日中の新宿。

用事が二つあり、久しぶりに外出した。
ひとつは、病院。それが終わった後、小さな用で新宿へ。
その後、遅い昼飯を食う。以前ちょくちょく新宿へ出ていた頃、よく食べに行っていた店。ビル全体にシートがかかっている。入口のところが開いているので中へ入ると、ビル内の店それぞれ営業をしている。
客席係の男、「久しぶりですね」、と迎えてくれる。このビル、10月までの予定で改装工事をしているそうだが、内部工事は店の終わった後の夜間のみで、昼間はしていない、と言っていた。
昼の定食は、1000円。牛丼戦争、200円台の熾烈な競争が、大きく報じられる時代ではあるが、夜はそこそこの値を取る店なので、ここの昼の定食1000円は、コストパフォーマンス高い。食べ終わった後、コーヒーを入れにきたその男と暫く話す。
実は、1年半ほど前、その男からこう聞かれたことがある。「会社の方で、昼の定食の値段、1200円にあげることを考えているのですが、どう思われますか」、と。おそらく、時々来る客に聞いていたのだろう。「1000円と1200円じゃ印象が違うし、新宿で、どうかな」、と言い、「むしろ、これは和食の店だが、昼の定食、1200円から1000円に下げた後、客が増えた店があるよ」、とつけ加えた。
その後、昼の新宿へ行くことがだんだんなくなり、この店に行く機会もなくなった。それが、以前と同じく、昼の定食、今日も1000円だった。そのことを思いだし、聞いてみた。
「あの頃は、客足が少なかったんですが、結局、据え置きました。それが、正解でした」、と言う。土曜ということもあろうが、以前より客も入っている。利幅と顧客数、最大効果をあげるプライス設定は、どの商売、どのような商品でも難しい。
この店を運営する会社も、幾多の試算、さまざまなシミュレーションを行ったのであろう。その結果、最も利益効率の高い昼の定食の値段は1000円、となったのであろう。「正解でした」、と言うその客席係の男の言葉、客の入りからみて肯ける。
店を出ると、新宿通りで、ドンドンドンという太鼓の音が聞こえる。
パンフレットも配っている。「新宿エイサーまつり」だそうだ。沖縄の盆踊りだ。いろんなグループが踊っていた。パンフレットには、20近くのエイサーの団体が出ている、と書いてある。新宿通りのマルイの前、三越の前、高野の前、アルタの前、歌舞伎町の方でもやっているようだ。
面白いので、駅へ行く途中、あちこちで引っかかって見ていた。

紫というグループ。伊勢丹の近くだった。
パンフレットには団体と書いてあるし、エイサーのグループには、特別な呼び名はないようだ。阿波踊りの”連”のような。何か付ければいいのに。沖縄らしい名を。団体とかグループといったありきたりの呼び名でないものを。
エイサーの踊り手、男も、女も、子供もいる。

小学生のグループもあった。

休んでいたこのグループ、やけにハデな装束だった。

三越の方からマルイの方へ走ってきたこのグループ、子供が多く見られた。

マルイの前まで来ると、踊りだした。

それぞれのグループ、纏のようなものを持っている。これには名前があり、”旗頭”というそうだ。ウン、いい名だ。
中でこれは目立っていた。左の旗頭には、”萬国津梁”、右の旗頭には、”温故知新”、と書いてある。
側にいたこのグループの世話役のような人に、「萬国津梁ってどういう意味なんですか」、と聞くと、「世界の国が平和でありますように、ということです」、と教えてくれた。少し意訳しているようであるが、その年配の人のいう通りである。

この纏のような旗頭、案外大きい。丈が高い。だから、下の方は、屈強な男がこうして支えている。

それぞれのグループ、それぞれの場所でひと踊りすると、新宿通りを、次の踊り場へ進んで行く。

新宿駅の近くで、琉球何々会というグループが休んでいた。その中に、2つか3つのエイサー坊主がいた。
右手に太鼓のバチを持って、いっぱしのエイサーの踊り手とも見えたが、時折り、後ろのおっかさんにしがみついていた。
そういえば、去年も新宿でエイサーを見た。去年は、夜だったが。大学のクラスの飲み会の後、外へ出たらやっていた。新宿でのエイサーまつり、年に1日だけ。去年も偶然、今年も偶然だった。
今日は、曇天だった。日射しがあるわけではなかったが、とても暑かった。エイサーもそう長く見たわけではないが、それでもあちこちで引っかかった。熱中症になりそうで、喫茶店に飛びこんだ。