知らない原発(続き)。

原発事故の収束に奮闘している人は、多くいる。しかし、原発問題、複雑だ。存続にしろ廃止にしろ。私自身は、正直に言ってふらふらしている。
ただ、原発や放射能への過剰な反応には、辟易している。東北の野菜は買わないとか、東北の薪はお断りとか、というヤツらには。ここに書くのも腹が立つ。で、ここ何か月かそのようなことには触れないできた。
一昨日の朝日新聞に、アメリカの地理・歴史学者・ジャレド・ダイアモンドへの長いインタビュー記事が載った。見出しは、「文明崩壊への警告」。面白いものであった。ジャレド・ダイアモンド、さまざまなことを言っているが、概ねこういうことを話している。
文明は、突然崩壊することがある。今、考えるべきことは、環境破壊と人口爆発による地球規模の「文明崩壊」である。それは、自然破壊、漁業資源の枯渇、種の多様性喪失、土壌浸食、化石燃料の枯渇、水不足、その他12の要素の問題に分類できる。そのひとつでも対策に失敗すれば、50年以内に現代の文明全体が崩壊の危機に陥るであろう、と述べる。
ジャレド・ダイアモンド、<火のついた導火線つき爆弾を12個抱えているようなものです>、と言い、<私たちは、環境の再生スピードをはるかに上回るスピードで環境を破壊しています>、と続ける。<先進国は消費水準を落とせ>、とも。
興味深いのは、ジャレド・ダイアモンドのこういう言葉。
「現実的であれ」、と言っている。「温暖化の方が深刻、原発を手放すな」、とも言っている。<一度にたくさんの人が死亡する可能性のある事故、人間の力ではコントロールできないと感じる事故について、人々はリスクを過大評価しがちです>、と。
福島の原発事故については、<けっして福島の悲劇を軽んじるつもりはありませんが、原発事故もまた『リスクが過大評価されがちな事故』の典型例です。・・・・・>、と語る。終わりの方で、<いま一度、『現実的になろう』と言わせてください。・・・・・>、と話している。まさにその通り、自明の理。私は、そう思う。
ところが、どうしたこと。今日の朝日夕刊の一面トップに、「日光での線量検査 保護者が要請」、との見出しがある。首都圏の多くの小学生が修学旅行で訪れる栃木県日光市に対し、放射線検査や宿の食材の産地公表などを求める動きが出ている、ということだそうだ。
昨年末、横浜市教育委員会の担当者が、放射線測定器を携え、日光東照宮の境内を訪れた、という。日光の測定値、問題ない、ということが公表されているのに。実は、「横浜市の修学旅行を考える会」という市民団体から要望書を受けとったからだ、という。
その市民団体の会長、こういうことも言っている。「家庭で線量が高そうな地域の食材を避ける努力をしているのに、半ば強制的な修学旅行で台無しになってしまう」、と。
何という悲しく、寂しいことを言う人がいるものだ。この横浜の「修学旅行を考える会」の会長はじめ会員の皆さん、自分の子供のことしか考えていないのか。栃木県日光市にも小学生がいることを知らないのか。
日光の子供たちは、そこの空気を吸い、北関東近辺の野菜を食っているんだ。そんなことが解からない連中のことなど、寂しく思うことだにしたくない。悲しい。哀しい。
昨年3月11日のすぐ後、栃木県の20歳の若者によって立ちあげられたウェブサイト・prayforjapan、世界中の国々からの言葉で溢れている。
We are with you (私たちは、あなたと共にいる)、You’re not alone (あなたは、一人じゃない)、という言葉が書き連ねられている。横浜の「修学旅行を考える会」の人たちには、こういう言葉自体読んでほしくない。読みたくもなかろうが。勝手にしやがれ、このクソ野郎ども。
でも、それでも、日本人捨てたものじゃない、という人が多くいる。そのこと、嬉しい。