名古屋場所 13日目。

薄日、小雨。
白鵬の台頭、そして、明らかに朝青龍の力が落ちたな、と感じた頃から、テレビの中継をそう熱心に観なくなった気がする。
今場所も、時折にしか見ていない。出だしは良く、オッいよいよやってくれるかな、と思っていた稀勢の里も終盤崩れているし、琴奨菊も勝ち越しがどうか、という星だし。
この日まで、白鵬と琴欧州の2人が1敗、琴光喜が2敗、朝青龍と綱取り場所となった日馬富士は3敗。今後の対戦相手を考えると、案外琴光喜が有利かな、と思っていた。同星決選の可能性も高いが、と。
しかし、琴光喜は、平幕・安美錦に破れ、脱落。
事実上の優勝決定戦となった1敗対決は、予想通り白鵬が琴欧州を下す。善戦したと言えば言えるが,なぜ、もっと白鵬の右下手をしぼっておっつけないのか。相撲の形が違う。琴欧州はまだ相撲のなんたるかが解ってない。自分の勝ち方を、強さを、ここ一番で出せないな、どうも。親方も歯がゆいだろう。ブルガリアの国民栄誉賞を受けることになったそうで、それはそれで御目出度いが、相撲の方はまだオメデタイ。
しかし、白鵬は、確実に大横綱への道を歩いているな。それも、大鵬、貴乃花といった正統派大横綱への道を。まだ23か24といった若者なんだが。たいしたものだ。
昨日までに3敗し、優勝からは遠のいた朝青龍と日馬富士の一戦は、朝青龍が豪快な櫓投げで、可愛がっているモンゴルの後輩・日馬富士を屠った。昭和50年以来の決まり手だという。さすが、朝青龍だ。「お前の綱取りなどまだ10年早い」、と教えたんだな。綱取り場所の日馬富士とやる時には、櫓投げや吊り落としといった豪快な投げで土俵に叩きつけてやろう、と思っていたんだな。お前を立派な横綱にする為に。客観的に見て全盛期の力は確実に落ちている。しかし、やはり朝青龍だ、いかなバッシングを受けようとも、ここ一番の存在感がある。尋常な相撲取りじゃない。尋常一様な横綱じゃない。
話はガラッと変わる。土俵のすぐそば、西方白房下の花道、砂被りの3〜4列目、連日粋な女性が座っている。名古屋場所15日間を通して。おそらく、粋筋の女性、ある程度の料亭の女将だと思われる。年のころは60代半ばであろうか。髪はひさしに結いあげ、日替わりで涼しげな着物を着こなしている。今日は淡い水色のお召し物であった。
年に一度の名古屋場所、いつの頃からか、この女性を見ることも名古屋場所を見る一風景となった。私はひそかに「名古屋場所の女」と呼んでいる。いつまでも、お元気であれかし、と思いつつ。