フランス人間国宝展。

人間国宝と言われる人たちがいる。
濱田庄司だとか富本憲吉だとか芹沢硑介といったよく知られた人ばかりじゃなく、漆芸や金工や竹工芸などのあまり名を知られていない人たちも。
坂田藤十郎、中村吉右衛門、坂東玉三郎といった存命の歌舞伎役者も人間国宝である。
皆さま「重要無形文化財保持者」。故に国の宝、ということであろう。1954年の文化財保護法の改定時に今の形が決められたそうだ。
この日本の人間国宝に倣ってフランスでは1994年、”Maitre d’Art(メートル・ダール)”という称号を作った、という。いわば、フランス版人間国宝である。
ただ、日本の人間国宝は、伝統工芸と芸能のふたつの分野のの名人が指定されているのに対し、フランスの人間国宝は、伝統工芸の優れた技能者にのみ授与されているらしい。

フランス人間国宝展、さして気をそそられるものでもないな、と思っていた。

15人のフランスの人間国宝の作品、仕事を上野に持ってきたのであるが。
さほどのものでもないな、と思っていたが、見に行った。

曜変天目の研究に人生を捧げ・・・、という作家が含まれていたので。

これでは少し分かり難いが、これは案外面白かった。
エンボスなんだ。エンボス加工を芸術の域に高めた、という人間国宝。

鼈甲細工のメガネである。
<世界の貴族や富豪に眼鏡を提供するフランス唯一の鼈甲細工作家>、とある。
鼈甲細工の眼鏡、味がある。
50年ほど昔、長崎に行った折り、なにかれとなく世話をしてくれた土地の人から、鼈甲のカフスボタンを贈られた。その後約半世紀、改まった場でカフスボタンをつける折りには、その長崎の鼈甲細工のカフスボタンを使っている。フランスの人間国宝とは関係がないが。

この傘職人の頂点、世界の王族からの指名がひっきりなし、というそうだ。

ま、そうではあるが、私がフランス人間国宝展へ行ったのは、<曜変天目の研究に人生を捧げ世界的に活躍する陶芸家>、とされるジャン・ジレルの曜変天目はいかばかりのものか、を確かめるため。
東博表慶館へ入ってすぐ、ジャン・ジレルによる曜変天目が100個ばかり並んでいた。
南宋、建窯で生みだされたとされる曜変天目茶碗、不思議なことに中国にはなく日本にのみ残っている。わずか3点のみ。
私は見ていないのであるが、一昨年の暮れ、テレ東の「開運!なんでも鑑定団」で4つ目の曜変天目が、と騒がれた。自信満々、中島誠之助がそう宣ったそうだ。価値は2500万円、と。曜変天目が2500万円とは、少し安すぎるのじゃないか。
親の代から曜変天目の再現に取り組んでいる瀬戸の陶芸家であり、研究者でもある九代・長江惣吉、贋物である、とYou Tubeで自身の主張を述べる。
九代・長江惣吉、確かに理は長江にある。
また、ジャン・ジレルの約100個の曜変天目になんてことはあり得ない。100個自体、曜変天目ではない、ということを表わしている。