村上隆の五百羅漢図展(続き)。

作家・村上隆を象徴するDOB君というキャラクターは、1995年に誕生したそうだ。マンガやゲーム、アニメ、また、コメディアン・由利徹のギャグなどから生み出された、という。「DOB」という言葉に特別な意味はないそうだ。
村上隆の東京芸大大学院の博士論文のタイトルは、「意味の無意味の意味」。”無い”ってこと、どこか通底する。表面からは窺えない、ニヒリスティックな思いがあるのかもしれない。

イメージにあるDOB君じゃないかな。

「たんたん坊」、「ゲロタン」というキャラもある模様。
これ、たしか、≪たんたん坊:a.k.a.ゲロタン:輪廻転生≫じゃなかったか。

近づく。

タイトルは失念。

DOB君も変容しているそうだ。
いずれも2015年の作。最新作である。


ところで、五百羅漢図である。
5、6年前、2009年から2011年にかけ、「藝術新潮」誌上で村上隆と美術史家・辻惟雄による「ニッポン絵合せ」という連載があった。その作品が高値で取引され飛ぶ鳥を落とす勢い、といった村上隆と、日本美術史の大御所・辻惟雄との丁々発止の真剣勝負。
辻が文章でお題を出し、村上がそれに作品で応えるという趣向。21回に亘った。
その終盤、2011年3月11日、日本はあの大震災に見舞われた。
あちこちの国が助けてくれた。中でもカタールからは多額の支援を受けた。カタールという国、金持ち国ではあるが、それでも格別な支援をしてくれた。そのことへの感謝の意を込めてとなっているが(どうもカタールの王女さまからの依頼であるようだが)、いずれにしろ2012年、カタールのドーハで村上隆の五百羅漢図が公開された。
少し横道へそれたが、村上隆の五百羅漢図、元はと言えば「藝術新潮」誌上での辻惟雄との「絵合せ」に端を発しているんだ。

この奥に、それが。

一番 狩野永徳、二番 伊藤若冲から始まる。

曽我蕭白、荒川修作も。

インドの女神、リンガから、赤塚不二夫、村上春樹も。

そして、最終回の二十一番は、羅漢と震災。
で、村上隆の五百羅漢図となる。
辻惟雄先生と村上隆の丁々発止のコラボ、面白かった。
この展覧会の音声ガイドのナレーターは斎藤工であった。斎藤工、今売り出し中の若手イケメンだということは知っている。しかし、書かれたものをただ読んでいるだけ、という印象。味がない。
が、実は味付けがあった。時折り特別出演として、辻惟雄の解説が入るんだ。80代半ばの辻惟雄の声、味があった。

先人たちの五百羅漢図という壁面もあった。
芝・増上寺の五百羅漢図である。百幅の内の二幅。

長沢芦雪の《方寸五百羅漢図》もある。
方寸であるから、一辺3センチである。その中に五百羅漢が描かれている。
それを実物大に複製し、ルーペを通して見る。気が遠くなる。

村上隆と辻惟雄とによる「絵合せ」、十番 井上有一≪貧≫、との辻惟雄のお題。

村上隆、こう応える。
≪富を乞う者、走るべからず≫。
アクリル、カンヴァス、アルミニウム、フレームにマウント。
どうどうたる造形。