ゴッホ最期の手紙。

なるほどこういう手があったか、という映画である。「動く油絵」と謳っている。
俳優を使い実写撮影されたものをキャンバスへ投影、そのデータをもとに画家が油絵を描く。それをアニメーション化する。
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脚本・監督は、ドロタ・コピエラとヒュー・ウェルチマン。ポーランドとイギリスの合作。
アニメ、アニメーターが膨大な数の画像を描き、そのひとコマひとコマを連続させて制作する。そのひとコマひとコマを油絵とした。気が遠くなる作業。
125人の画家が参加、65000枚に近い油絵を描いたそうだ。95分のアニメ作品を創るために。
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ゴッホ、多くの自画像を描いているが、多くの周りの人たちも描いている。タンギー爺さん、医師ガシェ、郵便配達人ジョゼフ・ルーラン、・・・と。
その郵便配達人ルーランの息子であるアルマンが、ゴッホの弟テオ宛の最後の手紙を持って、アルルからパリ、そしてオーヴェル=シュル=オワーズへと巡り歩く。所縁の人たちからゴッホのことを聞く。皆さんすべてが良く言う人ばかりじゃない。とんでもない男だと言う人もいる。まあそうだ。さまざま問題を起こしていた男だから。
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ところで、125人の絵描きが65000枚に近い油絵を描いたと記したが、すべてゴッホが描いた絵そのもののような筆致でなければならない。つまり、ゴッホが描いたそのままという油絵でなければならない。125人の絵描きすべてが。
ずいぶんトレーニングをしたに違いない。このアニメ映画、完成までに4年余の年月をかけているそうだから。
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まさにゴッホだ。
その狂気の度合いも、弟テオに対する愛も。
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ゴッホは、自らの腹を銃で打ち自殺を図った。誰もがそう思っている。
アムステルダムのゴッホ美術館もそう言っている。
上は、そのアムスのゴッホ美術館の日本語版パンフの一部を複写したもの。ここにも、<1890年7月27日、ゴッホはピストルで自らの胸を打ち、・・・>、と記されている。
なお、下の作品≪カラスの群れ飛ぶ麦畑≫は、7月、死の直前の作品である。
それはそれとし、実はこの映画『ゴッホ 最期の手紙』は、そのゴッホの死の真相についても疑義を呈している。
つまり、自殺ではないんじゃないか、と。
ゴッホ自身は、自ら打ったと語っている。が、打たれたのじゃないか、と。実際に引き鉄を引いたのは赤毛の少年で、ゴッホは彼を庇っているのじゃないか、と。
いずれにしろ37歳のゴッホ自身、そう遠くない時に死ぬなと思っていたであろう。それが自らの手であれ赤毛の少年の手であれ、同じこと、と。