平常心でいられるか。

9月場所が始まっている。国技館では、初場所以来。
昨日は見ていないが、初日、2日目、そして、今日、4日目の取組みを見た。
日馬富士の綱取りは成るか。鶴竜と琴奨菊の大関取りは。この二つ、今場所の見どころだ。それにあとひとつ、私は、稀勢の里の巻き返しに期待している。
稀勢の里、鶴竜や琴奨菊よりも大関に近い、と言われ続けてきた力士。しかし、現状では、両力士に遅れをとっている。関脇には、定着している。負けるわけにはいかない。本人はもちろん、それ以上に、周りがジリジリしている。私も。
心技体、相撲を語る上で欠かせない。より上を狙う力士、心技体、いずれが欠けても難しい。
今場所、綱取りに、大関取りに挑戦する3力士、「体」には、ややバラつきがある。しかし、それをカバーして余る「技」を持っている。問題はない。問題は、「心」の部分だけ。いかに平常心でいられるか、ということだけだ。
先場所の琴奨菊は、それに耐えることができなかった。終盤、平幕に相次いで敗れた。星ひとつの差で、大関の座を逃した。今場所はどうか。
さらに、稀勢の里だ。稀勢こそ、「技」と「体」は、申し分ない。残るは、「心」の部分だけ。
初日のNHKの中継から。

東方土俵入り、鶴竜、琴奨菊、それに、日馬富士。大関取り、綱取りに挑戦する3力士が、続いて土俵に上がった。

西方土俵入り、正面に顔が見えるのが、稀勢の里。
稀勢、今場所の主役ではない。しかし、終わってみれば、稀勢が主役、ということにならないとも限らない。そうなればいい、と秘かに私は思っている。ハハハ。
それよりも、土俵上でこちらを向いている左から二人目の力士、赤い化粧回しのヒョロッとした力士、隆の山だ。
チェコ出身で初の関取り。2001年に入門して以来、苦節10年、やっと関取りとなった力士。それよりも何よりも、体重が98キロしかない。舞の海以来、100キロを切った関取りの誕生。
この隆の山、すごく人気がある。初日には、4本の懸賞がついていた。2日目には、3本。昨日は見ていないが、今日は、1本懸賞が掛かっている。声援も多い。ただ、残念ながら、今日まで4日間、全敗。
舞の海には、技があった。相撲センスも抜群のものがあった。だから、幕内でも、100キロに満たない身体で勝負ができた。しかし、隆の山には、舞の海の技もセンスも見られない。隆の山、前へ出る、と考えているらしい。相撲一本の真面目な男らしい。しかし、この身体で、前への相撲を取ることは、幕内では難しい。
幕内どころか、二場所前までは幕下の力士であった。それが、例の八百長問題で前場所十両となり、十両もひと場所で幕内に上がった。勝てないのも、不思議ではない。格が違う。
しかし、面白い力士である。何とか勝たしてやりたい、と誰しもが思う。せめて、4〜5勝でも、と。私もそう願っているが、その思い、叶うかな。

初日の白鵬の土俵入り。
今、心技体兼ね備えているのは、やはり、白鵬のみか、と思わせる。4日間、まったく危なげない。常に、平常心を保っているのだろう。他の力士とは、格が違うどころか、まったく違う、と言えよう。この後、たとえ白鵬が負けたとしても、それは変わらない。
綱取りの日馬富士は、今日も敗れ、はやくも2敗となった。これで、綱取りは、ほぼ絶望。
かりに、白鵬が何番か取りこぼし、日馬富士がこの後すべて勝ち優勝しても、日馬富士を横綱にすることには問題がある。ヒョッとすると、日馬富士は、横綱になるべき力士でないかもしれない。どうも私には、そう思える。横綱の絶対条件である品格がない。
朝青龍には、たしかに品格はなかった。しかし、また別種、ヒールとしての格があった。日馬富士には、朝青龍が持っていたある種の格がない。ヒールに徹する心意気、とでも言うべき品格が。平常心以前の心、と言うべきものかもしれないが。
鶴竜も2敗した。
いつも無表情な男だが、おそらく、平常心ではいられないのだな。鶴竜も好きなので、何とか、と思ってはいるのだが。大関になれば、きっと名大関と言われる力士になるのだが。
琴奨菊は、4日間勝っている。
先場所の轍は踏まないように、と考えているようだ。しかし、終盤までそれが持つか。私は、少々危ぶんでいる。取り口を見ていても、とても平常心を持って取っているようには見えない。
そして、稀勢。
稀勢の里も、4日間土つかず。危なげなく星を挙げている。慎重に取っているようにも見える。平常心を保っているように見える。さて、どうなるか。楽しみだ。