樹木希林恐るべし(5) わが母の記。

『わが母の記』、文字通り母親と息子の話。小説家である伊上洪作一家の母親を含めた一族の物語である。
主たる舞台は、東京の伊上洪作の家と伊豆の実家。洪作には女ばかり3人の子供がいる。母親は伊豆で洪作の上の妹が世話をしている。

キネ旬、樹木希林追悼企画第5弾。

原作は井上靖。自身の自伝的色彩が強い。
初めの方で家族総出で検印を押している場面が出てくる。余計なことだが、家族総出で検印を押しているのには驚いた。さすが井上靖、と。
脚本・監督は原田眞人。母には樹木希林、小説家である息子には役所広司。

1959年から1969年にかけてのほぼ10年の物語である。母親がだんだん呆けていく。認知症の症状が少しずつ進んでいく。徘徊も始まる。息子のことも分からなくなっていく。

実は、伊上洪作にはずっと引っかかっていることがある。
5歳のころから8年間、土蔵のおばさんのところに預けられていたんだ。どうして自分は母親から捨てられていたのか、と。ある時、そのことを呆けた母親へぶつける。母親の口からは思いがけないことが発せられる。

何故自分が、祖父のお妾さんであった土蔵のおばさんに育てられたのか。
川奈ホテルでの母親の誕生パーティー、母親と宮崎あおい扮する自分の3女との物語、その3女の恋物語、母親の世話を担っていた妹とのあれこれ、縁遠い次女の留学の話、・・・・・、・・・・・、伊上洪作の周りではさまざまな物語が進行していく。最後の方、土蔵のおばさんの50回忌法要の模様も。
何故自分が土蔵のおばさんのところで育てられたのか。その理由が解ける。
母の愛だった、ということが。

終わりの方、沼津へ行くのでその海かなとも思うが、やはりこれは伊豆の海であろう。
いずれにせよ泣かせてくれる。
母と息子の物語、リリー・フランキーにしろ井上靖にしろ涙なしには終わらない。


今日、日本政府はIWC(国際捕鯨委員会)からの脱退を表明した。
IWC、当初の目的から逸脱している、と。で、日本は商業捕鯨を行なう、と。
日本が国際組織から脱退するのは極めて稀。アメリカ・ファーストって言ってTPPやパリ協定から抜け出ているトランプと似たようなもの、同じじゃないか、と反射的に思った。国際社会からは叩かれるよ、この行動。松岡洋右の国際連盟脱退をも思いだしたもの。
鯨を食べるのは日本の食文化である、とよく言われるが、そうシャカリキにならず、今までの調査捕鯨で獲れる鯨を食っていればいいのじゃないか、とも考える。
渋谷道玄坂の元祖くじら屋には何度か行ったが、そうどうってこともない。鱧やフグ、これからの季節ならアンコウの美味さにはとても及ばない。
シャカリキになって商業捕鯨をする必要など、どこにあるのか。
何よりも、ドナルド・トランプのアメリカや習近平の中国のように、「我が国ファースト」と思われることが片腹痛い。
日本政府の行動に異を唱える。