Dearダニー 君へのうた。

焼酎で酔いボーとした頭で書いていると、時折、何も考えず手だけが動く自動書記のようになることがある。昨日も、どうもそうである。
<が、世間の逆風に抗している清原に心を寄せる>、というのもどうもそう。
覚醒剤所持容疑で逮捕された清原、罪は罪、簡単に心を寄せるのは問題か、と酔い覚めの頭では思う。
世の識者と言われる人や街の声で、「子供たちの憧れであり、我々のスターであった人が・・・」、といったありきたり凡百の言葉はどうでもいい。
しかし、PL以来のKK・桑田真澄、西武黄金期の同僚・工藤公康、渡辺久信、伊東勤、巨人での仲間・高橋由伸、松井秀喜、親友だという大魔神・佐々木主浩、皆さん、歯切れが悪い。世界の王貞治も「残念。あれだけのスターがね」、との言葉。
はっきり言って、冷たい。皆さん、ヤバい清原にはあまり関わりたくないんだ。私には、そう思えた。
で、無意識のうちに、<世間の逆風に抗している清原に心を寄せる>、と自動書記したようだ。
私は、清原和博のファンでもなければ、清原を擁護するわけでもない。しかし、人間というもの、弱い存在でもあるんだ。
偶々であるが、清原騒動が発覚する前の一昨日、「Dearダニー 君へのうた」という映画を観た。

封切りは昨秋であるが、見逃していた。面白い作品は封切り後さほどの時間を置かずかけるキネマ旬報の直営館でつい先日からかかっている。
清原とはケタが違う、ウルトラスーパースターの物語である。
監督:ダン・フォーゲルマン、初監督だそうだが、素晴らしい作品を紡いだ。
主人公は、自家用ジェットも持つロックスター。昔のヒット曲を歌いツアーをしている。ロックスター、酒と女とドラッグの日々である。おそらく70前後であるが、これぞロックスターという日常。アル・パチーノが扮する。まさに、ピタリ。
清原と重なる。ドラッグでも。寂しさでも。

この映画、初めの方で、<少しだけ事実に基づいた映画>、というコメントが流れる。
主人公・ダニーにはモデルがいる。で、少しだけ事実に基づいた・・・、と。
<Dearダニー>、との言葉、ジョン・レノンからの手紙の書きだしである。
ダニー、デビューしたてのころ、雑誌のインタビューを受ける。それを読んだジョン・レノン、手紙を出す。ビートルズが解散した後のころ。しかし、インタビューアーを通じて出されたスーパースター、ジョン・レノンの手紙、インタビューアーが懐に入れてしまう。将来、価値が出るぞ、と。
で、ダニーの所にもたらされたのは43年後であった。
デビュー間もないダニーへのスーパースタージョン・レノンからの激励の手紙。

それを43年後に読んだロックスター・ダニー、全米ツアーをやめニュージャージーへ行く。ヒルトンへ無期限でといって宿をとる。それまでの生活を変えよう、と。
シャツのボタンを3つ4つはずしていたところから見えるロケットペンダントに入っている粉末のドラッグも、トイレの水に流す。
実はダニー、息子がひとりいる。故あり、全く没交渉の息子である。息子は、ピックアップトラックに乗っているごく普通の生活をしている男である。嫁もいて、7歳になる娘もいる。ダニーにとっては孫である。
訪ねる。
が、息子には、「二度と来るな」、といって追い返される。家族がいるのに家族がいない。清原の寂しさに似ている。
今日の朝日朝刊に、編集委員・西村欣也、こう書いている。
かって覚醒剤で実刑を受けた元スーパースター・江夏豊から聞いた自らの場合の言葉を。江夏豊、こう語っている。
「結局、寂しかったんやろうな」、と。
たしか、江夏も家庭を持たない男であった印象がある。清原も家庭が壊れた。江夏と同じ心境ではなかったか。寂しいって。
さらに清原の場合には、友達も離れていった。PL以来のKK・桑田真澄の今日の言葉では、悪いうわさを聞くたびに小姑のように口うるさく話していたが、「もう関わってくれるな」、との清原の言葉で連絡も途絶えた、と。
清原、自らも離れた。自ら閉ざした。

ダニーには関わる人たちがいた。
右端は、ダニーの息子。ダニーを拒絶し続けるが、最後には、という息子。真ん中は、その嫁。その間は、7歳になるその娘。ダニーにとっては孫娘である。
左から2番目は、ダニーの親友でありマネージャーでもある男。左端は、ダニーが無期限で投宿するヒルトンの女支配人。
皆さん、ダニーの心を癒す。
途中、ダニーが息子からけんもほろろに追い返された時には、ダニーまたドラッグを吸っていた。
清原も同じような心境であったであろう。家族も友達もいなくなった、と。
ファンでも好きな男でも何でもないが、清原和博に思いを寄せる。人間、誰しもひとりでは生きていけないんだから。
「Dearダニー 君へのうた」、「イマジン」を含めジョン・レノンの曲が10曲近く流れる。
人生、遅すぎることはない、と。
清原への応援歌じゃなかろうか。
清原へ見せたい。