「我慢と執念と意地」、と鈴木は語る。

毎年この日に行われる柔道全日本選手権、テレビ観戦。
ここ数年、本命なき混戦状態が続く。昨年の覇者・高橋和彦は、はやばやと姿を消した。若手のホープで、昨年の無差別級の世界王者・上川大樹も。
しかし、鈴木桂治が優勝するとは思わなかった。
鈴木桂治、出場選手の最年長。30歳だが、柔道の選手としては、ピークを過ぎている。北京五輪では、期待されながら惨敗を喫した。昨年のこの大会でも、準々決勝で敗れた。鈴木の時代は過ぎた、と多くの人は思っている。私も、そう。だから、驚いた。

ベスト8に駒を進めたのは、この8人。
準々決勝の相手、七戸龍は、初めて聞く名。長身の大型選手。しかし、動きは速く、積極的に技も出す。鈴木桂治、序盤で指導を取られる。やはり、鈴木ここまでか、と思うが、さすがベテラン、旗判定に持ちこみ、勝つ。
準決勝の相手、本郷光道も初出場の選手。勢いがある。本郷、鈴木を攻める。本郷が勝つな、鈴木は勝てないな、と思った。しかし、鈴木は、本郷の仕掛けた技を返し、袈裟固めに押さえこみ一本勝ち。
私の予想は、2度とも外れた。
鈴木桂治の足技、往年の切れはない。全盛期の7〜8割に落ちているのじゃないか、と私の目には映る。しかし、試合運びは上手い。ベテランの味、強さが出る。そうは言っても、その鈴木に敗れる今の選手が情けない。

決勝の相手は、一昨年の覇者・穴井隆将。
穴井隆将は、26歳。柔道選手としては、今がピークにある。一昨年の全日本選手権の覇者である。期待の若手、高木海帆、ベテランの高井洋平を下し、決勝に歩を進めた。こりゃ、穴井のものだ、今の鈴木じゃ穴井に勝てないだろう、と思った。
おそらく、穴井自身、そう考えていたんじゃないか。鈴木なら勝てる、と。試合の展開も、穴井が押していた。

ところが、中盤、穴井の大外を鈴木が返した。鈴木、鮮やかな大外返しの一本勝ち。
鈴木桂治、4年ぶり、4度目の全日本選手権の覇者となった。体重無差別の全日本選手権、その王者こそ、真の柔道日本一。鈴木、その場に返り咲いた。私の予想は、3度も外れた。
優勝を決めた後、鈴木桂治、こう語っている。
「いつまでも現役にしがみついているのか、という思いもあった」。「夢じゃないか、と今でも思っている」。そして、こうも語っている。「我慢と執念と意地だった」、と。
私の予想は、ことごとく外れたが、鈴木桂治の優勝、とても嬉しい。
それにしても、若い連中に奮起してもらわなきゃならないが。お前さんたち、鈴木桂治の涙を見ているだけでいいのか、と。

そのすぐ後、ロンドンでは、鈴木桂治と同世代のウィリアム王子の結婚式が取り行われた。
ウェストミンスター寺院での結婚式、1900人の人が招待され列席していた、という。エリザベス女王夫妻、チャールズ皇太子、カミラ夫人、英国王室のお馴染みの方々のお顔、久しぶりで見た。
英国王室のことごと、『クイーン』など幾つかの映画で見知っているためか、懐かしく、荘厳ではあるが、身近にも感じた。

ケイト・ミドルトンさん、今日からは、ケンブリッジ公爵夫人・キャサリン妃となる、という。
ケイトさんのウェディングドレスも良かったが、その裾を持つケイトさんの妹さんの白い清楚なドレスも、とてもいい。

こうして見ると、ウィリアム王子、お母さんのダイアナさんに、その面影よく似ているな。