北泰紀行(6) トラ。

ゾウさんのキャンプを出た後、遅い昼食をとるため、Tが案内してくれたのがここだった。

「タイガー・キングダム」と書いてある。「トラの王国」だ。
林の向こうに大きな建物がある。
入ると、たしかに、レストランである。

しかし、グルッと建物で取り囲まれた中に、トラがいる。
このように歩いているトラもいれば、

ゴロンと横になり、お昼寝中のヤツも。

先の方では、若い女性がトラの横に寄り添っている。まさに、”美女と野獣”だ。
ここは、レストランでもあるが、トラとの記念写真を撮ることができるところでもある。

もちろん、美女のみでなくともいい。このような二人連れでも。
それにしてもこの男、身長190センチは優にあろう、と思われるプロレスラーのようなデカイ男だった。彼なら、トラと一対一で闘っても、ヒケはとらないんじゃないか、と思われる男であった。
だから、彼らの場合は、”美女と野獣×2”、ということになる。

撮影時には、係員がついている。そりゃそうだろう。

このお嬢さんは、大きなトラに、その身を投げかけているばかりか、シッポまでつかんでいる。トラの方も、満更ではない、という表情であった。
トラとの記念撮影には、別料金がかかる。さほど安いものではなかったような。カット数によって変わるらしい。しかし、このお嬢さんにとっては、安いものだったろう。

トラがいるところの周りは、レストラン。テーブルが取り囲む。やはり、外国人の姿が目につく。
それ故であろう、料理も、タイ料理ばかりでなく、中華、フレンチ、イタリアン、とあった。私たちは、イタリアンを食べた。飲み物は、初めのビールの後は、白ワイン。Tの日常、食事時の酒は、毎食白ワインとのことで、今回の滞在中も、ほとんどそうであった。

短い竹のムチを持った係員がついて歩いているトラもいる。首輪のようなものは、何も付いていない。
後ろの黒っぽいところに、レストランのテーブルが並ぶ。

トラは、全部で10数頭いた。こういうトラもいた。美しいヤツだった。

このトラは、ジッと瞑想に耽っているようだった。
しかし、ここのトラ、みんなおとなしい。よくしつけられている、というか、飼い馴らされている、というか。
中には、「たまには、人間を食ってやろうか」、と考える悪ガキのトラが、一頭ぐらいいてもおかしくはないんじゃないか、と思ったが、そのような悪ガキのトラは、いなかった。
当たり前か。そのような、人間が、じゃなく、”トラができていないトラ”は、まだ表には出してもらえないんだな、たぶん。
そのためか、表に出て歩きまわったり、人間に触られている10数頭のトラは、みな身体が大きかった。小さいトラは、今はまだ修業中なのであろう、おそらく。
”人間は、食ったって美味くないんだよ”、ということが解かるまで。

そうはいっても、デカイトラ、その顔をアップにするとこう。

牙もあるし。
オヤッ、このトラ、鼻のところに傷を負っている。皆おとなしいトラだと思ったが、たまにはケンカでもするのかな。
やはり、トラは、トラだもの。