ポピュリズムの極み。

アメリカのサイレント・マジョリティーにとっては、ドナルド・トランプは待ちに待った男なんだ。俺たちの仕事を取り戻してくれるんだから、と。
今日、トランプはメキシコに工場を建設する計画を立てていたトヨタを、名指しで非難した。「とんでもない!」、と。
「アメリカに工場を建てるか、さもなければ国境で高い関税を払え」、と。
トヨタは「アメリカの工場を移転するわけじゃない。アメリカの雇用を奪っているのではない」、と言っている。トヨタ社長の豊田章男は、「既に計画を発表したものであり、メキシコ現地との信義ということがある」、と語っている。そうであろう。豊田章男の言、まともである。
しかし、このようなまともなこと、トランプには通用しない。トランプ、35%の関税をかける、と言っている。企業経営への介入であり、まごうことなき恫喝である。
既に、GMはトランプの恫喝に屈し、フォードもメキシコへの工場移転を取りやめた。で、次なる矛先はトヨタである。
今日、ソニー社長の平井一夫は、トヨタへのトランプの介入について、「企業活動の自由の確保・・・」と言うことを語っている。が、このような当たり前の論理が通らないのがトランプという男である。
何故なのか。
昨日だったか、「遅ればせながら・・・」として出した年賀状にも少し記したが、アメリカのサイレント・マジョリティー(声なき声)、いわば声なき民に支えられているんだ、トランプは。
字数が限られているので、その意を十分に伝えられなかったきらいはあるが、要するにニューヨークやロスといった都会地では分かりえないアメリカの地方の声なんだ。
日本人でありながらアメリカの地方新聞の記者をしている男、こう記している。
ピーク時の失業率は全米平均の2倍近い18%、教育水準が低く、10人に1人しか大学を卒業していない、そのような白人労働者がトランプに熱狂している、と。トランプが、働き口を作ってくれる、と。トランプならば、大企業にも恐れずに話ができる、と。
このようなアメリカのサイレント・マジョリティーの声や思い、既成のエスタブリッシュメントは、まったく理解していなかった。ニューヨーク・タイムズもCBSやNBCといったメディアも。
だから能天気に、トランプが勝ち大統領になるアメリカに、「アメリカ、どうしちゃったんだ」、なんてことを私たちは言っている。アメリカの「声なき声」の現実を知らなかったんだ、私たちは。
そうではある。
しかし、このことポピュリズムであり、トランプの言動、ポピュリズムの極みである。
それに振り回される世界、嘆かわしい。