深夜食堂。

新宿、大ガードを西口から東口の方へくぐり、靖国通りを進んだ花園神社の近辺の路地裏にめし屋がある。ゴールデン街の辺りとも思われる。
営業は深夜のみ。午前0時に暖簾を掲げ、朝7時ごろ店をたたむ。深夜食堂である。メニューは、酒と豚汁定食のみ。が、頼めば大抵のものは作ってくれる。

「めし」という文字だけが書かれた提灯、暖簾には「めしや」と染め抜かれている。紺の作務衣のようなものに白い前掛けの「めしや」のマスター、寡黙な男である。飲み屋兼食堂といった店のマスター、このようなタイプの人はまま見受けられる。
『深夜食堂』、監督は、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』で第31回日本アカデミー賞最優秀監督賞を取った松岡錠司。マスターに扮するのは小林薫。
230万部の大ヒットであるという安倍夜郎の原作コミックも、評判を呼んだというテレビドラマも知らないが、松岡錠司による映画は、趣き深くとても面白い。
小林薫のマスターも余計なことは言わず、寡黙な男。昨日までの”濃い”連中とは異なり、日本人らしいオーナー・シェフだ。

「めしや」の店内。
ガラス戸を引いて中へ入ると、コの字形のカウンター。
そう言えば、40年ぐらい前、ゴールデン街にこのような店があった。夜中開店ではなく、7時か8時には開いていた、と思うが。肉じゃがとか、きんぴらごぼうとか、ひじきの煮つけとか、・・・というものを出していた。
しかし、『深夜食堂』、40年前の昭和レトロの物語ではない。現代の物語である。
さまざまワケありの人が出てくるが、その中に、3.11の大震災で女房を喪った福島の男がいる。この男、大震災後のボランティアで来ていた東京のOLに惹かれ、彼女の行きつけのこの「めしや」へ追いかけてくる。気のいいヤツなんだが、女房を喪った喪失感にボランティアの姿、グッときたものとみえる。

「めしや」に誰かが骨壷を忘れていく。
骨壷のすぐ前には、ストリッパーとストリップ鑑賞半世紀というジイさん。その後ろは2丁目のゲイバーのママ、ゲイ歴48年というつわもの。その右は地回りのヤクザとその弟分。ウンッ、いきなり濃い連中が出てきちゃった。しかし、彼らもなかなか趣き深いんだ。
右は、北陸から出てきた女の子。故あり、「めしや」で働くことに。

愛人が死んじゃった。が、約束と違い、遺産は何ひとつくれない。新しいパトロンを探さなくっちゃ、という女もいる。が、金などとはまるで関係のないしけた安サラリーマンと意気投合。
右は、福島の被災地からボランティアのOLを追ってきた男。「めしや」で悶着を起こしては、警察の厄介になっている。

「めしや」のカウンターには、さまざまな人が。

(左) お茶づけシスターズと呼ばれている3人組のOLがいる。
(中) 新橋の老舗料亭の女将も時折り来る。「めしや」のマスターとのつき合いは長い。どうも、秘かにマスターを想ってもいるようだ。
(右) 口の達者な浪速娘と、彼女に惹かれているフリーカメラマン。 

いろいろな人が来る。寡黙な男がマスターである「めしや」には。

「めしや」、その定番メニューは、豚汁定食に酒だけである。
しかし、注文があれば何でも作る。注文の多いのは、このようなもの。なんと言うか、かと言うか、いいねー。


橋下徹が提唱した「大阪都構想」、今日、投開票、僅差ながら敗れ去った。
東京に次ぐ大都市・大阪の変革は必要である。
行政ばかりじゃなく、経済も大変だ。土俵際に追いつめられたシャープ、またパナソニックにしたって心穏やかではない。
橋下徹、大阪市長の任期いっぱいは勤めるが、その後は政界を引退すると言う。
橋下徹、ひと時の風雲児ではあった。しかし、彼自身も言うように危険な人物でもある。政界を引くこと、日本国にとってはいいことであろう。