ラグビーW杯日本2019。

ブログを中断してひと月となる。
先月までのこの夏もとても暑く、体調がよくなかった。今年は春先にも具合が悪くなったので二度目。ほとんど外へは出なかった。何人かの方から展覧会の案内をいただいたが、多くは失礼した。見たい映画もあったのだが、まったく行かなかった。9月20日からラグビーのワールドカップ2019、日本大会が始まった。ラグビーは大好き。中継される試合の半分以上、2/3近くはTV観戦していた。
明後日、13日には日本にとって初のベスト8へ行けるかどうかの大一番を控えている。それまでに、日本のこれまでのゲームを足早に。
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ずいぶん前からラグビーを見てきた者にとっては、考えられないようなことが起こっている。
日本の世界ランク、8位である。
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ラグビーの世界では、ヨーロッパの6ネーションズと、南半球の4か国のトップ10とそれ以下の国の力量差には、歴然とした差がある、と言われてきた。
それが今、日本の世界ランクが8位である。ヨーロッパ6ネーションズのスコットランドは9位、日本の下である。ナンとー。時代は変わったのか。
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開幕戦前の練習で日本のキャプテン、リーチ・マイケル、檄を飛ばす。
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いよいよ”RUGBY WORLD CUP JAPAN日本2019”が始まる。
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開会式のセレモニーが幾つかあった。
連獅子も。
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練習を終えたジャパン、いったんロッカールームへ下がる。
キャプテンのリーチ・マイケルを先頭に手を前の選手の肩に置き。これがカッコいいんだ。
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先頭のリーチ・マイケルの右は日本の得点源・SOの田村優、その右は小さな巨人・SHの流大。リーチの左は外国選手にジャパニーズ・マフィアと呼ばれているプロップの稲垣啓太。
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フッカーの堀江翔太がいる、レジェンドSH・田中史朗がいる。南アフリカから来たピーター・ラブスカフニがいる、韓国人の具智元がいる。具は稲垣啓太と共に左右のプロップ、体重122キロ、頼りになる。ひときわ目立つ髪も髭も金色の男は中島イシレリ、トンガ生まれの日本人。
ジャパンの選手31人の中、Ⅰ5人が外国出身の選手である。日本が世界ランク8位となったのも、このような背景があるからであろう。
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ジャパンのチームキャプテンはこの男、リーチ・マイケル。
ニュージーランドから日本の高校へ留学し、東海大で力をつけた。
今思えば、世界最強、故国ニュージーランドのオールブラックスの選手であってもおかしくないが、リーチ・マイケルに関して言えば、日本に来たからこそその才能が花開いたと言える。そのキャプテンシーも含め。
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開幕戦のロシア戦の前にロッカールームで最後の円陣。
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ラグビーW杯2019日本大会の開幕戦が始まる。
フォワード8人の総体重、日本は864キロ、ロシアは857キロ。日本の方がロシアよりも多い。ひとり平均108キロ、隔世の感がある。
ロシアを圧倒する重量フォワード、ほれぼれする。
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ゲーム立ちあがり、日本は緊張していた。固かった。ハンドリングミスが多く出た。
5分すぎ、ロシアに先制された。コンバージョンキックも決まり、日本から見て0-7。
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12分ごろ、松島幸太朗がトライを挙げる。
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おそらく今大会で代表を引くであろう堀江翔太が、松島の頭を抱く。
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松島幸太朗、39分にもトライ。
SOの田村優、松島を抱く。
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後半の47分ぐらい、ピーター・ラブスカフニがトライ。
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開幕戦、秋篠宮ご夫妻が見えていた。左の方にジャパンのジャージーを着た安倍晋三も。
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55分、日本ゴール前での攻防。
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70分前後、松島幸太朗、この日3つ目のトライを挙げる。
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ノーサイド。
日本30-ロシア10。日本が勝つ。
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SO、日本の司令塔・田村優、それにSH二代の田中史朗、それに田中史朗の後を継ぐ流大。
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ゲーム後のリーチ・マイケル、
リーチのパフォーマンスも今ひとつ。
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どこまでかの「道」。

バイス。

「バイス」ってバイスプレジデントの「バイス」だから、副大統領の「副」だと思っていた。しかし、「VICE(バイス)」単独では、「悪玉」とか「悪徳」という意味だそうだ。その他、「邪悪」、「悪癖」、「不道徳」、・・・、と禄でもない意味ばかり。この映画で初めて知った。
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この男、ディック・チェイニー、たしかに「ワル」であった。
考えてみるに、ブッシュ・ジュニア、ジョージ・W・ブッシュ政権の主要閣僚にはワルが多くいた。ドナルド・ラムズフェルドやディック・チェイニーといったネオコンの連中だった。
まともなのはコリン・パウエルとコンドリーザ・ライスが浮かぶくらい。そのパウエルもガセネタによるとんでもない演説を国連で行うこととなったな(今日は、9月11日。18年前の9.11の日である)。
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<アメリカ史上最強で最凶の副大統領>って、ディック・チェイニー、まだ生きているのによくぞ作ったものだ、この映画。
監督:アダム・マッケイ、主演:クリスチャン・ベール、製作:ブラッド・ピット、3年前のあの『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のチームが再結集したんだ。
『マネー・ショート』は面白い映画であった。
リーマンショックの前、サブプライムローンだモーゲージ債だと怪し気な金融商品の破綻を見抜き、ウォール街を相手に逆張り、空売りで莫大な利益を挙げた4人組の物語であった。ブラピは、そこでは製作と共に出演もしていたが、『バイス』では製作に専念、監督のアダム・マッケイと主演のクリスチャン・ベールに存分に腕を振るわせた。面白くないはずがない。
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『バイス』、今年のアカデミー賞8部門にノミネートされた。作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、その他合計8部門に。アカデミーでは、メイクアップ&ヘアスタイリング賞のみ受賞した。
が、ゴールデン・グローブ賞では、クリスチャン・ベールが主演男優賞を受賞した。
クリスチャン・ベール、『マネー・ショート』とは様変わり、体重を20キロ増やしアメリカ史上最強で最凶の副大統領、ディック・チェイニーを演じた。極悪男を。みごとに。
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右は、サム・ロックウェル扮するブッシュ・ジュニア。
左は、テンガロンハットを被ったブッシュ・ジュニアが、ディック・チェイニーを副大統領にならないか、と誘うところ。ディック・チェイニー、ブッシュ・ジュニアにこう言うんだ。
「ジョージ、悪いが私は社長だぞ。それに国防長官や首席補佐官も歴任した。副大統領なんて形だけのものだろう。全部任せてくれ。内政問題や軍事問題、エネルギー問題、外交問題もすべて任せてくれ」、と。ブッシュ・ジュニアはそれをすべて飲む。で、最強、最凶の副大統領が誕生する。
チェイニー、ブッシュ政権を乗っ取り、イラク戦争をしかけ、莫大な利益を得た(チェイニーが、石油関連の巨大企業・ハリバートンCEOであったことを忘れてはいけない)。
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ディック・チェイニーに扮するクリスチャン・ベールばかりでなく、ブッシュ・ジュニアもチェイニーのカミさんも、ここにはいないがラムズフェルドもパウエルもライスも皆さんよく似ている。それも面白い。
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チラシにこういうおまけがあった。
右上に<極悪副大統領 チェイニー>と記されている。キリトリ線がある。切り取ってお面にするんだ。何とも言えないな。


今日のニュース、出てくるのは小泉進次郎ばかり。あとはグレーのネクタイがどうこうといった人や、赤いキャップを被ったいつも通りのウォーキングという人ばかり。
茂木俊充や河野太郎は吹っ飛ばされていた。
唯一というか唯二というか存在感を示していたのは、留任となった二人のみ。ひとりは不気味な官房長官・菅義偉、あとひとりは捉えどころのない幹事長の二階俊博。ともに70代。未だ30代の進次郎との間の40、50、60代をすっ飛ばしてみるのもありかもしれない。

華氏119。

スティーヴン・スピルバーグは、ドナルド・トランプの大統領就任45日後に『ペンタゴン・ペーパーズ』の製作発表を行ったのだが、それ以前の2016年11月9日、ドナルド・トランプが大統領選の勝利宣言をした日にトランプのでたらめさを暴く映画製作に取り組んだ男がいた。マイケル・ムーアである。
それどころかマイケル・ムーアは、トランプが勝利宣言した日どころか選挙戦中から、ヒラリー優勢の世間の読みに異を唱えていた。とんでもない、これはトランプが勝つ、酷い時代になるぞ、と。
ムーアの読みは的中し、アメリカばかりか世界中ガチャガチャ状態になってきた。。
ロシア疑惑、セクハラ疑惑、移民排斥、TPP脱退、ロシアとの核協定廃棄、イランとの核合意脱退、パリ協定脱退、・・・、・・・。アメリカファースト、アメリカがよければそれでよし。ヘタしたら日米安保どころかNATOもいらない、なんて思いかねない、トランプという男は。さらに、地球上あちこちにミニトランプまでを生み出している。困ったご仁だ。
ムーア、頼むぞ。
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『華氏119』、レイ・ブラッドベリさらにフランソワ・トリュフォーの『華氏451』の末世に重ねた、マイケル・ムーア自身のブッシュ・ジュニアを追いつめた『華氏911』を本歌とする。昨年末、公開された。
「この映画が公開されれば、トランプ王国は必ず崩壊する」、とマイケル・ムーアは言っているが、何の何のドナルド・トランプは罷免もされず、困ったことに、今現在もアメリカ大統領である。
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マイケル・ムーア砲が炸裂、トランプを直撃したはずなんだが。
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マイケル・ムーアが持っているのは、トランプが当選を決めた後のワシントン・ポスト。
「トランプは権力を手に入れた。新しい大統領はアメリカの大虐殺を終わらせる」、とのヘッドライン。ワシントン・ポストたるもの何たる文言。
もちろんのこと、この後、マイケル・ムーアはこの紙面を破り捨てる。
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主演:ドナルド・トランプ、監督・脚本:マイケル・ムーアである。
マイケル・ムーア、ドナルド・トランプの狡猾なからくりを暴く、と言っている。
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実は、ムーア砲が直撃しているのはトランプだけじゃない。
これらの人たちも直撃を受けている。ブッシュ・ジュニアはもちろん、ビル・クリントンもヒラリーもバラク・オバマも。皆さん叩けば埃が出るんだ。
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トランプはアメリカを分断させている。
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ムーアはその中に入っていくが。
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トランプ支持者のホワイトの連中、星条旗をおしたて気勢をあげる。
どう見ても、ガラがよくないな、トランプ支持の連中は。
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”F**K”のアステリクス、おそらく”UC”でないか。”FUCK”であろう。
その意は、だれしもがすぐに頭に浮かんだものではなく、「超」、「チョー」という意味あいであろう。
マイケル・ムーアの言葉、「いけー、やれー」であろうか。少し乱暴であるが。


安倍晋三 、内閣改造を行った。
小泉進次郎、初入閣を果たした。
親父の小泉純一郎は気に食わないが、そうは言ってもかっての親分。その息子を取り立てることは、自らにとっても一石二鳥。

ペンタゴン・ペーパーズ。

ドナルド・トランプがアメリカ合衆国第45代大統領に就任したのは、2017年1月20日である。
そのわずか45日後、スティーヴン・スピルバーグは『ペンタゴン・ペーパーズ』の製作を発表した。ベトナム戦争を分析したアメリカ国防総省の最高機密文書・「ペンタゴン・ペーパーズ」の内容を暴露、国民の前に明らかにしたワシントン・ポストの闘いの映画化である。権力に対するジャーナリズムの戦いの映画化を。
まさかまさかのトランプ政権が誕生した。ドナルド・トランプ、ことあるごとにメディアを叩き、罵倒している。そうした中、スピルバーグは一刻も早く報道の自由、国民の知る権利のために戦ったワシントン・ポストの戦いを描くべきだと考えた。
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スピルバーグ、製作発表から約1年で映画「ペンタゴン・ペーパーズ」を完成、日本では昨2018年3月末に封切られた。
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監督:スティーヴン・スピルバーグ、主演:メリル・ストリープ、トム・ハンクス。3人のビッグネームが組んだ。
多くの映画賞にノミネートされ、昨年のアカデミー賞にも作品賞と主演女優賞でノミネートされたが、受賞は逃した。
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アメリカ国防総省の最高機密文書・「ペンタゴン・ペーパーズ」、まずニューヨーク・タイムズがスクープした。
ワシントン・ポストの編集主幹であるベン・ブラッドリー、後を追う。長い年月隠されてきたアメリカのベトナム戦争の嘘を暴くため。
アメリカを代表するランド研究所のダニエル・エルズバーグからのリークらしいことが分かる。ワシントン・ポストの発行人、つまり社主はキャサリン・グラハム。ご亭主の死で新聞発行を引き継いだ元専業主婦。ベトナム戦争時の国防長官、ロバート・マクナマラとも友人である。
昨日記した日本の『新聞記者』も面白いが、アメリカの新聞記者の動きはダイナミック。「国家機密か、国民の知る権利か」、「何のために新聞はあるんだ」、日和ることなど許されないだろう。
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ワシントン・ポストの編集主幹、ベン・ブラッドリー、社主であるキャサリン・グラハムに政権との対峙を迫る。
トム・ハンクスとメリル・ストリープ、ビッグネームのからみ。
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政権中枢とも親しいセレブであるワシントン・ポストの社主キャサリン・グラハム、編集主幹ベン・ブラッドリーと共に国家の嘘を暴く。
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ワシントン・ポスト社主のキャサリン・グラハムと編集主幹のベン・ブラッドリー、「何のために新聞はあるんだ」を実践する。


ドナルド・トランプのアメリカ大統領就任以来、世界はおかしくなっている。
トランプ、気に食わないものに対しては、「フェイクニュースだ、フェイクだ」と言っている。いつまで言わせていいんだ。
1年少し前、スティーヴン・スピルバーグがドナルド・トランプのえげつなさをやりこめる映画を製作した。が、トランプは今もってアメリカ大統領。情けないよな。

新聞記者。

とても面白い映画である。
6月末に封切られた。小規模封切りである。もちろんと言うか、当然と言うか。
ドッカーンと封切られたこれぞエンタメの王道という『アラジン』と同じに封切られた。上映館の数はまるで違う。当然のこと、興収は異なる。が、『新聞記者』、頑張っている。官邸とメディアのドラマという物語で。
7月末、観に行った。ウィークデーの昼間であるのに満席であった。公開後2か月以上となる今も続映されている。上映館も増えていっている。社会派エンタテインメントと謳っているが、政治サスペンスでもある。
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内閣官房vs女性記者、とある。
内閣情報調査室・内調の官僚と女性の新聞記者の正義への思いであり、闘いである。
原案は、東京新聞の現役記者・望月衣塑子の同名の書『新聞記者』。監督は、藤井道人。1986年生まれ、33歳の俊英。主演は、シム・ウンギョンと松坂桃李。
現実の事件が想起される。
はっきり言えば、モリカケのカケ。内閣総理大臣・安倍晋三のお友達のあの人がらみの問題。
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東都新聞の女性記者・吉岡のもとに、医療系大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届いた。
つい先だってのあの問題、安倍総理のお友達の加計学園の問題だ。
女性記者・吉岡に扮するのは韓国人のシム・ウンギョン。全編、日本語。上手い。初め、日本人にしてはどこかおかしいな、と思っていた日本語の発音、大したもの驚いた。日本人と韓国人のハーフでアメリカ育ちという設定であるので、シム・ウンギョン、英語はより上手い。
東都新聞女性記者の吉岡、現実には東京新聞の女性記者・望月衣塑子、真相究明の取材を始める。
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その一方で内調・内閣情報調査室の官僚である杉浦(松坂桃李が扮する)は葛藤している。
現政権に不都合なニュースをコントロールすることに。かっての上司は飛び降り自殺する。モリカケ問題の時にも自殺した官僚がいたが。
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永田町の物語でもある。
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田原総一朗は、<面白い!!よくぞ作った!>と言っている。
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確かに、そう。
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まさに今日の視点。


安部譲二が死んだ。
『塀の中の懲りない面々』はじめ楽しませてくれた。
何日か前には、池内紀が死んだ。
専門のドイツ文学は知らないが、多くの旅物語を楽しませてくれた。

主戦場。

リタイアをしてから週刊誌の類はまったく読まなくなった。
仕事をしていた頃は、必要もあり、週刊朝日、文春、新潮、それにポストと現代、都合5誌には目を通していた。しかし、今は週刊誌など読まなくとも、何の痛痒を感じない。
が、新聞は読むのでそこに載る週刊誌の広告は目に入る。今週初めの朝毎読に載った週刊ポストの広告は酷かった。
新聞や雑誌といった印刷媒体は、斜陽である。どんどん部数を落としている。誌面も読者におもねるものを、ということになっているようだ。
ポストは小学館。小学館という日本を代表する出版社においてもでも。今のアサ芸・アサヒ芸能は知らないが、今週初めの週刊ポストの広告、昔のアサ芸を思わせる。それ以上に、昔にはなかったネトウヨの論旨が感じられる。本文は読んでいないが、新聞紙面に載った広告からは。
アサ芸はアサ芸で立派な雑誌であった。が、ネトウヨにおもねり、ヘンにアサ芸化したポストはいやらしい。
<「断韓」だ>、<厄介な隣人にサヨウナラ>、と何か面白いものはないかと思っている寂しい連中をあおる。高速道でのあおり運転同様、雑誌上でのあおり煽動である。
日韓のガタガタ、元徴用工訴訟の頃からきしみ始めた。それに対し、ホワイト国対象国からの除外があり、GSOMIA破棄までいった。同盟の解消だ。行くところまで行くより仕方がなかろう。
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しかし、今年初め、何か月か前までは、日韓の主たる問題は「慰安婦問題」であった。
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『主戦場』、日系アメリカ人であるミキ・デザキの作品。
監督・脚本・撮影・編集・ナレーション、すべてミキ・デザキ。
ミキ・デザキ、慰安婦問題に関しさまざまな人にインタビューを試みる。
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これらの人たちへ。
藤岡信勝、櫻井よしこ、杉田水脈、ケント・ギルバート、・・・、右派軍の人たちはキャラの立っている人が多い。対する左派軍の人たちは、おとなし目の人が多い。
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櫻井よしこ、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の共同代表。
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2月11日の靖国神社へ何度か行っている。
このような光景に行きあたる。
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ソウルの日本大使館前。
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慰安婦像、アメリカのあちこちでも。
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日本は「日の丸」で突っぱねる。
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監督その他ひとりで奮闘している日系アメリカ人、ミキ・デザキ、この男である。バトル・グラウンドへ誘ってくれた。



1年半以上、2年近く映画を取りあげていない、
昨年末、樹木希林が死んだ後のキネ旬直営館での6作品の追悼上映やたまに挟むものはあるが、この間映画のこととはご無沙汰であった。
私の知り合いでは最も多く映画を観ている、ひと月に20本前後観ている、新宿ゴールデン街のバー「十月」のママには較ぶべきもないが、この1年半以上2年近くの間に100本少しの映画を観に行っている。ひと月に5本ちょっととなろうか。
暫らく、その間に観た映画のことごとを記そうと思う。

東京裁判。

昭和21年5月3日の『昭和天皇実録』の最後の部分に、このような記述がある。
<この日、極東国際軍事裁判が開廷し、以後二年半にわたる審理が開始される。昭和二十三年四月十六日結審し、同年十一月十二日、刑の宣告が行われる。元内閣総理大臣東條英機ら七人に死刑判決が下される。死刑は十二月二十三日に執行される>、との。極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判に関する短い記述である。
日暮吉延は、牛村圭との共著『東京裁判を正しく読む』(文春新書 2008年刊)の中で、<東京裁判は、きわめて論争的な歴史的事例である。一方は、この裁判は「文明の裁き」であるとして過大な期待をかけ、肯定する。他方は、連合国が持ち出した「戦争犯罪」は第二次大戦で新たに創造された事後法であり、しょせんは敗戦国の指導者だけを問責する「勝者の裁き」にすぎないと否定する>、と記している。
東京裁判、さまざま多くのテーマを内包している。
東京裁判の研究者である日暮吉延の記すようなこと。特に「事後法」の問題、戦勝国による敗戦国の断罪、敗戦国の戦争犯罪のみを対象としたこと等問題は多い。
また、戦勝国による「報復」を挙げることもできる。死刑となった者とそうでない者との境目。判決の少数意見、特にインドのパール判事の判断。全員無罪としたその根拠、考察。
何よりも戦勝国である連合国にとって、昭和天皇の戦争責任を問うか否かという大きな問題があった。敗戦国ドイツを裁いたニュールンベルク裁判と異なり、東京裁判には天皇という問題があった。日本国民の間で特別な意味を持つ天皇をどうするか、という。
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アメリカ国防総省が撮影していた50万フィートに及ぶ膨大な東京裁判の記録映像を、小林正樹が5年の歳月をかけ、編集、制作したドキュメンタリー映画『東京裁判』、1983年に公開された。監督:小林正樹、音楽:武満徹、ナレーター:佐藤慶。
1980年代の私、映画を見ていない時代で、小林正樹のものもこれ以前の『人間の条件』や『切腹』は見ているが、80年代のこれは見ていない。
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今月、4Kデジタルリマスター版として、映像のみならず音響もブラッシュアップされ公開された。
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<君は知っているか  敗戦の虚脱と混乱を、そして平和到来の歓喜を 昭和から平成を超え、令和に問いかけてくる、何を裁き、何が裁かれなかったのかを>、と惹句にある。
<誰が、この戦争を引き起こしたのか ・・・ 至高の4時間37分が鮮やかに甦る>、とも。
そう4時間37分、めたくちゃに長い。だから、途中で10分少しの休憩が入る。都合5時間近く。が、過去を知り現在を思うに必要な時間であった。
なお、このキネマ旬報の直営館では16日までとなっているが、8月末に至ってもまだ続映している。戦争の8月ということばかりでなく、改元の年ということもあるのであろう。令和となり、平成を通し昭和を思う人がある程度いるということであろうか。
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開始早々、昭和20年8月15日の正午放送された昭和天皇の「終戦の詔書」が全文流れる。
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「・・・ 堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ビ難キヲ忍ビ、・・・」で知られるお言葉である。5、6分ぐらいであったろうか。
日本は敗けた。
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中央右よりにチャーチル、ルーズベルト、スターリンの顔が見える。ルーズベルトということは、ポツダム会談に先立つ1945年2月のヤルタ会談の模様。ドイツも日本もそう長くはないことは織り込みずみであった。左中央には、1945年8月30日、厚木に降りたつマッカーサー。
A級戦犯として訴追されたのは28名であった。ここにはその半分の14名が。
左上には・・・
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1940年代の指導者としては、どうして東條英機を入れていないんだろう。ヒトラーやムッソリーニを入れながら。
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1945年9月2日、戦艦ミズーリ艦上での降伏文書交付、そして、東京裁判。
周りには、A級戦犯の残りの14名。
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A級戦犯とされた者に民間人が2人いる。
昭和天皇のお側に長年仕えてきた内大臣・木戸幸一と大川周明である。大川周明、右翼思想家であるが、何故に大川周明、と。
その大川周明が、前に座っている東條英機の頭を平手でパチンと叩いたよく知られた様も流れた。二度叩いている。東條英機は苦笑いをしていた。東條英機、大川周明のことがよく分かっていたのかな。
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昭和天皇の戦争責任に関しては、東條英機。昭和天皇の戦犯訴追を避けるため、さまざまなアプローチを受ける。GHQからも。日本側も『昭和天皇独白録』はじめ、昭和天皇を守る防御線を張る。
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主席検事・キーナン、昭和天皇への戦犯訴追がおよばないように、それは東條英機が被るように、との東條英機に対する誘導尋問も行っている。
GHQの意志であった。ダグラス・マッカーサーの意志。
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<なぜマッカーサーが、天皇を戦犯裁判にかけないと判断したかは、確たる証拠がないのだが、日本を統治するという現実的な目から見れば、「民主主義の伝道者」として自らが日本の歴史に名を残すほうが得策だし、そのためには、天皇を最大限利用したほうがよいとの判断をもっていたようだ>(保坂正康著『昭和史七つの謎』 講談社 2000年刊)。
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ニュールンベルク裁判と東京裁判、決定的な違いがある。
ニュールンベルク裁判は、戦勝国である米英仏ソが均等な力を持っていた。それに対し東京裁判は、戦勝国の中でアメリカが圧倒的な力を持って裁判を進めた。就中、マッカーサーの意向がすべてを左右した、と言っていい。
マッカーサー、そして東條英機の二人が昭和天皇を救った。
しかし、東條英機など7人の死刑が執行された昭和23年12月23日の『昭和天皇実録』には、そのことはまったく記されていない。
その前後を読み進めると、11月12日に<・・・。この日をもって極東国際軍事裁判は終了し、十二月二十三日、絞首刑の宣告を受けた東條英機以下七名の刑が巣鴨拘置所において執行される>、との短い記述があるのみ。
以前にも記した覚えがあるが、昭和天皇をお守りした東條英機に対しあまりにもお冷たい。
上皇となられた先帝の、国民が首を垂れる行動も、恐らくこのような父君のウーンという過去を清算するべきお心であった。
本来、雅な人であるべき天皇が武人としてのお立場となられた昭和天皇、後を継がれた平成の天皇である現上皇がいてくださって国民は救われた。
映画『東京裁判』とは少し離れたか。