄り倒される。重ね餅である。いずれ炎鵬、大怪我を負うのではと心配している。
それにしても前頭5枚目の炎鵬、大関以下の役力士ともすべて当たりよくぞ勝ち越した。
初場所第1景はここまで。
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14日目、1敗を保ってきた平幕の正代と徳勝龍の一番が組まれた。
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番付上位で三役経験者の正代が有利と思われていたが、徳勝龍が連日の突き落としで勝つ。
ナントー、幕尻の徳勝龍が単独トップに立った。千秋楽には、出場力士最上位の大関・貴景勝との一番が組まれた。異例の処置。
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この少し後、こういう光景が流れた。
天皇皇后両陛下と愛子さまが国技館に着かれたようだ。Ⅰ4日目、天覧相撲だったのだ。
理事長の八角が先導し、理事以下の親方連中が頭を下げて迎えている。
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両陛下と愛子さま、貴賓席につかれる。
黒っぽいスーツの襟にバッジを付けたSPが多くついている。後ろばかりじゃなく左右の席にもそれらしき人たちが。さりげなく厳重に。

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皇后・雅子さまはふくよかにおなりになられた。とても喜ばしい。愛子さまもお元気なご様子。嬉しい。高校3年生である愛子さま、とても頭がいいとのことであったので、東大へ行くのじゃないかと言われていたが、どうもこのまま学習院大へ進学されるようだ。東大生の愛子さまっていいな、と思っていたので少し残念な思いはあるが、学習院を出た後、ケンブリッジかオックスフォードへ留学されるということをお考えなのであろう。それもよし。愛子さまファンの私は、愛子さまのことならすべて良し。
ここ何年か天皇のヘアースタイルが気になっている。何か7:3か6:4に分けた髪を前の方へというもの。いつか皇室通の人が「今の髪形は、天皇と専属の理髪の人が相談してのもの」と話していたが、こう言っちゃなんだがイマイチどころかイマサンといったものである。もっと髪を上げた以前の髪形に戻してもらいたい。今上天皇も間もなく60になられるのだから。不敬、失礼を承知の上で。
なお、天覧相撲がらみでNHKのアナウンサー、言葉を誤った。「平成天皇」と何度も語った。私もアレッと思った。中継のアナウンサー、ベテランの藤井康夫アナウンサーであったので。暫らく後、さりげなく訂正とお詫びが語られたが、ネット上ではどうこうと言う連中が多くいた。寂しい暇人が多いんだ。
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14日目、貴景勝には一縷の望みがあった。
朝乃山との一番に勝ち、徳勝龍が千秋楽で敗れ、優勝決定戦に持ちこめばという。と、何と徳勝龍の千秋楽の相手、貴景勝となった。貴景勝としては朝乃山との一番、何が何でも勝たなければならない。
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が、土俵際での投げの打ち合い、やはり上手の方が強いというのは相撲通の常識。朝乃山、上手投げで貴景勝を破る。
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両陛下と愛子さま、退出する。
幕内後半の9番を見たのみであった。
昭和天皇や先帝の上皇は幕内前半、土俵入りのところから観戦されていた。次回からは、ぜひ土俵入り、中入り後の取組みからご覧いただきたいと考える。
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今日、千秋楽結びの一番。大関・貴景勝と幕尻・徳勝龍の一番である。
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幕尻の徳勝龍、大関の貴景勝を破る。
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その直後の徳勝龍。
顔がくちゃくちゃになる。
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優勝だ。
NHK、ニュース速報も流れる。
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表彰式に備え、床山が髷を結うっている時でも涙は流れる。
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徳勝龍の優勝インタビュー。
徳勝龍、「自分が優勝していいんでしょうか」と言って・・・
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この顔。
「優勝を意識しましたか?」の問いに、「意識することなく」と応えた後、2、3拍おいて「えー、ウソです。 めっちゃ意識してました」と答える。
涙顔に笑いを取る応答、徳勝龍のファンになる人多くなるに違いない。
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今場所、初場所の上位陣星取。
豪栄道は33場所、5年半保った大関の座から陥落する。引退ということも考えられるが、来場所は地元・大阪場所であるから来場所に期するのではないか。
高安は大関復帰が叶わなかった。来場所は平幕へ落ちる。朝乃山は10勝を挙げ、来場所の大関取りに望みをつないだ。
私が贔屓の御嶽海は負け越した。大関候補の最前線を走っていたのだが、貴景勝に先を越され、朝乃山にも追い抜かれ、北勝富士や豊山などにも追い抜かれつつある。
御嶽海、頑張ってくれ。
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ところで、徳勝龍の幕尻優勝、20年ぶりぐらいだそう。
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徳勝龍、昭和61年生まれ、花のロクイチ組である。
稀勢の里、豪栄道、栃煌山、妙義龍、魁聖、勢、宝富士、碧山、臥牙丸。横綱、大関、三役経験者が名を連ねる。
徳勝龍、その一角で生きてきた。
今後のことを聞かれた徳勝龍、三役という言葉さえ発せず頑張りますと応えていた。
いいんじゃないか、それで。

ミイラ。

ミイラってやはり不思議なものである。
国立科学博物館で催されている特別展「ミイラ」、「永遠の命」を求めてとサブタイトルを打っているが、やはり何とも面白い。「ミイラ」なるもの、すべてがすべて「永遠の命を求めて」いるのではなかろうが。
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冬枯れの上野公園にこの看板。
世界から43体が来ているらしい。
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科博、展示会場までずいぶん歩かせるな。
困ったことだがそれはまあ仕方ないとして、今回初めて知ったが、科博には10数体のミイラがあるそうだ。科博へは数年に一度しか行かないので知らなかった。時折り行く東博にはミイラは1体のみしかない。日本国内で見たミイラはこれのみだと思う。大阪の民博にもミイラの記憶はない。民博、やや目指す方向が異なるので当然か。
海外の博物館では幾つか見ているが、そうべらぼうにあるということではない。
ところで、ミイラといえばまず頭に浮かぶのはエジプトだ。誰しもがそうであろう。
20年以上前、1996年にカイロからルクソール、アスワン、さらにアブ・シンベルまでナイル川を遡った。カイロ博物館(エジプト考古学博物館)には、ツタンカーメンの黄金の棺やマスクはじめ多くのミイラがらみの品が多くあった。テーベの王家の谷にはさまざまなファラオの墓があった。が、棺などは見られたがミイラそのものがどうであったか、という明確な記憶はない。
最も充実したミイラの展示はロンドンの大英博物館である。私の知る限り、ミイラに関しては世界のどの博物館も大英博物館にかなわない。最後に行った12年前の大英博物館ミイラ室の模様はこうであった。
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少し暗いが、大英博物館には多くのミイラが並ぶ。
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ミイラそのものは水平に置かれているが、その棺は垂直に立てられているものも多い。
このように。
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今回のミイラ展、何よりも、エジプト以外のミイラに驚いた。
南北アメリカ、アンデスのミイラから始まる。
ミイラ包みなんて初めて見た。多くあった。
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よく見知ったエジプトだ。
動物のミイラ、出展されていたネコばかりじゃなく、今までにさまざまな動物、また鳥のミイラも見たような気がする。動物や鳥類、神に繋がるんだ。で、ミイラに。
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科博らしい眼。
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ヨーロッパにもミイラはある。
「ウェーリンゲメン」、遥か昔に亡くなった人の姿がそのまま残っている。
今までのミイラのイメージとはかけ離れたものであるが。
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以前、ニューギニアなどの古い彫像などを求めていたことがある。あちこちの古いものとともに。
木を加工したそれらのもの、考えてみるとその彫像の中に何らかの思い、願いが込められているように感じる。オセアニアのそれらの精霊像、ミイラに繋がるんじゃないか、と思われる。
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日本。
シャドーとなっているが、この本草学者のミイラは凄い。学問としてミイラを追及した学者のミイラである。
右の即身仏も、興味深いミイラである。艶やかな赤い法衣を身に纏っている。「永遠の命」というより、多くの衆生を救うため即身成仏、入定されたのである。
で、今、ミイラとなっている。
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43体のミイラ、面白かった。
しかし、最後の部屋まで座るイスがないことには参った。
来ている人、年寄りは少なかったような気がする。しかし、年寄りがまったくいないワケではない。時おり座りたい年寄りへの配慮、考えてもらいたい。
音声ガイドは大沢たかおであった。大沢たかお、旅行番組によく起用されている。が、声だけのガイドとなるとあまり良くなかった。
会期はまだひと月残している。面白いですよ。どうぞ。


それより、主な展示が終わった後、国立科学博物館所蔵のミイラが5点展示されていた。
その中に南米ヒバロ族の干し首があった。3点の干し首が。
干し首というものは、頭の中を取り出し、目や口を縫い合わせ、干したものである。小さいものは天地6~7センチと思われ、大きなものでも天地8~9センチ程度である。頭部、顔面のミイラである。
私は初めて見た。
丁度10年前になるが、2010年1月のこのブログ・「流山子雑録」に「東京大学総合研究博物館」のことを記したことがある。東大が所蔵する「文身(刺青)標本」のことを記した。57点に及ぶ総身彫りの文身(刺青)のことを。
科博が所蔵する3点の干し首、東大所蔵の57点の文身(刺青)標本とともに、日本が持つ科学標本の双璧ではないか。生物分野の。


今年のダボス会議が開かれた。
2年ぶりでトランプが行って、「オレはこうこう」なんて勝手なことを言っている。
今年のダボス会議、地球温暖化対策、環境問題が焦点である。
パリ協定から抜け出したトランプなど、ダボス会議から締め出してしまうことなどできないのかな。

人、神、自然。

一昨日、昨日と病院へ行った。病院に行くと、医者の言うことが良かろうが悪かろうが真っすぐには家へ帰ってこない。寄り道をする。だから、この2日間、相撲中継は見なかった。
と、白鵬に続いて鶴竜も休んでしまった。
このような場合のお決まりは、「何々がどうこうなので2週間の安静を要す」、というもの。白鵬はまだしも、鶴竜はこのまま取り続ければ負け越す恐れが高い。致し方ない。
鶴竜は真面目な男であるそうなので、このようなことは言いたくはないのだが、横綱の潔さ、ということに目をつむっているようだ。
潔く身を引く、散り際の美、ということは、横綱のみに許された特権であるのだが。
今日、大相撲初場所6日目、正代は今日も勝ち全勝を守る。遠藤は高安を突き出し5勝1敗。そして今日の一番、御嶽海と貴景勝の一番は、貴景勝が突き落としで勝ち5勝1敗とした。御嶽海が土俵際まで追いつめていたのだが突き落とされた。残念な思いあり。
今場所の優勝力士、貴景勝であろうか。正代や遠藤の可能性も大いにあるな。しかし、私にとっては贔屓の御嶽海が後れを取ったので、面白くなし。
暫らく相撲から外れる。


これは面白い展覧会であった。
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昨年末の東博、東洋館。
ずいぶん暗くなっている。週末の夜間開館だったのだ。
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東洋館へ入る。
「人、神、自然」展。
カタールの王族、、アール・サーニ殿下が収集したコレクションである。「ザ・アール・サーニ・コレクション」と呼ばれているらしい。約120点の出品作、そのほとんどがBC・紀元前のもの。
いや、凄いものばかり。
カタールは小さな国である。が、産油国で金持ちの国である。それと共に地域大国であるサウジアラビアやその他の国と一線を画し、イランとも交流を続ける、という立場をとる。
さらにまた、あのアルジャジーラは、カタールの王族の出資によって作られたメディアである。面白いといえば面白い国である。
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3章の内の1章。「人」。
3、4000年前の人。考えられるか。
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2章、「神」。
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「神」と人間。
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3章、「自然」。
以前、九州で見た耳庵・松永安左エ門の陶磁器コレクションのことを思った。
そのコレクトしたもの完璧なものばかり。オイルマネーを超えている。
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千年前か二千年前、もっと前の時代か。
素晴らしい顔貌である。


今日、阪神淡路大震災から25年となる。
6430人余の人が亡くなった。25万棟を超える家屋が倒壊した。7570余棟が焼損した。
大震災から半年後の夏、神戸へ行った。その時でも、神戸の中心地・三宮駅前には瓦礫の山があった。多くの火災が起きた長田の町はブルーシートだらけであった。
今日、さまざまな追悼の催しが行われている。
阪神淡路大震災の後、より多くの被害が出た東日本大震災が起こり、さらに首都圏直下型のMEGA地震がそう遠くない時期にと言われている。日本は地震国である。
その折りには、私のようなじじばば世代の人間はバンバン死んで、孫たち世代の若い人たちが多く生き残ってくれることを願っている。