幕間。

反省と、事故車による犠牲者への陳謝は、述べたが、それ以上には、踏み込まなかった。
事業の拡大スピードに、安全性の優先順位が伴わなかった、とは述べたが、電子制御システムの欠陥は、認めなかった。
今日未明に行われた、アメリカ下院での公聴会での、トヨタの社長・豊田章男の答弁、ともかく、一幕目は下りたが、これから何幕も続く幕間に入った、というところだろう。
誠実さは、感じられたが、イエスかノーか、で迫る議員を納得させることは、できなかった。当然のことだ。芝居なら、3幕か4幕で終わるが、アメリカでのトヨタ劇場は、おそらく、その何倍も、秋の中間選挙まで、延々と続くだろう。
改選期の議員は、アメリカの国民、アメリカの世論の中に、燻ぶり続ける”熾き”を、その都度煽り続けるだろう。
公聴会の後、アメリカトヨタの従業員やディーラー、200人ほどが待つ会場へ行った。そこでの挨拶の途中、「今日の私は、一人ではなかった。アメリカや全世界の」、と言ったところで、声を詰まらせ、涙が溢れてきた。
その後、暫くして、「同僚たちと共にいた」、と言ったのだが、声の詰まりも、涙も、ホッとして、思わず、という感じだった。ディーラーの代表も、「我国の議員の一部が、社長に対し、不快なことをしたことを、謝ります」、と言っていた。
何とも、日本的な情景で、その場の200人ばかりか、トヨタのアメリカ国内の従業員やディーラーなど、約20万人に対しては、共感のできる場面であろうが、その千数百倍にもなるアメリカ人には、どう映るかな、とも思ったが。
アメリカトヨタの智恵者が、根回ししたのであろう、その後、CNNの人気番組、ラリー・キングのライブショーに豊田章男が出たのは、良かった。
「これは、日本叩きだと思うか」、との質問に、「そうは思わない」、と答え、「もし、明日、車を買うという人に、トヨタの車を勧めるか」、との問いかけには、「そうする」、と答えていた。
豊田の答えは、当然な答弁であるが、それよりも、ラリー・キングの問いかけ、優しい、というか、他愛ない、というか、手心を加えた質問をしてくれているような感じがした。
ひょっとして、あのサスペンダーのラリー・キング、日本贔屓なんじゃないのかな。どうも。あんな、打ちやすい球を投げてくれるなんて。
しかし、今はまだ、序幕が下りたのみ。これからも何幕も続く。幕間にすぎない。
また、ラリー・キングのような優しい男は、今のアメリカには、そうは居ない、と豊田章男は、考えなければならない。
今日の公聴会に豊田章男を引っ張り出した、あのダレル・アイサは、公聴会の後、「改善、改良の宣誓を、豊田章男から引きだした」、と言っているんだから。