ブルー・ジャスミン。

途中で一度『人生万歳』でニューヨークへ戻ったが、ここ6〜7年のウディ・アレン、『それでも恋するバルセロナ』、『恋のロンドン狂騒曲』、『ミッドナイト・イン・パリ』、『ローマでアモーレ』、とヨーロッパの町々で洒落た話を紡いでいた。
が、この『ブルー・ジャスミン』は、久しぶりのアメリカ、ニューヨークそしてサンフランシスコでの物語。ウディ・アレン、シリアスな物語を作ろうとしたようだ。

つい先日までニューヨーク・セレブリティ界の花と謳われていた女が、サンフランシスコの空港に降り立つ。「ジャネットなんて平凡な名前。だから、ジャスミンと名を変えたの」、という女。亭主は凄腕の実業家で金がバンバン唸っていたが、実はねずみ講まがいの投資会社。FBIに挙げられすべてを失う。
で、無一文となったジャスミン、サンフランシスコの妹・ジンジャーの家に居候となる。

ウディ・アレン、「ここ10年の”アメリカの悲劇”は笑い飛ばせない」、と言っている。
”ここ10年”って、リーマンショックは入っている。が、2001年のWTCツインタワー崩壊は入っていない。どういうことかな。ウディが言う10年って。
いずれにしろブルー(コメディーととっても自由であるが)、憂鬱、グルーミーな物語。

ジャスミン、都落ちをしても虚栄心の塊りだ。もう一度這い上がるチャンスを狙っている。その機は訪れる。しかし、潰え去る。再びのセレブリティ生活への道は断たれる。自業自得といえば、自業自得。
ジャスミンに扮するのは、ケイト・ブランシェット。その瞳はブルー。
ケイト・ブランシェット、このジャスミン役で今年度のアカデミー主演女優賞を取った。

この一番左の歯を見せ笑っている女は、ジャスミンの妹のジンジャーなんだ。ジンジャー、生姜・ショウガってヘンな名前なんだが、このジンジャーが素晴らしい。
実は、ジャスミンとジンジャー、共に里子なんだ。だから姉妹とは言っても血は繋がっていない。顔かたちも似ていない。
しかし、質素なアパートにジャスミンを受け入れたシングルマザーのジンジャー、その心根の優しさと言ったらない。セレブの時には顔も見せず、困った時には居候か、という周りの声からジャスミンを護る。
ジンジャーに扮したのはサリー・ホーキンス。アカデミー助演女優賞にノミネートされたが、惜しくも逃した。

ケイト・ブランシェット、『ブルー・ジャスミン』のジャスミン役で今年度のアカデミー主演女優賞を取った。しかし、そこに至る過程では、バトルがくり広げられていた。ウディ・アレンに関する場外バトル。
昨日記した『映画と恋とウディ・アレン』には、何人もの女優が登場する。そのほとんどの人、ウディとの関係を喜んでいる。中でひとり、ウディ・アレンとの関係、ぐしゃぐしゃになっている女優がいる。ミア・ファローである。
ウディ・アレンとミア・ファロー、正式な結婚はしていないが、何年かの間実質的なパートナーであった。養子も迎えているが、実子も生まれている。ローナン・ファローという名のこの男、頭がべらぼうに良いそうだ。今、25歳らしいが、15歳でイェールのロー・スクールへ入り、ヒラリーの顧問も勤め、オバマの外交アドバイザーにもなっているという。
その彼が、こう言ったんだ、この春先に。ウディ・アレン、その養子に性的虐待を行なってきた、と。そのミア・ファローの養子である女性もウディ・アレンを糾弾する文章を発表する。ニューヨーク・タイムズに。
ミア・ファロー、べらぼうな天才である息子、ローナン・ファローについて、こう語る。ローナン・ファロー、この頃別れてはいたがまだ関係は続いていたフランク・シナトラとの間の子供である、とのことを示唆した言葉を。
エンディング、グルーミーな「ブルー・ムーン」が流れる。