終わってみればやはり白鵬。しかし、時代は確実に動いている。

今日、7月場所千秋楽。
白鵬の30回目の優勝となるであろう、と思われていた。しかし、終盤、縺れた。カド番大関の琴奨菊が突っ走ったり、平幕の高安が頑張ったり、いつの間にか豪栄道がピタリとついていたり、と。
今場所、何やかや出ることも多く、三分の一ちょっとしか見ることができなかった。
それはともかく、優勝争い、今日楽日・千秋楽まで縺れこんだ。が、終わってみれば、やはり白鵬・・・

白鵬、30回目の優勝。
昭和の大横綱・大鵬、千代の富士に迫る。

13日目の白鵬、稀勢の里との一番。

白鵬、鋭い出足で稀勢の里を組み止める。

が、白鵬、勝負を焦った。
土俵際で小手投げを食う。
白鵬、11日目に豪栄道に敗れている。強引な相撲で。

白鵬、2敗となる。
この日、一番前の日馬富士と鶴竜の取り組みであったと思う。あるいは、前日の日馬富士と豪栄道の一番だったかもしれない。日馬富士、立会いに変化して勝った。
解説の九重、こう語った。
「勝負のついた後のお客さんの寂しい拍手。横綱なんですからねー」、と。くぐもった声で。
横綱が立会いの変化で勝つなんて寂しい、と。
日馬富士と同じく小柄な身体でありながら、今、大鵬と共に白鵬が目標としている31回の優勝を誇る千代の富士の、偽らざる心情の吐露である。
日馬富士、勝てばいいってものじゃない、よ。横綱なんだから。
そい言えば、今場所の初めの頃、舞の海もこう語っていた。
「白鵬は内心、本当の横綱はオレひとりで、あとの二人は、準横綱だと思っているでしょうね」、と。誰がみても、たしかにそう。

13日目を終り、優勝争いに残っているのは、これらの力士。

今日、千秋楽の琴奨菊と豪栄道の一番。
共に、自らの相撲人生を左右する大一番である。

控えの琴奨菊。

同じく豪栄道。

豪栄道、琴奨菊を寄り切りで破る。
これで優勝への望みをつなぐ。何より、大関の座を射止める。
豪栄道であれ琴奨菊であれ、踏んばった。
しかし、今場所を通して見てみた場合、新しい勢力がヒタヒタと押し寄せてきた場所じゃないか、と思われる。

初日の懸賞の数である。
白鵬を除けば、遠藤への懸賞、群を抜いている。これは、今場所を通じ変わらなかった。遠藤人気、凄まじい。

遠藤ばかりじゃない。初日の遠藤、照ノ富士に敗れた。
照ノ富士も台頭する若手のひとり。身体もある。今後が楽しみな力士である。

9日目には、遠藤と大砂嵐の一番が組まれた。
大砂嵐、この日まで4勝4敗であるが、5日目鶴竜、6日目日馬富士、と二人の横綱を破っている。

人気者同士の一番、今場所は遠藤が上手投げで制した。
実は、西前頭3枚目に躍進してきた大砂嵐にとっては、今日、千秋楽の取り組みは大事な一番であった。
横綱二人を倒している大砂嵐、今日の一番に勝てば殊勲賞を獲得する一番。何より、来場所の新三役が約束されていた。

しかし、実力者・妙義龍がその夢を打ち砕いた。
大砂嵐、負け越した。殊勲賞も来場所の新三役も逃した。

今日、千秋楽の遠藤。碧山との一番。
相変わらず、遠藤の四股、美しい。

遠藤、はたき込みで勝ち、勝ち越す。
来場所、三役の座、三つ空く。
西4枚目で9勝をあげた豪風と西6枚目で11勝をあげた妙義龍は、共に三役に返り咲くであろう。残るひとつ、番付けの枚数と勝ち星の兼ね合いである。遠藤を含めた何人かで。

新しい波、新しい世代、遠藤や大砂嵐、照ノ富士ばかりじゃない。
今日、十両優勝は逃したが、入門4場所目の逸ノ城。モンゴルから来たこの若者、まだザンバラ髪。が、来場所は入幕する。
ガタイも大きい。幕内を駆け上がる趣きがある。
白鵬が30回目の優勝を遂げ、若い世代が確実に迫ってきている角界である。
しかし、思い入れ深い一番もある。

14日目の旭天鵬と若の里の一番。
共に初土俵は、平成4年の春場所。22年余に及ぶ力士生活。見応えのある攻防の末、若の里が勝った。しかし、若の里の星、今日も敗れ5勝10敗。幕尻の若の里、来場所は、また十両へ落ちる。
22年余のキャリアを誇る両力士の一番である。若の里にとっては、最後の幕内での一番かもしれない。しかし、勝った若の里には、懸賞はなかった。
寂しいじゃないか。
今を盛り、人気の遠藤の取り組みには、連日15、6本の懸賞がかかる。それはいい。
しかし、22年余のキャリアを持つ若の里と旭天鵬の一番、ましてや若の里の幕内での数少ない取り組み、懸賞がないなんて。
若の里に懸賞を、という豪儀にして思いやりのある企業がないのが、寂しい。