樹木希林恐るべし(4) 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン。

『夢千代日記』も泣けるが、これはもっと泣ける。キネ旬の「樹木希林追悼企画」第4弾は、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』。
『夢千代日記』は薄幸の女性である夢千代の哀しさに思いするのであるが、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』のオカンは日本全国すべての母親であり、ボクは日本人すべての息子なんだから。全国民すべてが涙する仕掛けは整っている。オカンにしろボクにしろ、自らのことだから。

原作:リリー・フランキー、脚本:松尾スズキ、監督:松岡錠司。彼ら3人、1960年代初めの生まれ。
封切りは2007年。この時、オカンの樹木希林は64歳であった。

9月15日、樹木希林が死んだ後、キネ旬の館内あちこちには追悼の写真が貼られていた。2階ロビーにはこのように。
このような扱い、昨年ジャンヌ・モローが死んだ時以来である。世界的な大女優と同等の扱いを受けている。樹木希林はキネ旬から。

オカンは樹木希林、ボクはオダギリジョー。時々出てくるオトンには小林薫。
ボクが3歳の頃、オカンはボクを連れてオトンのところから出て、筑豊の実家に帰ってくる。後にボクが「この人より自由な人をいまもって見たことがない」、と言っているようにオトンはぶっ飛んだ男なんだ。で、オカンはボクを連れて筑豊の炭鉱町へ戻ってくる。
自由気まま、女の影どころか実体もあちこちにというオトン、どうもオカンとは正式な離婚はしていない。ボクがオカンと筑豊へ行った30年ほど後、オカンの命が残り少ないという時にも駆けつけ、寄り添う。
何だか、樹木希林と内田裕也の関係を思い浮かべる。ロックンロール命のぶっ飛んでる内田裕也との糸を切らなかった樹木希林とオカンが重なる。娘の内田也哉子も出てくるし。

ボクは東京の美大へ入る。東京の美大ってリリー・フランキーも行っていたムサビであろう。
ボクは、オカンが無理をして送ってくる学費も遊びで使ってしまうという日常だ。昔、知り合いにムサビの連中もいた。ムサビ、何となしそういう雰囲気がある。日芸もそうかもしれないが。

イラストや何かで少しずつ売れてきたボクはオカンを東京へ呼び寄せる。「行っていいのかいの」というオカンの言葉も堪える。
東京へ出てきたオカンとボク、手をつないで交差点を渡っている。
オカンもボクも幸せだ。

オカンが作るご飯が美味いのでボクの友達連中が大勢集まってくる。オカンも幸せだ。
だが、しかし、オカンの身体の癌細胞が。
副作用の強い抗癌剤治療が、そしてそれを打ち切るという決断。

病室でのオカンとボク。このような場面、誰しもにある。死期の近い母親とどう過ごすか。何と声をかけるか。お互いがお互いを思いやる。だから、涙が次々に流れる。

2007年4月号のキネマ旬報の表紙も貼られていた。

このような写真も。

3歳のボクをどうしようもない男であるオトンのところから、筑豊の炭鉱町へ連れ出す若い頃のオカンには、内田也哉子が扮している。さすが樹木希林の娘、味がある。


このところのNYダウ、大幅下落が続いている。
で、今日の日経平均、前週末比1000円を超える下落、2万円を大きく割りこんだ。
トランプは、FRBの利上げ判断が原因だ、とFRBに責任を押しつけている。
とんでもないよ。ガチンコ勝負となっている米中の貿易戦争にもあるが、最大の要因はトランプ政権の何がどうなるか分からない政権運営の安定のなさにある。
国防長官・マティスの辞任時期が2か月前倒しされ今年いっぱいとなった。トランプ政権の高官の離職率は64、5パーセント。3人に2人が自ら辞めたり首を切られたりしている。米中云々よりも、政権内のフラフラが世界の株式市場を混乱させている。トランプが原因である。
『華氏119』でマイケル・ムーアは、<この映画が公開されれば、トランプ王国は必ず崩壊するであろう>、と言っているが、ドナルド・トランプ、その程度のことは折りこみずみ。今現在のワシントンの大統領執務室からも。