学び足らん。

石井慧と吉田秀彦の試合、観る。楽しみにしていた。石井慧が、どのような試合をするかを。
もちろん、テレビ観戦である。この試合(この対戦ばかりじゃないが。メーンは、魔裟斗の引退試合)のチケットは、VIP席の10万円以下、とても高い。それでも、会場のさいたまスーパーアリーナには、45000人が入ったという。魔裟斗の最後の試合を観に、という人も多かったろうが、石井慧のデビューを観に、という人も多かったろう。
今日の興行のタイトルは、「FielDs Dynamite 勇気のチカラ 2009」、という。多くの試合が組まれているが、その間に、よく知られた役者が多く出てくる「清水の次郎長 命の絆」、というCMが、出てくる。パチンコの広告だ。このイベントを主催している、フィールズという会社のCMなんだと解かる。
このご時世、いや、こんなご時世だからか、パチンコ関連産業は、業績がいいんだな、きっと。あの、角川春樹事務所も、このフィールズのグループ企業のようだ。
それはともかく、北京で金を取った後、すぐにプロの格闘技界に転向した石井慧は、23歳。バルセロナで金を取った吉田秀彦が、プロの格闘技界に転じたのは30歳を過ぎてから。いわば、格闘技の競技者としては、ピークを過ぎてから。いまは、40歳だ。
このマッチメイクが発表された時、これは、業界にとっては”金の卵”である石井慧の、華やかなデビュー戦、ハデな初勝利として組まれたな、と思った。しかし、違った。
事前には、「オレの練習を見たら、吉田がビビる」なんて、いつもの石井節を発していた石井が、1ラウンドから吉田に圧倒された。左右のアッパーを見舞われ、ダウンまでした。
2ラウンドには持ち直したが、左膝で吉田の急所をけり、減点を受けた。まあ、あれは故意ではなく、石井の未熟さ故の蹴りであるが、プロ転向以来1年以上、ハワイで、ブラジルで、ラスヴェガスで、トレーニングを積んできたとはいうが、まだ未熟、勉強が足らない。打たれ強いことは、打たれ強いが、勝つには、まだ遠い。まだ学び足りない。修業が足らん。3ラウンド闘い、結局、石井慧は、負けた。
700年前の言葉に、こういう言葉がある。<驥を学ぶは驥のたぐひ、舜を学ぶは舜の徒なり。偽りても賢を学ばんを、賢といふべし>(吉田兼好『徒然草』)。少し荒っぽく言えば、勉強しろ、学べ、ということだろう。
今日の試合の石井慧のファイトマネーは、1億円だという。たしかに、石井は、1億の価値のある潜在能力を持つ男ではある。だが、今日のような試合運びをしていては、そのファイトマネーの桁は、どんどん下がる。勉強してくれ、石井。私は、単なる一人の石井慧ファンでしかないが。そう思う。
だから、石井慧に、兼好法師の上記の言葉を贈る。プロの格闘家として、学んでくれ、という言葉を。
この後、NHKに切り替えたら、除夜の鐘が鳴った。今年も終わる。