あなたの名前を呼べるなら。

愛の物語である。男と女の愛の物語。これが一筋縄ではいかないんだ、インドでは。
社会格差、身分の問題、カーストの問題があるんだ、今でも。
もちろんインドでは憲法によってカースト制は廃止されている。しかし、現実には今も生きている。
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インドの大都市、ムンバイだ。
19歳のラトナは、夫を亡くした未亡人。農村から出てきて、上流階級の豪華マンションで住みこみのメイドとして働いている。雇い主は建設会社の御曹司・アシュヴィン。アメリカにいたのだが、父親に呼び戻された。同じ階層の女との結婚もとなっていたのだが、相手の女の浮気がばれてそれはおじゃんとなっている。大都市、ムンバイらしい。
部屋数が多いとはいえ、若い女と若い男がただ二人で住んでいる。それでどうこうならないのか、というのは外国人の感覚。ならないんだ、インドでは。カースト、身分がちがうのだから、お互いそのようなことは考えない、
ラトナはアシュヴィンのことを、「旦那さま」と呼んでいる。あくまでも旦那さまと召使い。
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『あなたの名前を呼べるなら』、監督:ロヘナ・ゲラ。アメリカで学んだムンバイ出身の女流。
カースト制を打ち壊す狼煙が随所で見られる。
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実は、ラトナはファッションデザイナーへの夢を持っている。旦那さまが出かけている時、裁縫教室へ行きたいのだがと願い出る。アシュヴィンは許可する。アシュヴィンも親父から呼び戻されるまでアメリカにいた、ということもあろう。
生地屋や糸屋にいる時のラトナは楽しそう。田舎にいるラトナの妹は、15で学校をやめ結婚するという。これもインドの現実だ。
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カースト、身分違いとは言っても、そこはひとつ屋根の下に住む若い男と若い女、ラトナが尽くせば尽くすほど、アシュヴィンの気持ちが揺れて行く。それを知った周りの親戚や友人連中、「お前は何を考えてるんだ。やめとけ」、とことごとく言う。「あんな地べたに座って飯を食うような女は」、と。
そんなことを言われても・・・
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危ないな。いつ何があってもおかしくないな。
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本作の原題は、”Sir”。いってみれば「旦那さま」。
アシュヴィンは自分のことを「旦那さま」ではなく、アシュヴィンという名前で呼んでくれ、と言っているのだが。ラトナもそう呼びたいのだが、呼べない。「旦那さま」としか。
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終わり近く、ラトナがマンションの屋上からムンバイの街を見ている。
そこへアメリカへ行くアシュヴィンから電話が入る。ラトナは初めて「アシュヴィン」と応える。
この後どうなるのかは分からない。おそらくこのカースト違いの恋物語、ハッピーエンドとはならないのでは。
インドには何度も行ったが、インドのカーストの現実、日本人にとっては驚くほど強固であった。
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それはともあれ、ラトナのサリー姿、美しかった。


安倍後継、昨日今日の共同通信の世論調査では、石破茂34%、菅義偉14.3%、河野太郎13.6%、小泉進次郎10.1%、岸田文雄7.5%、だそうだ。
石破茂が圧倒的に支持されている。
が、昨夜、菅義偉は二階俊博と秘かに会っていたそうだ。自民党の総裁選び、党員投票を省略し両院議員総会で、となった模様。明らかな石破茂外しである。
これで勝負はついた。菅義偉総裁、菅義偉首相となるのであろう。
「まったく考えていない」と言っていた菅義偉、何と言って表に出てくるのであろう。「安倍政治の継続」であろうが、一国のトップは処理能力だけでは務まらない。ビジョン、さらに哲学が欠かせない。メルケルと対峙できる哲学を持ちあわせているか。はなはだ疑問、心許ない。

菅義偉に如何なる哲学があるのか、

モーリス。

20世紀初頭のイギリス・ケンブリッジ。上流階級の子弟が学ぶケンブリッジ大学でモーリスとクライヴは出会い、惹かれあう。
共に美青年。性の多様化が謳われる現代とは違い、同性愛などもっての外という時代である。
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『モーリス』、原作はE.M.フォースターが1913年に書いた物語。
フォースター自身もケンブリッジの出身であり、同性愛であった模様。自身の体験が反映されているそうだ。
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『モーリス』、監督:ジェームズ・アイヴォリー、1987年、イギリス映画。
日本公開は1988年。2年前の2018年、4Kデジタルリマスターで再公開された。
イギリスは階級社会である。上流階級と労働者階級の二極。上流階級の典型は貴族階級であろう。貴族でなくとも政治家は上流階級の出が多い。今の首相、ボリス・ジョンソンもボサボサ髪でなりふり構わない男だが、上流階級の出に違いない。労働者階級の典型はビートルズ。自らの力で成り上がっていった。
ケンブリッジで出会い、惹かれ合うモーリスとクライヴも上流階級の出である。
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モーリス扮するジェームズ・ウィルビー、クライヴに扮するヒュー・グラント。共に美青年。下のアレックという男に扮するルパート・グレイヴスも美青年なのだが、この男は労働者階級、というより南米からの出稼ぎ労働者。
このアレックも同性愛者、後にモーリスと身も心も結ばれる。
ゲイの美青年の物語である。
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モーリスとクライヴ。
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モーリスとクライヴ。
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モーリスは迫るが、クライヴは踏み切れない。身体の関係までは踏み切れなかった。
さまざまなことが頭をよぎるんだ。地位や名誉のことなどが。上流階級の人間としての。
ケンブリッジを出た後、クライヴは弁護士となり、結婚する。クライヴ、モーリスに結婚の立会人になってくれと頼み、モーリスも引き受ける。
クライヴは政治家への道を歩んでいるようだ。広大な敷地に住んでいる。何しろ敷地内に猟場があるのだから、イギリスの上流階級はハンパない。モーリスはそこへ時折り訪ねていたのだが、ある夜・・・
クライヴの猟場の番人であるアレックが、モーリスを襲う。
アレックは、モーリスも自分と同じ同性愛の嗜好があると読んでいた。モーリスも受け入れる。上流階級と労働者階級の愛、同性愛。
二転三転があるが、モーリスはアレックと生きることを選んでいく。
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それにしてもゲイの青年、みな美形ばかり。
20数年前であるが、ヒュー・グラントなど惚れ惚れするような美青年。ヘタしたら世の男の大半がゲイになってしまうよ。間もなく80となるジジイはもう遅いが。


今日、安倍晋三の辞任を知ったドナルド・トランプ、こう語ったそうだ。
「最大の敬意を表す。(病気での)辞任はつらいことだったであろう」、と。
ドナルド・トランプの人間らしい言葉、初めて聞いたような気がする。

ガンジスに還る。

77歳となる老人・ダヤ、ある日、いよいよ自分も最期を迎えるな、と思う。聖地・バラナシで幸せな最期を迎えたい、と。バラナシの「解脱の家」へ行き、死を待ちたい、と考える。ビジネスマンの息子・ラジーヴが付き添って行く。
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ガンガー(日本では今でも「ガンジス」と呼ばれているが)河畔のバラナシ、聖地中の聖地である。
インド中から多くの人がガンガー河畔のバラナシに来る。死期を悟った人も。本作では「解脱の家」となっているが、「死を待つ人の家」に。
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『ガンジスに還る』、監督:シュバシシュ・ブティアニ。1991年生まれ、まだ20代の若者。
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父親と息子の物語でもある。ダヤとラジーヴの。ダヤと孫との物語でもある。家族の愛の物語でもある。
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ガンガーだ。
ガンガー河畔のバラナシには多くの小舟が浮かんでいる。
バラナシ、人を引きつける。惹きつける。
遠藤周作『深い河』、三島由紀夫『豊饒の海』、沢木耕太郎『深夜特急』、そして、「死の瞬間が、生命の標準時」、「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」の藤原新也の〚メメント・モリ〛、いずれも人をバラナシへ引きつける。惹きつける。
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ダヤと孫娘。
孫娘、スマホでおじいちゃんとのツーショット。
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ダヤと「解脱の家」に18年入っているという女性と。
「解脱の家」、15日しかいられないはずであるが。そう言えば、「死を待つ」という風情もないな。ダヤは元教師、中流階層のインテリである。
そう言えばこの作品、少し不思議なことがある。ダヤはインテリで中流の生活を送っていたが、この映画にはカーストの問題が出てこない。こんなこと、あり得るのかな。
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バラナシでは、牛にはよく会う。しかし、こんなきれいな牛に会ったことはない。
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バラナシについては何度か触れた。1年少し前には「バラナシ逍遥」を記した。どうしてこれほど、というぐらいのピンボケ、ぶれにぶれた写真も組み入れて。
本作にも出てくる上の映像は、「Aarti(アールティー)」と呼ばれるヒンドゥー教のお祭り。
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バラナシのガートから、小さな舟でガンガーへ漕ぎだす。身が震えるほど懐かしい。



今日昼のニュースで、午前中の閣議の後、安倍晋三が麻生太郎と二人で30分ほど話しあった、ということが流れた。
麻生と二人だけで30分、これはひょっとしてと思っていた。午後になり、安倍晋三辞意表明とのことが。やはり。5時に会見と。
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午後5時、会見場。
安倍晋三の登場を待つ。
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永年の宿痾の再発。
無念さが滲み出る。
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正式に辞意表明。
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この表情からも、その胸中よく分かる。
拉致問題、北方領土問題、憲法改正、この三つを果たせなかったことが心残りと語る。
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今日の東証、一時600円超下落した。終値は300円超となったが。マーケットは安倍晋三の後に懸念を示しているんだ。
安倍晋三退陣表明後、石破茂、岸田文雄、下村博文、野田聖子、「まったく考えていない」と言っていた菅義偉も臆面もなく多数派工作を始めているらしい。河野太郎も狙っているらしい。
石破茂はおそらく無理なのだろうから、気骨のない岸田文雄やどこか陰気な菅義偉などより、一気に河野太郎に行くのはどうか、と考える。


安倍晋三の今日の会見、1時間余に及んだ。
今までと異なり、丁寧に答えていた。至らなかったことごとも、それは認めて。安倍晋三のこと好きではないが、彼の心情を思いばかった。安倍晋三の思いに寄り添った。
4日前から開かれていたアメリカ共和党の全国大会、今日が最終日。ドナルド・トランプ、共和党大統領候補受諾し、最後の演説を行った。
共和党の全国大会、黒人を次々に登場させ、「トランプ大統領が助けてくれた」との言葉を次々に発していた。あなた方、ホントにそう思っているのかよ、と聞きたいぐらいに。トランプ礼讃ばかり。
トランプ自身、何でもかんでもオレがやった、と語る。新型コロナを押さえこんだのもオレである、と。自らの誤りを決して認めない。
さらに、民主党を、ジョー・バイデンをボロクソに言う。品がないことこの上ない。もっともトランプに「品」などを求めることが間違いであろうが。
安倍晋三、ドナルド・トランプのお友達であるが、トランプのような品のない男ではない。
ワシントンでのドナルド・トランプの演説と東京での安倍晋三の会見を見て、トランプと安倍晋三の品格を考えた。
安倍晋三が遥かに格上。安倍晋三、無理してトランプと付きあっていたのじゃないかなー。それならば、ご苦労さんなことである。
安倍晋三、1954年生まれで65歳。まだ若い。じっくり休みを取り元気になってもらいたい。そして、時には昭恵さんの話題も。

アンナとアントワーヌ。

2日前の昼間のNHK、久しぶりでウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』を見た。これはすこぶるつきで面白い。日本公開は2012年、8年前となる。
その頃この雑ブログでは、4月末から9月末にかけ、途中に幕間休憩を入れたが、79回にわたり「パリ+リスボン街歩き」を連載していた。その中で『ミッドナイト・イン・パリ』に触れた。5回にわたり。なにしろパリの街中を歩き回れるばかりでなく、ヘミングウェイやスコットとゼルダのフィッツジェラルド夫妻が出てくる。パリのアメリカ人の女帝、ガートルード・スタインのアパート、サロンに行けばパブロ・ピカソがいる。
モディリアニからブラック、そして今はピカソの彼女である妖艶なアドリアーナは、ある時、ヘミングウェイとキリマンジャロへ行ってしまう。ヘミングウェイに女を取られちゃったピカソは、ガートルード・スタインのところに来て「あのペテン野郎め」とヘミングウェイを罵る。が、スタインは、「あのふたりは合わないよ。その内戻ってくるよ」、と言う。その内ヘミングウェイとアドリアーナはパリへ戻ってくる。ガートルード・スタインが言った通り。
ダリやブニュエル、マン・レイも出てくる。その他これでもか、というぐらいに。
久しぶりにパリの街歩きを楽しんだ。
ずいぶん前になるが、「サイナラおじさん」と呼ばれた淀川長治は、「映画って面白いですねー。サイナラ、サイナラ、サイナラ」って言っていたが、まさにその通り。
「戦争の8月」となり、暫らく映画とは離れていたが、今日からまた映画に戻る。


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Now Showing、まずはこれから。相当前のNowであるが。
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『アンナとアントワーヌ』。
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あの『男と女』から50年。
それよりもこの背景、どう見てもガンガー、バラナシにしか思えないのだが。
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クロード・ルルーシュとフランシス・レイの黄金コンビによる大人の恋の物語。
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男は、映画音楽家のアントワーヌ(ジャン・デュジャルダン)。ボリウッド版の『ロミオとジュリエット』の音楽を創るためインドを訪れる。女は、インド駐在フランス大使の妻・アンナ(エルザ・ジルベルスタイン)。
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フランス大使館で開かれたアントワーヌを歓迎するパーティーでふたりは出会う。
何処の国の大使館もそうであるが、その大使夫妻はべらぼうに優雅な日常を送っている。途上国の大使館であろうとも。一国を代表しているのだから。そんじょそこらの成金などでは足元にも及ばない。治外法権の世界でもある。
そんな恵まれた境遇の大使夫人が、パリから来た映画音楽家に興味を覚える。音楽家・アントワープにも、結婚を迫られている美人のピアニストがいる。
<愛に限界はない。誰かが誰かを深く愛していても、別の人間を好きになることもあるということを描きたかった>、とルルーシュは語っている。
愛なんだ。不倫なんて言葉は、ひょっとして日本以外にはないのかな、と思えてしまう。
少し寄り道をする。
昔、ミッテランは隠し子のことを問われ、「それがどうした」って堂々と応えていた。さすがミッテランであった。
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「愛の前奏曲 UN+UNE NEW DELRI➧KERALA」。
愛のプレリュードか。それより・・・
「UN+UNE」って。ルルーシュの『男と女』の原題は「Un homme et une femme」であった。「UN」と「UNE」はその定冠詞、いってみれば50年前と同じく「男と女」。
大使館のあるニューデリーからケララまで、ムンバイを経て旅をする。
女は、子供を授かるようにケララの聖者・アンマに会うために。インドにはさまざまな聖者と言われる人がいるんだ。
頭が痛くなった男は、その後を追う。
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ニューデリーからムンバイを経てケララまで。
インドには7度行ったが、南はムンバイまで。ケララには行っていない。
が、『アンナとアントワーヌ』、インドの状景をさまざま流してくれる。懐かしかった。もう訪れることはないであろうインドの状景、「あぁ」とつぶやきながら楽しんだ。
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が、映画の主題はアンナとアントワープの道行きだ。
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たった2日間の道行き。
結ばれる。たった一度。
何年も後、二人は空港で偶然に出会う。アンナは連れていた男の子にアントワーヌと声をかける。あの時の子か。分からない。
ジャック・ドゥミの『シェルブールの雨傘』の末尾、ガソリンスタンドの場面を思いだす。あの時は女の子であったか。
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ケララに行ったことはない。
ケララの海、このようなのであろうか。


今日、大坂なおみ、ウィスコンシン州での黒人男性への白人警官の発砲に対し、準決勝へ進んでいたゲームを棄権した。
「私はアスリートである以前に黒人女性です」で始まる大坂なおみの言葉に驚いた。
大坂なおみ、繰り返される黒人への白人警官による銃撃に、もう反吐が出る、と語っている。
大坂なおみは私たち日本人にとっては、オリンピックの時にアメリカ人で出るのか日本人で出るのか、ということが関心事であった。日本人として出ると聞いて良かったと思っていた。
しかし、日常アメリカで戦っている大坂なおみにとっては、アメリカ人以前に黒人であるという意識があったんだ。日本人以前にも。
大坂なおみの行ないに、涙が出た。

六・日旅。

暫らく前、新型コロナと暑さでほとんど家の中にいるが、PCR検査がどうこうとか病院のベッドの使用率がどうこうとか、とコメンテーターと称する連中がワイワイ言っているテレビのニュースショーというものは、バカ臭くて見ないことにしている、と記したことがある。
その代わりテレビでは旅番組、紀行番組を見ている。これがさまざまいろいろあるが、中で一番好きな番組は「六角精児の 呑み鉄本線日本旅」である、と記した。
旅番組ばかりじゃないが、新作の録画ができないので再放送、再々放送が多くある。
昨日も、「六角精児の 呑み鉄本線日本旅」の再放送があった。
〽走る列車の~ リズムに合わせ~ カンビールがゆれている~
 海岸線は~ 故郷へ向かう道~ ・・・~ ・・・~
って六角精児バンドの「ディーゼル」が流れ、六角精児、山形のローカル線に乗っていた。
以前テレビの旅番組のことを記した折りに書くのを忘れたのだが、「六角精児の 呑み鉄本線日本旅」と共に好きな旅番組がある。
日野正平の「こころ旅」である。
日野正平が自転車で走り、視聴者の思い出の地で、その人からの手紙を読む。ただそれだけ。これが面白い。味がある。日野正平ならではの味がある。
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1週間ほど前の「こころ旅」の再放送。
蔵出しとある。藏に入っていた古いものを出しているんだ。
2016年、4年前のものだ。
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日野正平のこの衣装、上も下もだぶだぶというかぶかぶかというか、何とも言えない趣きがある。このファッションも捨てがたい。
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この日はここへ行くようだ。
<588日目>とあるのは、「こころ旅」が始まって以来自転車で走った日数であろう。
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途中までは列車に乗る。
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目的地の12キロ手前から自転車で走る。
日野正平を先頭に5人が。他にもスタッフはいるのだろうが、総勢10数人であろう。安上がりであろうが、それで面白い番組を作っている。
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昼飯の時間となる。この日はこの店に入った。そば、ラーメン、ちゃんぽん、何でもあるような店に。
「こころ旅」で日野正平が飯を食いに入る店は、だいたいこのような店。ラーメン・餃子とか、カツカレーとか、スパゲッティー・ナポリタンとかといったごく普通の庶民が食う店ばかりである。それがいい。
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この日食っているのは皿うどんであろうか。
それにしてもずいぶん多いな、その分量。
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その店のおかみさん、色紙を出してきた。こう言って。
日野正平、今では男にもモテるが、元々は女にモテていた。プレイボーイで鳴らした。次から次へと女を作っていた。
その頃、こう聞いたことがある。
日野正平は主役を張る役者ではなかった。傍役であった。が、共演した映画の女優と次々に浮名を流していた。その極意はこうである、と。日野正平は、傍役の女優を口説いていた、と。主役の女優は主役の男優に残して、と。なるほどだ。
70を超えた今でも日野正平はモテている。今では男にも。私もそう。
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50代の女性の思い出の地へ行く。
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手紙を取りだす。
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「こころ旅」、この秋のコースが決まったそうだ。
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北海道から東北へ、そして四国4県へ。9月21日スタートだそう。
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お便りをお寄せください、とNHK。


ところで、今日のブログのタイトル、「六・日旅」とした。
なんじゃこれって思われたことであろう。ほとんどの方々は。
実は、六角精児の「六」と、日野正平の「日」を合わせたものである。どうでもいいことであるが、そうした。


安倍晋三、今日で首相在職日数が憲政史上最長となったそうだ。
そうか、へー、と思う。が、安倍晋三、今日も慶應病院へ行っている。先般の結果を聞きに。追加の検査も少し、と。
ポスト安倍が言われ出している。
早急ならば麻生太郎であろう。繋ぎならば菅義偉か。どちらもイヤだな。岸田文雄なんてハッキリしないヤツが安倍後継になるなんて、日本国民の不幸であるし。石破茂は自民国会議員にからきし人気がないし。政権党である自民党にこれといった人材がいない。野党第一党の枝野幸男も、支持率自体がひと桁違う。
誰もいないと言うこと、国にとって不幸である。仕方ない、好きではないが、安倍晋三に暫らく続けてもらう他ないか。


佐藤琢磨、インディ500を制した。
2017年に次いで2度目。
ニュース映像を見た。43歳の佐藤琢磨のドライビングテクニック、ほれぼれする。

果てなき殲滅戦。

第二次世界大戦でドイツ降伏後、日本は戦争を続ける。
太平洋地域での米軍兵士の死傷者は15万人を超える。
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沖縄戦が終わった後、1945年7月、アメリカは日本本土上陸作戦を策定する。
「果てなき殲滅戦」である。
日本敗戦日、8月15日のNHKBS1から。
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過去最大76万の兵力での九州南部への上陸作戦、「オリンピック作戦」と名づけられていたそうだ。
指揮官は、アメリカ陸軍参謀総長であるジョージ・マーシャル。
日本はどれだけ叩いても降伏しない。ジョージ・マーシャルは毒ガスの使用も検討していたそうだ。
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より早く、よりコストをかけずに戦争を終わらせることを考えていたらしい。
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軍人のみならず一般市民、女子供にまで「一億玉砕、捕虜になる前に自決しろ」、と教えられている日本人、現地軍からは、「日本に一般市民はいない」との報告があがっていた、という。
憎悪の負の連鎖である。日本人・ジャップはともかく殺せ、と。
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7月末、九州南部への激しい空襲。
その上、米陸軍参謀総長、ジョージ・マーシャル、原爆の使用を部下に命じる。
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この二人、参謀次長のジョン・ハルと原爆開発担当のL.E.シーマンに。
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ジョン・ハル、こう言っている。

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シーマンはこう答えている。
原爆は月産3個製造可能であったようだ。それを日本人・ジャップの頭上に落とす、と。米陸軍参謀総長、ジョージ・マーシャルの「オリンピック作戦」である。
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九州南部に3つの軍団が上陸作戦を行なうのだが、それに先立って原爆を投下する。3つの軍団それぞれに3つずつ、合計9つの原爆を投下する、と。
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1発目の原爆は・・・
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2発目は・・・
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そして3発目の原爆は・・・
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後、アメリカの専門家はこう語る。
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昭和天皇の終戦の詔書。
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終戦。
あと9発の原爆は落とされなかってよかったが、日本の決断、遅すぎた。
多くの日本人の命が、断ちに断たれた。
国民のことより、国家、国体のことが重要であった。昭和20年の日本では。
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この男が、当時のアメリカ陸軍参謀総長のジョージ・マーシャル。日本へさらに9個の原爆を落とそうとした。
そう思うと、獰猛な顔貌、目つきに思えてくるな。
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東京では、一夜で10万人の日本人を殺害しても・・・
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沖縄では12万人の日本人を殺しても・・・
さらに、広島、長崎に原爆を落としても、日本の反応は鈍かった。
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ジョージ・マーシャル、いやアメリカという国、こう考えた。
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日本人、多くの命を失った。
大君のため。

シベリア抑留。

毎日が日曜日のようなものであるが、世間に倣い4、5日勝手に夏休みのふりをしていた。
夏休みのふりをするっていっても、何をするワケではない。常の日と同じ。
朝遅く昼近く、起きる。窓の外は相変わらず暑そうだな、と思いながら座椅子に座り朝刊を読む。
飯を食わないといけないんだが、その前に缶ビールをプシューと開ける。
起きたらまずビールを飲むのは、だいぶ前チャールズ・ブコウスキーに教わったもの。仕事をしていた頃にはたまの休日にしかやらなかったが、リタイアした後はその時々取り入れている。
その後、朝飯というか昼飯というかを食うことになる。大したものは食わない。ごくあたり前のもの。トースト1枚、卵焼きかベーコンエッグ、チーズ、バナナ(大きなバナナの場合は半分)、トマト、コーヒー(インスタント)、漬物少々。こんなものだが、普通の人にとってはへでもないこんなチョッピリの飯も食うのが大変、食い終わるまで1時間、時には2時間ぐらいかかる。途中で休憩しているからなんだが。何のために生きてるんだ、オレは、と時折り思うことがある。
ところが、こういう人はさすがだな、という人がいる。
沢木耕太郎は私よりは若い男だが、彼の作品には楽しませてもらった。『深夜特急』にしろ〚一瞬の夏〛にしろ、藤圭子との対話を30年以上にわたり表に出さず、藤圭子が自死した後に世に出した『流星ひとつ』には、沢木耕太郎の心の覚悟に唸るほかなかった。
今月初め、その沢木耕太郎の動静を知った。
沢木耕太郎、朝6時に起き白湯を一杯飲んで原稿を書く。9時に朝食をとり、その後はまた仕事をし、2時に昼食を自炊し、・・・、・・・、といったもの。
ストイックというか、自らを厳しく律している。沢木耕太郎と比べてオレはなんて、そんな分不相応なことは思わないが、それにしてもオレはどうでもいい日常を送っているな、と思うことしきり。


1945年(昭和20年)8月8日、ソ連は日ソ中立条約を破棄、日本に宣戦布告、9日未明から攻めこんできた。
米英ソ、ルーズベルト、チャーチル、スターリンによるヤルタ会談、そのヤルタでの秘密協定により、ソ連の対日参戦は決められていた。知らぬは日本ばかりなり。そのソ連に米英との仲立ちを頼んでいたのだから。
新型コロナの蔓延で、テレビでは再放送番組が多い。
暫らく前のこの番組も再放送の模様。マンガとドラマのコラボ。
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木村多江扮するマンガ家・おざわゆきが父親から聞いたシベリア抑留のことを描く。
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おざわゆきの父親、学生であったが招集され満洲へ送られる。
さほど経ずして終戦となるが、侵攻してきたソ連軍によりシベリアへ。シベリア抑留である。シベリアへ送られた日本人は57万5千人。
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シベリア抑留での死者、55000人。
その後・・・
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ダモイ、帰れるぞ。
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おざわゆきの『凍りの掌』、私は知らなかった。
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スターリンの暴虐のひとつである。


60年近く前に死んだ親父が遺した書籍、文献の類いは、その著作各一部以外そのほとんどすべてを処分した。が、その著作以外にほんの少数手許に残しているものがある。
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この小冊子・『シベリヤ抑留スケッチ集』もそう。
満蒙引揚文化人聯盟、とある。
70年以上前のもの。薄汚れを通り越し、これでもかというぐらいに汚れている。
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その扉。
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目次。
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序。
戦後、「鬼十則」の電通の吉田秀雄に乞われ電通に入った、満洲人脈の松本豊三が記している。
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スケッチを幾つか。
「雪の行軍」。
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「凍死寸前」。
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「望郷の月」。
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「薪とりに行く人々」。
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「重材運搬」。
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「虱殲滅」。
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「栄失患者」。
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「盗む物がなくなる」。
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「鉄条網張り」。
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「ロスキーマダムは五人力」。
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「鉱山」。
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「鐵道」。
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「伐採」。
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「運搬」。
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「行軍」。
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描いたのは、これらの絵描き。
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奥付。
昭和23年2月の発行。定価40円。
時を感じる。
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裏表紙。
この小冊子、私が持っていても仕様がない。夏が過ぎ、少し涼しくなった頃、新宿住友ビルの平和祈念展示資料館へ寄贈しよう。


バイデンが、アメリカ民主党全国大会で、大統領候補としての指名受諾演説を行った。
アメリカばかりか世界をめちゃくちゃにしたトランプの分断を終わりにする、と。
あの品のないトランプに負けるワケにいかない。
共和党政権の元高官約70人がバイデン支持を表明している。ヘイデン元CIA長官、ネグロポンテ元国家情報長官、アーミテージ元国務副長官、NSCアジア上級部長を務めたマイケル・グリーンといった懐かしい名前がある。
現在の支持率では、バイデンがリードしている。それでも専門家の中には、まだまだ分からない。今回もトランプが勝つだろう、という人もいる。アメリカ人、そんなにバカがいるとは考えたくもないが。
もし、今回もトランプが勝ったら、世を果無んで自ら死を遂げる人が続出するであろう。