「住み果つる慣らひ」考(12)。

誰が編んだのかは分からない。が、ある世捨て人、一狂客、一隠者がその当時の俗謡、小唄を311首集めて編んだ。
『閑吟集』である。
成立した年は分かっている。永正15年、1518年である。室町時代の後期。
流行歌謡、いわば今につながる流行歌であるから、恋の歌というか愛の歌というかそういう歌が圧倒的に多い。ただ、今の流行歌、歌謡曲との違いはある。『閑吟集』に表われる恋の歌、愛の歌は、より直截的、肉感的な感じにあふれている。
その『閑吟集』に人生や生きること、また、生きていくことについての小唄が幾つかある。いずれもよく知られたものであるが、3首だけ取りあげる。
無常感、また、虚無的と思われるものを。
『日本不思議物語集成四 歌謡』(現代思潮社 昭和48年刊)から。
編訳は、加藤郁也である。



1518年というから丁度500年前である。
その当時の日本人(と言っても都・京都の庶民であろうが)、生きていくということ、おのが人生をこのように捉えていたようだ。
なお、本書の編訳者の加藤郁也、巻末にこう記している。
<本巻に採録した本歌の表記については版元の・・・と検討の結果、現代表記を用いることにした。現代表記法の良し悪しを・・・・・>、と。
右ページに本歌を載せ、左ページにその現代語訳をつけているんだ。その本歌をどうして現代表記にする必要があるのか。理解に苦しむ。
また、上の写真からは窺がえなく、「世間はちろりに過ぐる・・・」の無常感とも関係はないが、実はこの書、私が持つ書の中では珍しく「總皮天金特装本」である。そのような書に現代表記とは。
残念。