第61回 日本表現派展。

10月初旬の上野、都美術館の方へ歩くとパンダがいた。

生まれてから4か月近く、元気に育っているようだ。

第61回日本表現派展へ。

初日ではないので、来ている人は少ないな。

同人・山宣の作品、あれじゃないかな。

やはり、そう。

山本宣史≪夏のトーディ≫。
天地169センチ、左右333センチ。大きい。4曲1隻の屏風とも言える。
山宣、ここ暫らくの表現派展への出品作は山を描いた作品が多かったが、今年はイタリアの小さな町。山宣得意の膠彩画。どうこう言うのは難しい。
気のいい山宣は会場にいた。

折りたたまれたこの紙片を渡された。
初日、大学のクラス会と重なり、研究会には出られないが、懇親会までには戻ります、というもの。日本ℋ表現派の懇親会の進行役は山宣だそうだから、それまでに戻る、と誰かに託した紙片だろう。何にでも顔を出すつき合いのいい男である。
「これはもう終わったものなのでどうぞ」って。エンピツで書かれており読みづらいが、10数年前に水墨で描いたものを彩色した、というようなことも記されている。ひまわりも描き加えて。又行きたい場所、とも。

トーディには行ったことがないが、イタリアのこのような丘の上の小さな町、とても美しく気持ちがいい。ゆっくりと歩いても、端から端まで2、30分ばかりで突き抜けてしまうような丘の上の小さな町。
山宣の作品を見ていると、絵とは関係のないどうでもいいことが思い浮かんでくる。山宣の人柄か。

ただひとつ、これは気に食わない。
山宣、昨年は奨励賞を取っていた。それはいい。
しかし・・・
同人であり、何かあれば表現派の催しに尽力し、何よりも後期高齢者にもなろうとしている山宣に「新人賞」とは何たることだ。日本表現派のトップ、親分、一体全体ナニ考えてんだ。

私は怒っていたが、肝心かなめの山宣は、さして意に介してはいなかった。このように。
山宣、少なくとも私よりは大人(たいじん)である。


暫らく前、『昭和天皇独白録』の原本というか寺崎英成が記した資料がオークションにかけられる、というニュースが流れた。
気になっていた。
『昭和天皇独白録』、私は毎年8月になると読んでいる。
私の毎年8月の必読書は『昭和天皇独白録』と野坂昭如のNHK講座のテキスト『「終戦日記」を読む』の2冊。
この雑ブログにも毎年8月になると記している。あちらこちらの角度から。
今日、ニューヨークでオークションがあった。
寺崎英成の夫人であるグエン・寺崎の孫であろうか、いずれにしろ子孫の方がオークションに持ちこんだ。そのこと自体にやや思うことはある。「昭和天皇の独白」を記したものであるからである。が、それは致し方ない。
今日、オークションが行われた。日本の公的機関が落札することはできないのか、と思っていた。一番いいのは国会図書館へ入ることだ、と。
やはり、そうはならなかった。
エスティメイト10〜15万ドルとされていたが、落札価格はその倍、27万5000ドル(手数料込み約3000万円強)であった。落札者は、「Yes、高須クリニック」の院長・高須克弥。
高須克弥、この資料を皇室へ戻したい、でき得れば秋篠宮悠仁さまに差しあげたい、と言っている。
そのようなことが可能であるか。おそらく、そのようなことはできまい。
そうではあろうが、いずれにしろ『昭和天皇独白録』の元の資料が日本へ戻ってきたのは嬉しい。