松竹梅。

年初めの我が家の生け花、松と千両に水仙。もちろん、大したものではない。しかし、暫らく前から、「博物館に初もうで」を謳っている東博の前には、大きな生け花がある。

年初めの吉祥の代表、松竹梅である。
松と竹と梅を、ただ一纏めにしただけのようにも見えるが、存在感がある。作者は、池坊の蔵重伸と中野幽山、と書かれている。池坊の実力者であるらしい。

本館正面の左側にはこれ。
やはり、松竹梅。

右側にはこれ。
松竹梅。

本館に入る。
正面の大階段の右には、「博物館に初もうで」の垂れ幕が下がる。大階段の踊り場にも、大きな生け花が見える。

階段を上がると、大きな生け花、やはり、松竹梅。作者も同じ。
逆円錐形の黒っぽい器に生けられている。松と竹と梅。さらに、枯れ柳が加わり、よく見ると寒椿の赤い花も微かに見える。
その背景には、大きな日輪がある。
日輪を背にした松竹梅、まさに、正月。

江戸時代後期の真言宗の僧・慈雲の一行書、「松」、「竹」、「梅」。
松竹梅、それぞれの一行書、こう書かれている。
     松 臨済之門標
     竹 香厳之箒跡
     梅 窓外之幽致
松は、<これは『臨済録』行録にも所収される「松が山門の境致となり、後人の標榜をなす」という文章を背景に作られたものである。・・・・・>、と説明書きにある。
竹は、<唐代の高僧である智閑禅師が、竹藪に掃き集めたごみを捨てた際に悟りを得たというもの。・・・・・>、とある。
梅は、<・・・・・窓の外の奥深く静かな趣がある「窓外之幽致」を軽く闊達な筆致で添える。・・・・・>、と。
江戸時代を代表する能筆家の一人、慈雲。私ごときがどうこう言うのはおこがましいが、松竹梅それぞれの一行書、年初めの吉祥と言うことばかりでなく、書の魅力を打ちこまれた感がした。