国民栄誉賞。

なでしこジャパンに国民栄誉賞が授与されることが決まった。
官房長官の枝野幸男、「国民に感動と、困難に立ち向かう勇気を与える顕著な業績があった」、とその理由を述べる。
澤穂希は、「びっくりすると共に、大変光栄に思っております」、と話し、監督の佐々木則夫は、「これからも精進し、ロンドンへ向けて邁進していく」、と語っている。
国民栄誉賞第一号の王貞治も、日本初の五輪女子金メダリスト・高橋尚子も、サッカーブームを定着させた立役者・カズも、多くの人が祝いの言葉を述べている。
私も嬉しい。よかった。日本人、多くの人がそう思っているだろう。
ところが、多くの人はそう思っている、と思っていたら、そうでもない人がいる。
女子サッカーなどマイナーなスポーツだ。第一、ついこの間まで、なでしこジャパンなんて知っている人はどれほどいたか。マスコミのバカ騒ぎだ。一過性のブームだ。何より、政権の延命策、政治利用だ。辞退すべきだ。さまざま喧しい。
そうかな。
たしかに、女子サッカーは、マイナーな競技である。私も、つい先ほどまでは、知っている選手の名は澤穂希のみであった。あとは誰も知らなかった。まさかW杯で勝つなんて思いもしなかった。しかし、なでしこジャパンは、ドイツを破り、スウェーデンを下し、世界最強のアメリカまでねじ伏せた。
しかも、ハラハラ、ドキドキ、どこに負けてもおかしくない勝負に勝った。小泉純一郎ならずとも、「感動した!」、と叫ばずにはいられないはずである。
国民栄誉賞、今までも、誰かが受賞すると、どうこうという声が出た。
高橋尚子が授与されて、どうして柔道のヤワラちゃん・田村亮子(谷亮子)にやらないんだ。レスリングの吉田沙保里は、オリンピック二連覇、世界選手権など10年近く連覇しているのにどうして。野村忠宏はオリンピック三連覇だのに、どうしてか。たしかに、これらの皆さん、凄い。団体にも授与するのなら、野球のWBC二連覇はどうなんだ。皆さん、さまざまなことを言う。
しかし、国民栄誉賞には、それなりの理由がある。
野球のWBCは、世界最強のアメリカがトッププレイヤーを出さず、シャカリキになっているのは日本と韓国だけ、という選手権だから勝っても当たり前だし、田村亮子や、吉田沙保里、野村忠宏にもわけがある。彼ら、彼女らも勝って当たり前の選手。意外性に乏しい。感動度が低いんだ。凄い人たちなんだけど。
国民栄誉賞、王貞治や山下泰裕のように、誰が見ても文句のつけようがない、という妥当性も必要だが、オッ、なんだなんだ、どうしたことだ、という意外性もあっていいんだ。タイミングの問題もあるよ。なでしこジャパン、それにあたる。ニューヨーク・タイムズが言っていた、「福島の年の日本、伝説を作った」、という。
ロンドン五輪で、金メダルを取ってから授与しろ、なんてことを言っている人もいる。何言ってるのあなた。なでしこジャパン、今回は勝ったが、オリンピックでも勝つ確率は低いよ。第一、予選リーグで敗退し、ロンドンまで行けないことも充分あり得る。そのチームが世界一になったんだ。感動ものじゃないか。
政治利用だ、という批判もおかしいよ。国民栄誉賞、どの政権も、言ってみれば政治利用だもの。いずれの政権も、国民栄誉賞に値する人が出てこないかな、と考えているもの。
なでしこジャパン、堂々と国民栄誉賞を授与されればいい。
譬え、ロンドン五輪で金メダルが取れなくとも。いや、予選リーグで敗退し、ロンドンへ行くことさえ叶わなかっても。なんら臆することはない。
あなたたちは、国民に十分感動と勇気を与えてくれたのだもの。