大相撲稀勢場所二日目。

今日午後、市の図書館へ行っていた。夕刻、帰ろうと思っていた。帰って相撲中継を見ようと。が、帰らなかった。
実は図書館から家までは歩いて7、8分であるが、図書館から電車の駅までは歩いて4、5分。駅の方が近い。駅から電車で10分ばかりで、さまざまな店がある繁華な街へ出る。飲み屋も多い。だから時折り、家には帰らず駅の方へ行くことがある。
今日も駅の方へ行った。相撲中継をかけている居酒屋もあるので。
5時前に居酒屋へ入ったが、相撲中継の見えるカウンター席は満席。じいさん連中、酒を飲みながらテレビを見ている。私の席からではテレビは見えない。仕方ない。稀勢の里の一番だけを見ようと思い、スマホのスポーツナビで土俵の進行状況をチェックしながら飲んでいた。
北勝富士が豪栄道を下し、いよいよ稀勢の里と逸ノ城の一番となった。
私は席を立ちテレビが見えるところへ移動した。テレビが見えるところといっても、その前に陣取るじいさん連中の後ろから、じいさんとじいさんの間、その隙間からテレビを見る。それでも上の方は切れている。
まあ、それでよし、である。

時間いっぱいである。

蹲踞。

なかなか呼吸が合わず。

仕切り直しは4度を数えた。
仕切り直しの度、私は、稀勢に負担となっていくなと思っていた。ボヨーンとした逸ノ城よりも、繊細な稀勢の里の方に影響が出るだろう、と。
そうなった。
この後の稀勢の里、逸ノ城に敗れた。

敗れた後の稀勢の里、土俵に手をつき暫らく動かない。

このように。
稀勢の里の脳裏には、何が去来しているか。

逸ノ城、大関、横綱撃破の2連勝。

花道を下がる稀勢の里。
剣ヶ峰。確かに後がない。

報道陣が支度部屋へ。

高安は勝ったが、栃ノ心、豪栄道の両大関は2連敗。そして、横綱・稀勢の里も2連敗。
この後、白鵬は勝ったが、鶴竜は敗れた。混戦ではあるが、終わってみれば優勝は白鵬となっているのではなかろうか。

画面ではリプレイ映像が流れている。
そこに黄色い言葉が重なる。敗れた後の稀勢の里を花道で追いかけたアナウンサーの言葉が。

リプレイ映像の稀勢の里、素人目にも、腰、下半身が安定していない。


テレビに一番近いカウンターに座っていたじいさん、この後、「ウウワー」と大きな声で叫んで席を立ち、帰っていった。

稀勢の里の今の状況、もちろん稀勢の里自身の問題もあるが、「日本人横綱、日本人横綱」と言ってきた日本人全体にも責任はある。「心技体」、この内特に「心」の分野に不安がある稀勢の里を横綱とした日本人すべてに。
稀勢の里を「悲劇の横綱」とするであろう責任が。
少し早いが、そう思う。