今年の桜 残る花。

5日に出かけ、4日前に戻ってきた。パリに1週間、その後リスボンにいた。二つの町とも、半分ぐらいは雨模様であった。
今月初め、青山霊園の花見には現場に行けなかった。翌3日、飯田橋から市ヶ谷へかけての電車の窓から、咲き初めの桜を見た。1〜2分咲き、といったところのものであった。戻ってきたら、花の時期は過ぎていた。

今日、毎年行っている近場の公園へ行った。
既に、桜蘂と葉桜の状態となっている。しかし、よーく見ると、あちこちに残る花、残桜が見られる。

<花は盛りに、・・・・・見るものかは。・・・・・たれこめて春のゆくへ知らぬも、なほあはれに情けふかし。・・・・・散り萎れるたる庭などこそ、見どころ多けれ。・・・・・>。
兼好法師、その著『徒然草』の中で、こんなことを言っている。
大伴茫人によれば、このような意。<花は、盛りの時ばかりを見るものであろうか。・・・・・部屋にこもって春の暮れゆく様を知らないのも、さらに風情があって情感の深いものだ。・・・・・花が散ってわびしげになった庭などこそ、見どころが多い>、と。
私は、部屋にこもっていたのではなく、むしろ逆。外に出かけていた。でも、春の暮れゆく様を知らなかったのは、事実。さすれば、さらに風情があって情感の深いものだ、ということか。
ま、そう思えば、たしかに、そう。

ここには、案外花が残っている。

ここには、桜花、ただ一輪。

     踏み込んで少し見えたる残花かな     岸本尚毅
     登り来て残花の雨に見えけり       吉田鴻司
     人を見ぬ残花や山河くすくすと      永田耕衣