樹木希林恐るべし(6) 日日是好日。

樹木希林最後の映画は『日日是好日』。
原作:森下典子、脚本・監督:大森立嗣。主演は黒木華。

この作品、公開以来の観客動員数100万人を突破したそうだ。
キネマ旬報直営館では、予定を越え、現在も延々と上映されている。

森下典子の20数年の茶道修行、季節に寄り添い。

主人公の20歳の大学生・典子、母親から「お茶でも習ったら」と言われ、「タダモノじゃない」と言われている武田先生のところに行く。
武田先生、ただ一人で大きな家に住んでいる。

「私、最近思うんですよ。こうして毎年、同じことができることが幸せなんだって」、と映画の中で武田先生は言っている。樹木希林扮する茶道の先生・武田先生は。
構えることなく作品に取り組んでいた樹木希林そのもののセリフにも思える。

典子、従妹の同い年の美智子と共に。

「お茶はね、まず形から入っていくのよ。意味なんていいの」、と武田先生は言う。

典子(黒木華)を挟み美智子(多部未華子)と武田先生(樹木希林)。
典子は20歳の時から武田先生のところに通い、20数年後までお茶のお稽古を続ける。その間、従妹の美智子は就職し結婚する。武田先生は「習い事の先生」というよりも、典子にとっては「人生の先生」という色合いを持っていく。毎週、お茶のお稽古に通って行くうちに、典子、何かを掴んでいく。
「日日是好日」という言葉、禅語である。季節の移ろいに寄り添い生きる幸せがある。

ところでこの作品、主演は黒木華である。樹木希林、そして多部未華子は助演である。
黒木華という女優、今、乗りに乗っている。
安藤サクラや蒼井優、演技派と言われる上手い若手女優はいる。黒木華はそれらの女優とは少し趣きが異なる女優である。が、今、さまざまな人が、黒木華は将来の日本映画を支える大女優になる、と言っている。

黒木華、このように何でもない顔つきをしているのだが。美人ではなく、日本中、どこでも見られる女性なんだが。
しかし、将来、そうなるのであろう。日本映画界の名女優に。そう思える。



樹木希林が死んで一月半ほど経った10月29日、朝日と読売の朝刊に宝島社の広告が載った。
宝島社は、かって植草甚一も関係したサブカル系出版社。
朝日、読売共に、全ページ見開き、全30段という気張ったもの。

朝日の全ペー見開き。
『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』を思わせる。
樹木希林がオカンで、本木雅弘と内田也哉子夫婦とその子供たちがボクで、ロックンロール命の内田裕也がオトン、という構図を。

樹木希林からというこういうコピー。

同日、10月29日、読売、全ペー見開き、全30段。

樹木希林、おしまい、サヨナラ、と。
「樹木希林恐るべし」、これにて終わる。