パリ+リスボン街歩き (73) 夜のアルファマ。

共にパリで育った二人がリスボンで出会う。この男と女、二人共ワケあり、暗い過去を持つ。
監督・アンリ・ヴェルヌイユの映画、「過去を持つ愛情」である。ついでながら、アンリ・ヴェルヌイユの本名は、アショド・マラキアン、”ン”で終わるアルメニア系の男である。
それはともかく、「過去を持つ愛情」、50年以上、60年近く前の映画である。主演は、フランソワーズ・アルヌールとダニエル・ジェラン。
ダニエル・ジェランはどうでもいい。フランソワーズ・アルヌールが、何というか、どういうか、たまらない女優であった。油絵ではない、水彩画でもない、パステルで描いた絵のような女優なんだ。
この前後、やはり、アンリ・ヴェルヌイユの作品でフランソワーズ・アルヌールが主演した映画に「ヘッドライト」がある。相手は大御所・ジャン・ギャバン。初老のトラック運転手と街道筋の食堂の若い女との恋、とても切ない。それに被さるジョゼフ・コスマの曲が何とも言えず涙を誘う。若い頃何度観たろうか。5、6度じゃきかない。
横道から戻らなければならない。「ヘッドライト」から「過去を持つ愛情」へ。
「過去を持つ愛情」、その原題は、「テージョ川の恋人」という。リスボンのテージョ川である。そのリスボンで、二人が触れ合う所がファド・ハウス。そこでの歌は、アマリア・ロドリゲスの「暗いはしけ」。
この曲によって、ファド、世界基準となった。
リスボンでのある日の夜10時過ぎ、ファドを聴きに行った。

リスボンの下町・アルファマの街を歩く。ここら辺りにファド・ハウスがあるはず、と。

この近辺で声をかけられた。「ファド・ハウスをお探しでは」、と。
ファドの歌い手が5人いる、という。料金もさほどのものではない、という。

ここへ入る。
大きく”FADO”と書いてある。その下の文字の意は、”もしものモデル”。
一体どういうことか、解らない。でも、何らかの意味合いはあるのであろう、ポルトガル語として。

店内に入ると、若い女が歌っている。中央の女性である。

この人、ファドを歌う。しかし、知らない曲ばかり。

男の歌手が出てくる。

左手をポケットに入れて歌う。これがファドのオーソドックスな歌い方だそうだ。

店内、ろうそくの灯りに照らされている。

真打登場という感じで、この人が出てくる。


60歳前後であろうか、アマリア・ロドリゲスを思わせる。

幕間になる。
クラッシック・ギターに12弦のポルトガルギター。


もう帰ろう。勘定をしてもらう。
勘定書き、木の箱に挟んで出てきた。アマリア・ロドリゲスの顔が描かれた木の箱に。

帰り道、女性の歌い手が二人、出口に近いところで話している。上には、アマリア・ロドリゲスの写真。

外に出る。
夜半のリスボン、このような通りである。

あちこち、電灯がボーとつく。
タクシーを捕まえられるところまで出る。

タクシーの中から見た、夜半、0時過ぎのリスボンの町中、通りには、人の気配はさほどなかった。