雨あがる。

夜半からの雨、朝にはあがる。陽も出てきて、天気良し。
しかし、日中にも降ってくれないとな、この時季。梅雨なんだから。

今日、旧暦5月13日。曾良を伴い「奥の細道」を歩いていた芭蕉は、この日、一関から平泉・中尊寺へ詣でているが、320年前のこの日も「天気明」、つまり、晴れていたらしい。前日は雨が降っていたそうだが。(曾良『旅日記』)
もっとも、さほどの道程ではなかったという記憶があるが、光堂(金色堂)までの山道は降られたら歩きにくかろう故、主従にはよかっただろうが。

で,
     五月雨の降りのこしてや光堂     
と翁は詠む。今日詠まれた最も有名な句だろうな。おそらく。
だがしかし、この日には、これまたよく知られている,
      夏草や兵どもが夢の跡     
も詠まれている。藤原氏三代の栄耀栄華の跡・平泉だもの。
甲乙、どちらが、なんて馬鹿なことはせず、また、雨の時季でもあり、前者に絞る。
晴れていて、雨は降っていない。しかし、芭蕉は、「五月雨の・・・」とくる。しかも、光堂自体は覆いで覆われている。でも、やはり、「五月雨の降りのこしてや・・・」である。
山本健吉訳の『奥の細道』の解説によれば、「芭蕉は詩人の特権で、散文的な套堂などは取り除き、また、勝手に雨をふらせて、暗い五月闇のなかに輝く光堂の姿を、対照させる」とある。また、「作者が胸中にはっきり光堂の存在感を受け取っている重みが感じられる」とも、山本はいう。なるほど、そうか。平明な句だと思っていたが、先哲にそう言われると、やはり、なるほど、だな。
なお、図版もいっぱい、ルビもいっぱいのこの山本健吉の書は、世界文化社刊の『グラフィック版日本の古典11巻 奥の細道』。万事に昏い私のような者には、とても解りやすい。

薄日になった。今日はこれまで。