桜狩りの道すがら(5) 花水木。

桜花の盛りを過ぎたころから、あちこちで見られた。そこいらの庭先にも、並木にも、公園にも、小さなものから大きなものまで、いずれも花をいっぱいつけていた。
白いものの方が多いが、赤系統のものもある。載せたのは、共に1週間ほど前のもの。白い花の方が、”らしい”と言えるが、赤花も捨て難い。

夕刻の道のわきに、背の高い花水木があった。白い花の花水木。

白い花、と打ったが、実は、花のように見えるのは、苞だそうだ。
じゃ花はどれだ、と言えば、中心部に幾つもかたまっている緑色のものが花。花水木では、花は苞の引き立て役。

花水木の元々の生国は、北アメリカ。100年ほど前、憲政の神様・尾崎咢堂が、アメリカへソメイヨシノを贈ったお返しに贈られたものだそう。
贈ったソメイヨシノは、ワシントンのポトマック河畔の桜並木となり、贈られた花水木は、今、日本のあちこちに広がった。大震災直後、三陸沿岸に2万にのぼる兵力を展開させたアメリカの”トモダチ作戦”の先駈けだ。
それはそれとして、花水木、小さな木でも多くの花、じゃなかった苞をつけているが、ビッシリと花、じゃなく苞をつけた大きな木が、味わい深い。
夕暮れの薄明かりの中に立つ大きな花水木、ぼんやりと白い花(もちろん、苞のことですが、面倒なので以下、花と記す)が浮かぶ様、幽玄という言葉が浮かんでくる。チト大袈裟かな。
     昏るるとき白き極みよ花みづき     中村苑子

紅花花水木。
アメリカ生まれの花水木、日本の風土に合うのだろう、私が住む集合住宅の敷地内にも、白赤多くの花水木が植わっている。この木は、入口近くにあるもの。

淡いピンクに近いものもあるが、この木の花は、赤味が勝った品種のようだ。

近場の枝に焦点を合わせシャッターを切る。
と、上の方の枝と花、レースのようになった。新しいものでなく、使いこんだアンティークレースのように。美しい。
     くれなゐの影淡くゆれ花水木     小島花枝