スケッチ変じて・・・。

スケッチの上手い人がいる。稀に、「あなた、そんなに上手くてどうするの」、と言いたくなる御仁も。
たまに、東博本館正面のスロープ脇で、小さな椅子に座ってスケッチをしている人を見る。大体が若い人なので、芸大の学生なんだろうな、と思っている。
何度かに一度、そのような中に”そんなに上手くて・・・・・”、という人がいる。小さな絵筆に絵具をほんの少しつけ、ササッと刷いている。画面は小さい。しかし、スケッチの域を超え、”こりゃタブローだな”、と思われるものもある。

ひと月ほど前までの国立西洋美術館、このような特集展示も催されていた。

その特集の主旨はこのようなもの。
何とかお読みいただけるであろう。

モーリス・ドニ≪レマン湖畔 トノン≫。
鉛筆、水彩、グアッシュ、紙。

モーリス・ドニ≪アーサー王≫。
ペン、黒インク、紙。
自ら死した王妃・グィネヴィアを抱くアーサー王を描いたスケッチ。それはそうであるが、この写真、右側にアーサー王が映りこんでいるように見える。こういうことってあるのかな。さしたることではない、と言えばそうではあるが。

ギュスターヴ・モロー≪聖チェチリア≫。
水彩、グアッシュ、紙。1885年〜90年の作。旧松方コレクション。

ごれもギュスターヴ・モローの≪聖なる象(ペリ)≫。
水彩、グアッシュ、紙。1882年の作。ヒンドゥーの聖なる象の上にペルシャの聖霊ペリが美女の姿で描かれている。
ギュスターヴ・モロー、夥しい数の素描を描いた。パリの国立ギュスターヴ・モロー美術館では、多くのキャビネットに収蔵された素描を見ることができる。パタパタパタ、と深い色調のモローの素描が次々と出てくる。

ポール・ゴーガン≪マルティニック島の牧草地≫。
鉛筆、黒チョーク、グアッシュ、水彩、パステル、紙。
1887年、ポール・ゴーガン、カリブ海のフランス領マルティニック島へ行った。その年の作。

これもポール・ゴーガン≪マルティニック島の情景≫。
やはり、鉛筆、黒チョーク、グアッシュ、水彩、パステル、紙。
なお、このような扇面の構図は、19世紀末のヨーロッパにおけるジャポニズムの影響を受けた絵描きたちが取り入れた形式であるそうだ。

ポール・シニャック≪燈台≫。
クレヨン、水彩、紙。19世紀末の作。旧松方コレクションである。

ポール・シニャック≪漁船≫。
鉛筆、水彩、グアッシュ、紙。20世紀初頭の作。やはり旧松方コレクション。
<シニャック、当初は油彩画のための習作として制作していたが、次第に独自の表現を持つ作品として取り組んだ>、という趣旨の説明がある。
いずれの作も、スケッチの域を超え、スケッチ変じてタブローとなった。