ヒール考。

昨夜は、アメフトのゲームと同じくらいの時間、水道橋の駅近くの居酒屋にいたので、日を跨ぐ帰宅となった。
で、「カメラも悪いが、オレも悪いな、碌な写真がない」、なんてことを思いながら、撮った写真を幾らか選び、ボウっとした頭でブログだけを書いて、寝た。遅い時間だったので、ニュースも見なかった。
今日、遅く起きて新聞を見たら、驚いた。朝刊一面トップに、「鈴木宗議員、失職・収監へ」、という大きな見出しが躍っていた。しかも、白抜き。サブには、「受託収賄など 最高裁、上告棄却」、の文字。
これで、一、二審判決の懲役2年の実刑が確定、鈴木宗男、いよいよ刑務所へ逆戻りとなる。社会面、政治面にも関連記事があり、昨夜のテレビニュースではさぞかし、と思われる扱い。
利益誘導型政治家に断、というのが大方の見方であろう。おそらく、明日以降の各紙誌の社説やコラムには、そういう論調の記事が載るもの、と思う。辻本清美の「あなたは、疑惑の総合商社」発言ばかりでなく、国民の多くは、鈴木宗男は胡散臭いやつ、悪玉だと思っているのだから。地元の人以外は。
鈴木宗男は、ずっと反論している。国家権力、さらに、検察とメディアによる陰謀だ、と。昨日も夕刻、会見を開き、熱弁と涙で検察批判をしたそうだ。”バッジがあろうとなかろうと、政治活動を続ける”、と。
多くの人が、何となく、この人は悪玉だな、と思っている人がいる。また、どういうわけか、悪玉のイメージが似合っている人がいるんだ。例えば、朝青龍とか、今、民主党の代表選を闘っている小沢一郎とか。各メディアのスタンス、どう見ても、菅直人も大したことはないが、小沢一郎は悪玉だ、と思われるものばかり。鈴木宗男も、そういう人のひとり、と言っていい。
こういう悪玉が似合う人を、プロレス用語では、ヒールという。私の世代が知るプロレスの世界では、”銀髪鬼”・フレッド・ブラッシーとか、”黒い呪術師”・アブドラ・ザ・ブッチャー、といったレスラーがいた。顔を見ただけで、こいつは悪だ、ヒールだ、と思われるような人だ。
実は私、このようなヒールが好きなんだ。少なくとも、嫌いじゃない。だから、鈴木宗男に対しても、世間の多くの人とは、その印象、やや異にする。それほど嫌いじゃないんだ。友人の中には、「お前、いい加減にしろ。そんなこと言うと、バカにされるよ」、と言ってくれるヤツもいるかもしれないが、そうなんだ。
初めて知ったが、「ムネオ日記」というブログがある。読んだ。このところ連日、民主党代表選について記されている。鈴木宗男、もちろん小沢一郎支援だ。
それと共に、一昨日の7日には、”菅直人は、あちこち支援依頼の電話をかけまくっているようだが、そんな暇があるなら何故いの一番に、アフガンのカルザイ大統領に、常岡浩介さんの釈放に対するお礼、感謝の電話をしないのか”、と記している。常岡さんは、アフガンで拘束され、先日解放されたジャーナリスト。
鈴木宗男、その前の日まで中央アジアの国へ行っていた、という。9月1日から6日まで、3泊6日、機中泊3日、というスケジュールで。カザフスタン、タジキスタン、アフガニスタンの各国を。アフガンでは、カルザイとも会見しているし、釈放されたばかりの常岡さんとも会っている。菅直人への言及、そのこともあるのだろう。
8月末には、「ビザなし四島交流事業」の人たちと、国後島と色丹島へ行っている。ロシアのビザを取って、これらの島へ行っている人たちへの苦言も呈している。鈴木宗男流”北方四島問題”解決のための不断の努力は、いささかの変わりもないようだ。おそらく、古いタイプの政治家ではあろう。しかし、ただの悪玉ではない。愛すべきヒールが似合う。
新聞報道によれば、昨日夕刻の鈴木宗男の会見には、元外務省主任分析官の佐藤優の姿もあったそうだ。
佐藤優、今日のブログに、「なぜ最高裁は、このタイミングで鈴木宗男衆議院議員の上告を棄却したか?」、と書いている。<いずれにしろ、・・・・・今回、最高裁が鈴木氏の上告を棄却したことは、「誰が日本国家を支配するか」を巡って、資格試験に合格したエリート官僚と、国民によって選ばれた国会議員の間で展開されている、熾烈な権力闘争を反映したものだ>、と。
この論旨、小沢一郎の言っていることに繋がるもの、とも思えるが、それはそれとする。
実は、今日、最高裁による鈴木宗男の上告棄却を知り、佐藤優の『獄中記』を、半日ばかり読んでいた。2006年12月に岩波書店から出されたもの。刊行後すぐに求めたものだが、少し読んだだけで、後は積読になっていたものを引っぱり出した。
”外務省のラスプーチン”と呼ばれた佐藤優、ヒールとは言わないが、怪物であることは確か。偽計業務妨害というチャチな容疑で逮捕され、512日間東京拘置所に拘留された。鈴木宗男がらみだ。『獄中記』は、その間の思索の記録。
カント、ヘーゲル、マルクスあたりならば、読んだことはないが、まだイメージとしては解かる。が、フーコー、ルカーチ、ハイエク、なんてものが次々に出てくる。その読書量たるや凄い。こりゃとてもかなわんワイ、と積読にしていたもの。
ところが今日、引っぱり出してきて、半日ばかり読んでみると、もちろん私の知らないことも多いのだが、面白い。鈴木宗男がらみのことも、多く出てくる。「国策捜査」の盟友なんだから。
でも、今日は眠くなってきちゃったな。長くもなったし。
今日は、これで終わりとしよう。