雄渾な水茎の跡、候文なら芳墨の香弥増す。

新槐樹社会員・光田節子の作品「私の山」を観に国立新美術館へ行くようになって7年になる。毎年、赤っぽい「私の山」と緑っぽい「私の山」の2点と対峙している。
同時期、国立新美術館では幾つかの催しが開かれている。今年から文化庁のメディア芸術祭は開催時期を変更した模様だが、日本書作院展は催されている。

日本書作院展、今年は第57回となるんだ。
入場無料ってところも凄い。

多くの部屋を使い、1000点に近い作品が並ぶ。まさに書の海。

今年は、名の知れた人たちの書状が展示されているコーナーがあった。
後世に名を残す人たちの水茎の跡、まさに優美にして雄渾。
ガラスケースに灯が写り込むので見づらいが、その何点かを。

川合玉堂の水茎。美しい。

お読みになられるお方もおられるでしょうが念のため、としてであろう楷書で記したものをつけている。親切。

中村岳陵の水茎の跡。
川合玉堂にしろ中村岳陵にしろ文化勲章を受ける人たちの書は味があるな。

中村岳陵の文意。

尾崎咢堂とともに「憲政の神様」と称される犬養毅(木堂)の書状を何通も貼った巻物があった。

犬養木堂の水茎の跡、雄渾。

その意。

おおらかな美を感じる。
銃弾を浴びても話そうとした男だから、犬養毅・木堂は。

上記の意。

昭和7年(1932年)5月15日、第29代内閣総理大臣・犬養毅(木堂)は私邸を襲った軍人により暗殺される。5.15事件である。
この5.15がその4年後、昭和11年(1936年)の2.26事件に繋がっていく。そして軍部の独裁、対米英開戦、敗戦へと繋がっていく。

横道に逸れた。
上の犬養毅(木堂)の水茎の意。

あとひとつ、やはり文化勲章を受けた川端龍子の水茎。
実は皆さん、雄渾な水茎を残されているが、その多くは候文である。
候文ならなおのこと、その水茎、芳墨の香、弥増す。

龍子の水茎の意。