病牀五輪(2) 高梨沙羅と高木美帆。

病院のベッドの上ではずっとピョンチャン五輪の中継を見ていた。点滴の針に影響しないように気をつけて写真も撮っていた。
事実関係がおかしなところや脈絡が少しということもあろうが、そのようなことはさほど気にせず、思いに残ることごとを記していく。今考えるべきことは、「流山子雑録」のルーティンワークに戻ること。そうでなければ、ヘタをすれば8年半少し2千数百回続けてきたこのブログ、自然消滅の恐れもある。
病院からは出たが、心身共にへこんでいる。ピョンチャンで活躍したアスリートたちのことを思い出し記すことで、心身のへこみ具合が徐々に矯正されるのではとも考えている。
ピョンチャン五輪4日目、2月12日は何と言っても高梨沙羅と高木美帆であった。
高梨沙羅が銅メダルを取った。よくぞ取った。とても嬉しい。

スキージャンプはW杯ポイントの少ない選手から飛ぶ。つまり、有力選手は最後の方に出てくる。
12日午後9時50分ごろ。
スキージャンプスタート順のお終いの方。最後の3人、高梨沙羅、ドイツのアルトハウス、そして今シーズン絶好調のノルウェーのルンビ。はっきり言ってこの3人のメダル争いである。

途中でアメリカのサラ・ヘンドリクソンが出てきた。
4、5年前、高梨沙羅が出てくる前の女子ジャンプ界の第一人者はサラ・ヘンドリクソンであった。そこに高梨沙羅が出てきて日米の「サラ」が一時期争った。が、アメリカのサラは怪我をし、日本の沙羅は世界を席巻していった。
そのアメリカのサラを久しぶりで見た。最終的な成績は19位であったと思うが、サラ・ヘンドリクソン、ジャンプを楽しんでいたように見えた。

勝負はいよいよここから。
ところでこのテレビ画面、何やらヘンだなと思われているであろう。
そう、画面に字幕が出ている。聴覚障碍者が理解できるようにというものであるようだ。「生字幕放送」というそうだ。もちろん、イヤホンをつなげば音声は流れる。が、4、5秒遅れで流れる生字幕だけでも十分理解することができる。

高梨沙羅の1回目。

103.5メートルを飛び、そこまでのトップ。

しかし、その直後ドイツのアルトハウスにトップを奪われる。

さらに、今シーズンの絶対王者・ノルウェーのルンビはその上を行く。

1回目を終わり、ノルウェーのルンビ、ドイツのアルトハウス、そして高梨の順。

すぐスピードスケート1500メートルにチャンネルを切りかえる。夜10時50分すぎであった。
アレッ、高木美帆のレースは既に終わっていた。高木美帆、銀メダルを取っていた。日の丸を手にしている。

リプレイで高木美帆の走りを見る。

高木美帆、前半は遅れるが後半は追いこみ逆転する。


優勝タイムにはコンマ2秒差。
今、スピードスケート中距離では客観的に見て、世界で高木美帆が一番強い。スキージャンプのルンビと同じである。今現在の時代とマッチしているんだ。
しかし、コンマ2秒差で高木美帆は負けた。足りないものがあったんだ。
この後の羽生結弦や小平奈緒、さらには高木美帆自身がかかわるパシュートの時のように、絶対に勝つ、負けるワケがない、という気構えがなかったんだ。この時の高木美帆には。

スキージャンプの2回目である。
高梨沙羅、滑り始める。

4年前のソチ五輪、女子スキージャンプの金メダルは9割9分高梨沙羅で決まり、と言われていた。
が、高梨沙羅は4位、金メダルどころか銅メダルにも届かなかった。この4年間の高梨沙羅の無念の思いを私たちは知る。

高梨沙羅の2回目のジャンプも完璧なものであった。飛距離も103.5メートル。
高梨沙羅、1回目、2回目、2本のジャンプを完璧に揃えた。

高梨沙羅、そこまでの第1位。

しかしその直後、ドイツのアルトハウス、高梨沙羅をあっさりと抜き去る。

さらにノルウェーのルンビがその上を行った。

高梨沙羅は3位。
高梨沙羅、よくぞメダルを取った。また取れなければ、高梨沙羅の生涯酷いものとなったであろうから。よかった。とても嬉しい。
時の流れを思う。

それにしても高木美帆である。
ケロッとした顔でインタビューに応えている。
21歳の高梨沙羅は色気づき、完璧な化粧につけまつげで装っている。アスリートとしてばかりでなく、彼女自身の存在を示しているようだ。
高梨沙羅より2つ上の高木美帆、化粧などとは縁遠い。このような高木美帆、好きである。